ガソリン高騰

 ちょうどひと月前のこと、観光客が戻ったグラバー園や、客でにぎわう飲食店の写真が本紙を飾った。新型コロナが広がって閉じていた長崎市の観光施設が再開され、店の営業時間もいつも通りになって、紙面にはどこか安心感が漂っている▲「待った」がかかっていた佐世保市も9月のうちに元通りになり、県内の宿泊割引キャンペーンもまた始まった。コスモス開花の知らせが届き、紅葉の時季も近いこのごろ、少しの遠出をお考えの方もきっと多いだろう▲車でのお出掛けが心地よい季節というのに、あちこちからため息が漏れるようでもある。レギュラーガソリンの小売価格がぐんぐん上がり、11日時点の全国平均は1リットル当たり162円台になった▲実に7年ぶりの高値らしい。世界経済が息を吹き返しつつあり、原油価格が跳ね上がっている。離島への輸送費がかかる本県は全国で最も高く、1リットル170円40銭に▲灯油も値上がりを続け、燃料の価格を基に定める電気代、ガス代も値上がり傾向にある。秋の行楽に限らず、私たちの生活全体に、これから上向かせようという日本経済に、足かせになりかねない▲今からの気候のことだろう。朝晩は肌寒く感じる、秋の冷ややかさを「秋冷(しゅうれい)」という。家計や経済に漂う冷気はどうか、真冬の手前で収まることを。(徹)

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