尿失禁が再生医療で改善 沖縄で初、前立腺全摘出の患者に成功 南部徳洲会など

 南部徳洲会病院(八重瀬町、服部真己院長)やバイオベンチャーのフルステム(那覇市、千葉俊明社長)などは10日、前立腺を全摘出した後に尿漏れの症状がある男性患者2人に対し、皮下脂肪から抽出した幹細胞を使った再生医療を実施し、成功したと発表した。尿失禁に対する再生医療の適用は県内初。きっかけとなる前立腺がんの患者は増加が続いているといい、担当した同病院の向山秀樹泌尿器科主任部長は「尿漏れに悩む患者を再生医療で回復させたい」と語った。

 尿漏れは前立腺全摘出後に起こりやすい。膀胱(ぼうこう)の出口に当たり尿の蛇口の役割を果たす「尿道括約筋」が弱まることが原因だという。

 今回の再生医療は73歳男性に昨年12月、72歳男性に今年7月、それぞれ括約筋に幹細胞を注射する手法で実施した。その結果、73歳男性は術前に1日に11グラムあった尿の漏出量が、術後24週に2グラムへと82%減少した。72歳男性は術後4週間で30グラムから12グラムへ減った。

 向山医師は尿漏れを改善することで下着が汚れる問題のほか、いつ漏れるか分からない不安が和らぎ「心の問題の改善につながっている」と意義を話した。

 前立腺がん患者は増加傾向にあり、男性の10人に1人がかかるとされる。県内では年間90~100人程度が摘出手術を受けた後、薬物投与やリハビリテーションに取り組む。尿漏れが改善しない人が3~5%程度いるという。一方、今回の再生医療は軽症や中等度の患者を対象に行われた。向山氏は重症患者は一度の注射では改善しない可能性があるとし「(幹細胞を)培養して複数回打つと、改善してくれるかもしれないと期待している」と述べ、今後の可能性を語った。

 再生医療は県の「先端医療産業開発拠点実用化事業」の一環で行われ、2者と、再生医療専門外来をもつそばじまクリニック(大阪府)の3者による共同事業体で実施した。今後は、ひざの変形性関節症への適用も計画している。

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