2021衆院選ながさき 長崎1区 象徴的な与野党対決

安江綾子氏(左)、初村滝一郎氏(中央)、 西岡秀子氏(右)

 「安倍政治を変えられるかどうか象徴的な選挙区。絶対に負けられない」。2日、国民民主党現職の西岡秀子(57)=1期目=の応援で来崎した党代表、玉木雄一郎は報道陣を前に語気を強めた。対抗の自民党が擁立したのは、党内に強い影響力を持つ元首相安倍晋三の元政策秘書、初村滝一郎(42)。いまだ森友、加計学園や桜を見る会の問題がくすぶる安倍との対決を演出することで、批判票を取り込もうとする意図が透けて見える。
 ただ陣営には危機感も漂う。初村陣営が9月に入り短期間で、前環境相の小泉進次郎や地元議員らと顔を並べるポスターを約1400枚張り、日に日に追い上げられているとの実感が増す。2日の選対会議では県議の深堀浩が「現職のアドバンテージはもうない」と出席者にハッパをかけた。
 さらに支援組織である連合長崎の中核、三菱重工労組長船支部は、国内の造船不況で組合員数が4年前の初当選時から約800人減少。関連業者も仕事を求めて県外に流れた。陣営からは「ボディーブローのように効いてくるかもしれない」との懸念も漏れる。
 「まだぼんやりだが相手の姿が見えるようになってきた」。12日、長崎市内で開かれた初村の拡大選対会議。県議や市議、後援会関係者ら約200人を前にマイクを握る初村の声は、徐々に熱を帯びていった。「相手の背中に追いつき、追い越す。その気概を持って市内を駆けずり回る。初村、戦って参ります」
 陣営幹部によると、地元経済界の支援や強固な組織票を持つ公明党との連携はこれまで以上に強化された。だが西岡が街頭に立てば旧知の市民から声を掛けられる姿も頻繁に見られ、「西岡は強い。こちらはまだまだ足りない」と気を引き締める。
 ある県議は「1区の3割は浮動票」と分析する。街頭演説では、安倍の秘書として培った経験と人脈を強みとしてアピールするが、「言いすぎれば『反安倍』につながる懸念もある」。だが14日の解散以降も、安倍や党政調会長の高市早苗ら著名な国会議員を続々投入する予定。別の県議は新人の知名度不足をカバーするには「そこに頼るしかない」と話す。
 共産党新人の安江綾子(44)は党県委員会副委員長で県議の堀江ひとみらと長崎市内を回っている。4日に発足した岸田内閣の顔触れを「中身は今までと何も変わらない」と批判。被爆体験者の救済や核兵器禁止条約への参加を訴え、支持拡大に努めている。

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