BRX、ダカールなどで持続可能燃料を採用へ。プロドライブ・ハンターT1+でのテスト開始

 バーレーン・レイド・エクストリーム(BRX)は10月13日、今年後半に開催されるFIAクロスカントリーラリー・ワールドカップの第5戦アブダビ・デザート・チャレンジと、続く第6戦ヘイル・ラリー、さらに2022年に実施されるダカールラリーで、新世代の持続可能な先進燃料を使用する最初のモータースポーツチームとなることを発表した。

 BRXが採用する持続可能燃料は、彼らが来年のダカールで走らせる新型マシン『ハンターT1+』を製作した“名門”プロドライブと、コリトン・アドバンスド・フューエルズが共同開発したもの。過去8カ月にわたって開発が続けられたこの新燃料は『Prodrive ECOpower(プロドライブ・エコパワー)』と名付けられた。

 プロドライブ・エコパワーは最新のFIA規制に適合。主成分は農業廃棄物から製造された第2世代のバイオ燃料と、二酸化炭素を回収して生成されたeフューエル(合成燃料)だ。この新燃料は同等のガソリンと比較したとき、温室効果ガス排出量を80%削減するとされている。

 開発にはハンターの3.5リットルV6ターボエンジンが用いられ、台上試験はイギリスに拠点を置くプロドライブ社の先進的なトランジェントダイノで行われた。同時にプロドライブ社製の新型ハンターT1+では、この新燃料を使った広範なテストプログラムが開始されている。

「私は気候変動への取り組みに役立つ新技術の開発や証明、促進を主導するモータースポーツを通じて行うことを大いに支持している」と語るのはBRXのチームディレクターを務めるデビッド・リチャーズ。

「ダカールとFIAクロスカントリーラリー・ワールドカップは、(従来のガソリンと)同等の性能と航続距離を実現できることを示す、次世代の持続可能な燃料の利点を紹介し、化石燃料の使用を削減するために道路用車両で使用できることを実証するのに最適な環境だ」

「プロドライブ・エコパワーはモータースポーツ用い開発されたものだが、このような持続可能燃料は無鉛ガソリンの直接の代替品として使用することができる。我々はその技術をさらに証明するために、多くの公道用車両にほぼ同じ燃料を使用することを計画している」

『プロドライブ・エコパワー』は、プロドライブとコリトン・アドバンスド・フューエルズが共同開発した新しい持続可能燃料だ
プロドライブとコリトン・アドバンスド・フューエルズが共同開発した『プロドライブ・エコパワー』を使用するBRXのプロドライブ・ハンターT1+

■新型マシンのフィーリングに「とても満足している」とナニ・ロマ

 コリトンのアンドリュー・ウィルソンCEOは、「当社はモータースポーツ業界向けにカスタムメイドの燃料をブレンドしてきた長い歴史を持っているが、進化する顧客のニーズをさらにサポートするために最近、新しい持続可能な燃料を提供する『Sustain(サステイン)』を立ち上げた」とコメント。

「プロドライブとの提携は、業界でもっとも優れたエンジニアリングの専門知識とともに、世界でもっとも困難なレース環境のいくつかで私たちの能力を試すための理想的な方法であると確信していた」

 新しいT1+規定に適合するように各部設計が見直されたプロドライブ・ハンターT1+を最初にドライブした、同チーム所属のナニ・ロマはニューマシンについて次のように語った。

「クルマはT1よりも幅が広がり重くなったにもかかわらず、以前と同じように機敏に感じる」

「(トラベル幅が280mmから350mmとなった)新しいサスペンションと大径タイヤは、過酷な条件により適している。また、大きくなったウインドウスクリーンは視界を大幅に改善してくれている」

「僕は一連のフィーリングにとても満足している。そして数週間後に訪れる中東での走行を楽しみにしているんだ」

 BRXチームはイギリスでの初期テストプログラムを終えた後、中東に向かい、ダカールで経験するのと同じ条件で、より広範囲にわたる耐久テストの作業を行っている。その後、チームはアブダビ・デザート・チャレンジ、ヘイル・ラリーを経て、来年のダカールに挑戦する予定だ。

プロドライブ社の先進的なトランジェントダイノでのテストの様子
ハンターT1+は従来よりも大きな17インチのリムに37インチのタイヤを履く。サスペンショントラベルは280mmから350mmとなり、全幅は2mから2.3mに広げられた。
「大きくなったウインドウスクリーンは視界を大幅に改善してくれている」とテストドライブを行ったナニ・ロマ

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