【ドラフト】阪神ドラ1森木大智の“人生設計” 球児に弟子入り→1軍ローテ→夢の160キロ

阪神からドラフト1位指名を受けた高知・森木大智【写真:宮脇広久】

いずれは「日本のトップになりたい」

阪神からドラフト1位指名された高知高の最速154キロ右腕、森木大智投手が12日に指名あいさつを受けた。嶌村聡球団本部長、永吉和也編成ディレクター、畑山俊二統括スカウト、森木を担当した山本宣史スカウトが高知高を訪問。森木はプロでの目標の1つに「160キロ」突破を掲げた。

指名直後の前夜は、両親から「プロの世界に行くなら、もっともっと練習しなければいけない。トップを目指して頑張れ」と激励されたそうで、森木も「僕自身、頂点を目指してやっている。考えは一致しています」とうなずいた。

大目標を掲げながら、そこへ漕ぎつけるために小刻みな人生設計も描いている。高卒1年目の来季に関しても「土台となる体をつくることが優先されると思いますが、その中でも1軍で10試合くらい登板させていただけたら」と具体的である。そして「2、3年目に先発ローテーションに定着して、2桁くらい勝ちたい」とキッパリ。

中学時代に軟式で150キロ、今年の春に自己最速の154キロを計測したスピードについては、「徐々に出していければいいけれど、目標は高く、160キロを頑張って出したい」と断言した。「何歳で出せるかは、まだわかりません。プロの世界に慣れて余裕が出始め、もっと体が大きくなってからだと思います」と堅実に青写真を描いている。

高校3年間で甲子園出場ならずも「甲子園を本拠地にしたらいいやん!」

直球のスピードアップには、格好の教材がある。森木に野球を始めるきっかけを与えた同郷のスター、元阪神投手の藤川球児氏である。昨季限りで現役を引退後、球団の「スペシャルアシスタント」に就任しており、来春のキャンプを訪れる機会がありそう。山本スカウトは「森木はまだまだ球児の域には達していないが、その素質を持っている。いろいろアドバイスをもらえばいい」と言う。森木は「球をリリースする時の感覚と、どのような練習をすれば藤川さんに近づけるのかを聞いてみたい」と目を輝かせた。

160キロの先には、「年数を重ねるごとに、日本を代表する選手になっていって、日本のトップになりたい」と大目標を見据えるが、そこもまだゴールではない。

一方、振り返ってみれば、達成できなかった目標もあった。高校3年間で1度も届かった甲子園出場がそれだろう。1年生の夏と3年生の夏は、いずれも県大会決勝で宿敵の明徳義塾に敗れ、2年生の夏はコロナ禍で甲子園大会自体が消滅した。今年9月にプロ志望届を提出後、山本スカウトと面談した際には、「甲子園に出たかった」と吐露。山本スカウトは「だったら、(阪神に入って)ずっと甲子園でやったらいいやん!」と身を乗り出した。

高知高の浜口佳久監督も「大智が阪神に入れば、野球部の仲間たちと甲子園がつながることになる。大智があそこで投げている姿を見たいと、私もチームメートたちもずっと思ってきましたから。見られる可能性が出てきた」と目を細める。

思う存分夢を描けることが若者の特権。森木なら、将来へ突き進むだけでなく、過去にさかのぼって叶えることまでできそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2