オーケー社長、関西スーパーへのTOB「一度は先方から高い評価いただいた」 オーケー・二宮社長 単独インタビュー(前編)

 いま、(株)関西スーパーマーケット(TSR企業コード:570048320、伊丹市、東証1部、以下関西スーパー)の動向が、スーパーマーケット業界だけでなく、株式市場も賑わしている。
 関西スーパーは先に買収を打診していたオーケー(株)(TSR企業コード:290029155、横浜市)の提案を退け、エイチ・ツー・オー・リテイリング(株)(TSR企業コード:570169607、大阪市、東証1部、以下H2O)の傘下入りを8月末に発表した。この“奇襲作戦”にオーケーは9月3日、株価(当時)に約6割のプレミアム(上乗せ)をつけてTOBの意向があることを公表。関西スーパーの争奪戦は、個人投資家を巻き込む事態に発展した。オーケーとの協業を拒んだ関西スーパーは10月29日、伊丹市で開催する臨時株主総会で株主に対して、H2O傘下入りの賛否を問う。
 東京商工リサーチ(TSR)は、オーケーの二宮涼太郎・代表取締役社長に単独インタビューし、買収提案の狙いや今後の見通しを訊いた。

オーケー二宮社長(前編)

取材に応じるオーケー二宮社長(10月7日夜、横浜市)

―関西エリアへの進出を決めた背景は

 オーケーはいま、関東1都3県、国道16号線内を出店エリアにしている。ここへは引き続き積極的に出店していく方針だ。
 ただ、少子高齢化、人口減少が深刻化するなか、アフターコロナを見据え、エリア拡大が急務であると考えた。
 競争関係は今や同業他社のみではない。ドラッグストアも伸び、コロナ禍でEC利用も広がる。異業種同士との競争は避けられない。一方、需要は減っていく。業界の先行きは厳しさを増す。我々は「関東で勝ち残っていく」が、さらに成長を求めるには、関東の次の大市場である関西への進出が不可避だ。

―なぜ関西スーパーなのか

 我々は1980年~85年の間、当時業界内でも最先端を走っていた関西スーパーに店舗運営のノウハウなどを学ばせていただいた。
 例えば、店長の仕事や生鮮食品の鮮度管理など、いろいろ教えてくださった。店舗改装の際には、当時の社長や専務にも視察頂き、とてもお世話になった。長い社員では1年半、関西スーパーで研修を受けさせてもらった。
 創業者同士の交流はその後も続いたが、会社対会社の関係は薄くなってしまっていた。そうした経緯もあり、我々が関西に進出しようというなかで、「関西スーパーとご一緒したい」という弊社創業者である飯田勧の思いがあった。
 2016年に1度、関西スーパーに話を申し出ており、今回再び打診した。

―8月末に関西スーパーは、H2Oへの傘下入りを発表した

 この(2016年以降の)5年間、私と対面で連絡を取り合っている取締役の方がいる。今年6月の協議の際も、一度は(オーケーが提示した公開買い付け価格)1株2250円について、非常に高い評価を頂いた。
 両者で、先に向けて解決策を見出せるような前向きな提案もあった。我々としては一方的に何か押し付けようとはしていなかったので、協議を重ねれば前向きに進められると思っていた。なので、先方に特別委員会(以下委員会)が立ち上がったことも、「(協業に向けて)検討いただけるのだろう」と受け止めていた。

―しかし、協議の場は設けられなかった

 迅速丁寧に対応してきたつもりだが、それ以降、話をしても「委員会が立ち上がっている間は話すなと言われている」の一点張りで、経営陣同士の実質的な協議は拒まれた。
 時系列で振り返ると、H2Oの具体的なお話があったのが7月中旬。なので、それ以前から、どこかでH2O(との統合)案の方向ありきで先方は進めた部分もあるのかなという感じはする。

―9月24日に関西スーパーが開示した『各提案に対する見解(以下見解)』では、オーケーへの批判とも取れるような文言が並ぶ

 私どもも協議していない中で「あそこまで書かれて・・・」とは思う。ただ、細かな点を指摘すればするほど不毛な議論になりかねない。まとめようと思って協議をすれば、乗り越えられる話だと思う。
 H2O案が否決された際に協議の場でしっかり話を進めていきたいと思っている。ただ、特別委員会による報告書でがっくりきた部分があるのも事実だ。

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―例えば?

 1回目(8月2日)に大阪で特別委員会からのインタビューを受けた時は、「オーケーはディスカウンター」と繰り返し述べられていた。“暗い倉庫店舗の中で営業をしている”みたいなイメージを前提に話をされていた。関西の方はそもそもオーケーの店舗をご存じない。そこで、委員会の担当者さんに「ぜひオーケーの店舗をみてください」と、みなとみらい店(横浜市)の視察を提案した。
 視察では、今まで持っていたオーケーのイメージと違うところがあったようで、きわめて前向きな視察だった。
 ただ、公表後、8月31日に特別委員会の方から結果説明があり、オーケーの惣菜で1番売れている「ロースかつ重(299円、税抜)」について、『年齢層が高めの関西スーパーのお客さまにとって量がちょっと多い』と顧客層の違いの判断の一例として説明を受けた。
 視察時に言っていただければ、「ミニサイズ(159円、同)もやっています」と案内できた。当然オーケーも、顧客層は若い世代だけではない。ご高齢世代も多い。ニーズに合わせ、サイズ展開もしている。ロースかつ重のサイズを引き合いに出して、「顧客層が違う」と判断されたのには、正直がっくり来た。

―関西スーパーが態度を硬化させた要因は

 (関西スーパーの)9月24日の見解は、こういう状況になったうえでの書面だと思っている。先方は、書面で我々のことをスーパーではなく“ディスカウントストア”と表記していることからも、“Everyday Low Price(特売を設けず毎日低価格)”を謳う我々との売価政策の違いを強調したいのだろう。
 ただ、例えば6月に先方の経営陣と協議した内容からは、スーパーマーケットを実際に営んでいる者同士の感覚で、話せば解決できるのでは、と思っている。10月29日の株主総会でH2O案が否決されて、実際に話し合いの場についたら、売価政策の違いを含めて、十分乗り越えられるとは思う。
 我々をスーパーマーケットではなく、“ディスカウントストア”と表記している点は、関西における我々の発信不足の面も大きいと思う。ただ、オーケーの売り場をご覧になれば分かって頂けると思う。9月24日の見解であそこまで(批判的に)書かれることは、「だいぶ違うな」とは思っている。

―関西スーパーの長年のファンで株を保有している個人株主もいる

 関西スーパーが大好きで、応援の意味で長年株を持っていらっしゃる人も相当数いらっしゃる。ただ、今回の(H2Oとの)経営統合案では、関西スーパーはイズミヤ、(阪急)オアシスとの中間持株会社となり、結局、関西スーパー自体の経営はH2O出身の方が担うことが発表されている。関西スーパーが好きで株をお持ちになっている方にとっても、株を持つ会社自体の性格ががらっと変わってしまう。
 関西スーパーがH2O案をこのまま通したあとは、むしろ(関西スーパーの)経営陣の方たちは株主の矢面に立たない立場になられる。その後はH2Oの方が経営のかじ取りを行われるのであれば、統合後の方針をH2O側で株主さんにしっかりご説明するというのも、しかるべき行動だと思う。

―個人株主以外の動向は?

 当然、機関投資家は、経営統合案についてもかなり冷静な分析をされている。法人株主の皆さんに関しては、普段からお取引させてもらっている先がたくさんあり、お話の機会を頂いている。
 「時代が変わったな」と思うのは、とくに上場会社の方は、今回これだけ注目されている案件で、多くの論点もあるなか、自社の株主の方に対してしっかり説明できるのかということを、すごく意識されている。そこは皆さん、法人株主だから、例えば会社のいうことに無条件で賛成ですとか、お取引があるから無条件で賛成です、ということではない、という印象だ。

―関西スーパーは、第三者機関の算定としてH2O傘下入りした場合の株価の理論価値を最高で3128円になると示した

 先方の理論価値への評価は、一つ歴然とした結果が出ている。株価を振り返るとH2Oとの統合を公表する前日(8月30日)の終値が1320円。発表当日(同31日)、終値は220円ほど上昇した。しかし、2日後の終値は1374円に戻した。この3日間の動きから若干市場はプラス評価した程度だった。
 我々が(TOB価格の)2250円を9月3日に発表した。ストップ高をつけながら、その後、2000円前後で推移している。そこから3週間後の9月24日に先方が理論株価(1株あたり1787円~3128円)を初めて発表した。翌営業日の9月27日は、株価の動きはなく、むしろ下がったほどだった。

―関西スーパーが提示した理論価値への期待は限定的だったのか

 市場の評価とすると、先方が提示した数値(3128円)を市場が好感すれば、以降の株価は2250円を超えて上がっていくと思うが、それが起きなかったということは、一つ答えが示されていると思う。
 そもそも、先方の理論価値に基づいた(H2O傘下入りの)事業計画は、業績が右肩上がり前提で作られていて、さらに3社(関西スーパー、イズミヤ、阪急オアシス)合算の数値しか公表していない。少なくとも、株主の方が検証できるように各社別の計画をお出しいただきたい。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年10月14日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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