【衆院選】有権者の1%の力で小選挙区の1割は結果が変わる。あなたの一票の影響力を確認してみましょう

10月19日公示、31日投開票の日程で衆議院議員総選挙が行われる予定です。

新内閣の発足から解散までの期間が10日間、解散から投開票日までの期間が17日間といずれの期間も戦後最も短い選挙戦となります。

この状況は、日頃から政治に高い関心を持っているわけではない有権者の方、とくに今回「はじめての選挙」に臨む人にとっては、投票に行くためのハードルが高くなっている状況でもあります。

投票に行くかどうかを迷われている人の中には、「政治のこと勉強するのも大変だし、どうせ私の一票なんて結果に影響しないだろうから投票するのをやめてしまおう」と思われる方もいるかもしれません。

投票を断念する前に「あなたの一票の影響力」を確認してみませんか。

小選挙区の1割弱(23選挙区)は有権者の1%が動くことで結果が変わる

前回の衆議院議員総選挙において、当選者と次点となった候補者の票差が最も少ないのは新潟第3区の50票差でした。新潟第3区の有権者数は31.3万人でしたので、有権者の0.02%程の差で勝敗が決しています。

図表1では、当選者と次点候補者の票数の差が当該選挙区の有権者数の1%に満たなかった選挙をまとめています。

図表1_衆院選(2017年)における接戦の小選挙区

289ある小選挙区の内、23選挙区、割合にして8%ほどの選挙区において、その選挙区の有権者の1%以下の票差によって勝敗が決しています。

また、接戦であった選挙として思い浮かべる方も多いであろう大阪都構想に関する住民投票とも比較してみましょう。

有権者数に対する賛成票と反対票の票差は1回目の住民投票(2015年)は0.51%、2回目の住民投票(2020年)は0.78%でした。

全小選挙区のうち約5%(14か所)が1回目の住民投票よりも接戦であったことがわかります。同様に約8%(22か所)が2回目の住民投票と同等かより接戦となっています。

大阪都構想の住民投票の結果を見て、「こんなに接戦であったならば、自分も投票に行けばよかった」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。衆議院議員総選挙では、約1割の選挙区が同じくらい接戦の選挙となっています。

2倍の票を得た政党が9倍の議席数を得ることも。「勝者総取り」の小選挙区選挙

小選挙区選挙ではほかの候補者よりも1票でも多く得票した候補者のみが当選するため、政党単位で集計すると得票率と獲得議席数に大きな差がつくと言われています。

図表2は2000年代に入ってからの衆議院議員総選挙について、自民党と民主党(当時。2017年は希望の党と立憲民主党を合算)の小選挙区での獲得票数と獲得議席数の割合を比較したものです。

図表2_衆院選における自民党と民主党の票数、議席数の比較

政権交代のあった2009年の総選挙で民主党は自民党の1.3倍の票を獲得し、3.5倍の議席を得ています。同様に、2012年の総選挙で自民党が得た票は民主党の2倍ほどでしたが、獲得議席数は自民党が約9倍となるなど、得票率以上に獲得議席数の差がついています。

獲得票数を合算した値以上に獲得した議席数に差がつくことについて、海外での事例分析では、「小選挙区制に基づく全国規模の選挙において2大政党が争う場合、これらの政党の獲得する議席数は両党の得票率の3乗に比例する」ことが「三乗法則」として指摘されることもあります。

今回の衆議院議員総選挙では、野党共闘などもあり、一対一の構図となる選挙区が増えてきています。

接戦の選挙区が増加することで、「勝者総取り」の小選挙区制度において「あなたの一票」が全国での「票数の積み上げ以上の効果」を発揮する可能性が高まっていると言えそうです。

10代、20代の若者の4割はシルバーデモクラシーを打破できる

若者の政治参加を考えたときに、「少子高齢化の進行で有権者に占める高齢者(シルバー)の割合が増し、高齢者層の政治への影響力が増大する現象(知恵蔵mini。コトバンクより)」である「シルバー民主主義(デモクラシー)」が課題としてしばしば取り上げられます。

人口上位5位までの都道府県について、今年1月の年齢別人口を基に10歳区切りで人数の多い順番に並べたものが図表3です。(18歳、19歳分は20代と合算)

図表3_人口上位5位の都道府県における年代別有権者数のランキング

東京都や愛知県、神奈川県では18歳~29歳の有権者が、60歳代や70歳代の有権者よりも多くなっています。また、大阪府では18歳~29歳の有権者と70歳代の有権者数の差は987人ほどとかなり小さいものとなっています。埼玉県での18歳~29歳の有権者と70歳代の有権者数の差は約3万人ですが、これは同県の有権者の0.5%程の規模です。

日本全体の18歳~29歳(約1,495万人)の内、これらの都府県に居住している人は40.3%です。18歳~29歳の有権者のうち4割の人は自分たちが投票に行けば数の上で60歳以上の世代の人に負けることがない状況、シルバーデモクラシーに振り回されないでいられる状況であることがわかります。

同様に、選挙区数で見ていると、289選挙区のうち92か所(32%)が上記の都府県に設定されています。

もちろん、仕事や自己研さんに余暇の活動、ご家庭でのご予定と、なにかと忙しい若い世代の人にとっては投票に行くためのコストがほかの世代よりも高いといった状況もあるかもしれません。

有権者の8割は自宅から投票所まで10分でアクセスできる

明るい選挙推進協議会が過去の国政選挙等を対象に行った調査によって、およそ8割の人が自宅から投票所までの移動に要する時間が10分以内であったことが明らかになっています。

図表4_自宅から投票所までの所要時間

前回の衆議院議員総選挙では47,741か所の投票所が設置されていますが、これは日本で最も店舗数が多いコンビニエンスストアであるセブンイレブン(21,210店舗)の2倍以上の数であり、国内店舗数上位3社(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン)の合計店舗数52,328店舗に迫る規模となっています。

また、各党の政策を調べたり、選挙区の候補者の過去の活動を調べるのにどのくらいの時間が必要になるでしょうか。

仮に丸1日必要になるとして、「有権者の責務」を果たすための負担ともいえるこの1日を衆議院議員の任期である4年間で等しく負担してみると、1日当たりの負担は約1分となります。

また、衆議院議員選挙は平均して2.5年に一度行われていますので、その場合の1日当たりの負担は90秒ほどです。

平均たったの2年半!派遣社員より不安定な衆議院議員の任期を分析してみた

あなたの一票にも影響力があります

冒頭に確認した様に、全国の小選挙区の1割では有権者の1%に相当する票によって結果が変わってきます。投票にかかるコストも、例えばコンビニエンスストアに行く感覚で投票所に行ってくることができると考えると負担感が減ってきませんか。

あなたの一票には、当初思われていたよりも選挙の結果に影響を及ぼす力があるかもしれません。

「自分や、自分の友人たちが投票したって選挙の結果は変わらない」

「投票に行くのって、時間もお金もかかって大変」

上記の様な思い込みに縛られることなく、大切なあなたの一票がより納得感のある形で行使されることを祈念しています。

© 選挙ドットコム株式会社