衆院選 コロナ禍の戦術模索 ネット活用も効果未知数 「どぶ板」も健在

立候補予定者の動画撮影現場。各陣営はネットの活用を強化する=長崎市中心部

 昨年からの新型コロナウイルス禍以降、初の総選挙が19日に公示される。長崎県内4選挙区の各陣営は感染防止で大規模集会などを開催できないため、インターネットの活用にも力を入れる。だがその効果は未知数で、従来の「どぶ板」型の手法も健在。衆院は14日解散し、選挙戦の事実上の号砲が鳴る。
 10日、長崎1区の長崎市中心部。「長崎のために国政で働かせてください」。自民党県連の広報宣伝カーの上で新人の初村滝一郎氏(42)は若さを前面に押し出し、熱っぽく市民に訴えた。だがその口元はマスクで隠れて見えない。地元県議は「顔を覚えてもらいにくい。感染対策なので外すわけにはいかないが…」と言う。
 知名度アップが急務の初村氏は、10月に入り公式LINE(ライン)を開設。QRコード付きの名刺を約1万3千枚準備し、登録者に日々の活動を知らせている。プロモーション動画も作成し、近く開設するユーチューブチャンネルで公開する予定だ。
 一方、国民民主党現職の西岡秀子氏(57)。9日、市中心部のアーケードでビラを配り演説する姿を、テレビ局とは違うカメラが追っていた。政策や人柄を知ってもらうショートムービーを制作し、労組などの集会で流すことを検討しているという。
 共産党新人の安江綾子氏(44)もこれまでにオンライン演説会などを開催。会員制交流サイト(SNS)も活用し、街頭活動などを発信している。
 ◆
 だがネットの活用は「もろ刃の剣」だ。別の選挙区の自民関係者は、党総裁選で敗れた河野太郎氏がツイッターで意見の合わない相手の投稿をブロック(遮断)する対応が批判されたことを挙げ、「否定的なコメントを書き込まれても、一つの意見として、そのままにしたい」と話す。
 「政治家のアプリをダウンロードしたい人がどれほどいるだろうか」とネットの効果を測りかねる声もある。実際、ユーチューブのチャンネル登録者数が伸び悩む野党の立候補予定者も。高齢者が多い地域では「ネットよりも組織や地縁の方が有利」との声が根強く、1軒1軒訪ね歩いて顔と名前を覚えてもらう手法も健在だ。
 コロナ禍の前、立候補者は大きな会場を支持者で満杯にして、勢いをつけるのが通例だった。だが今回はそれも望めそうにない。別の自民陣営幹部は「今回は大きなホールを借りて間隔を空けて座ってもらうかもしれない。スカスカで寂しい感じになるが、仕方がない」と話している。

© 株式会社長崎新聞社