WBC王者・矢吹正道が〝バッティング騒動の真実〟怒りの激白「僕も言いたいことはたくさんある」

世界ベルト奪取で疑惑の目を向けられた矢吹正道

ついに沈黙を破った。先月22日のWBC世界ライトフライ級タイトルマッチに勝利し、現役続行を決めた王者・矢吹正道(29=緑)が本紙の取材に応じた。同試合を巡っては、前王者の寺地拳四朗(29=BMB)の陣営が9ラウンド(R)に「故意のバッティングがあった」との意見書を日本ボクシングコミッション(JBC)に提出。問題の映像はネット上で出回り〝疑惑〟の目を向けられていた。渦中の矢吹を14日の練習後に直撃すると「全て話します」と怒りをぶちまけた。

――騒動となっている一件で話を聞きたい

矢吹 全然、いいですよ。今まで黙っていましたが、僕も言いたいことはたくさんある。直接話を聞いてこないで勝手に記事を書かれ、それを見て騒ぐ人がいる。片方の意見だけ取り上げられるのはおかしい。何でも答えますよ。

――あのシーンを丁寧に説明してほしい

矢吹 ボクシングって手と手で戦うスポーツですが、体で戦うというか、ぶつかることって絶対にあるんです。特に拳四朗選手は距離が遠いタイプ。普通にやったら絶対に勝てないんですよ。あの独特な距離感とジャブがすごい選手なので、そこを崩すために自分はカウンターや踏み込みの練習をしていた。そのクセが出てしまったんです。

――なぜ頭が当たってしまったのか

矢吹 拳四朗選手は後半にポイントを取れていなかった。だから、いつもなら下がる展開でしたが、その時は前で止まっていたんです。それで踏み込んでぶつかってしまった。踏み込まないとパンチが当たらないので。カットして血が出て大騒ぎになりましたが、そうじゃなければ大ごとにはなっていないと思います。選手や関係者には「ボクシングでは当たり前のことだから気にするな」って言われていますね。

――映像が出回って騒動になっている

矢吹(10Rを戦った中で)一部だけピックアップして、スローモーションにしちゃったら、ほとんどの試合でああいうことがありますよ。それを一部の人間が根掘り葉掘り、騒ぎ立てて…。言い返したかったけど、自分を応援している方は「何を言っても揚げ足を取られる。黙っていた方がいい」と連絡をくれた。言いたくても言えないもどかしさがずっとありましたね。

――誹謗中傷はあるか

矢吹 たくさんありますよ。DM(ダイレクトメッセージ)も来ます。でも、見たらすぐにブロックするだけ。自分は批判されても痛くもかゆくもないし、気にしません。でも、行き過ぎると家族に連絡がいったり、子供に影響したりする。だから黙っていました。今、SNSで傷つけられて、人が亡くなったりしている。まだ何も分かってないヤツらがいるんだなって思いますね。

――拳四朗陣営は「ケンカするつもりはない」と言っている

矢吹 とはいっても結果的に自分がマイナスに見られる記事になっているし、読んだ人も大ごとにしちゃう。没収試合にしろって声もありましたしね。でも、拳四朗選手に対しては何も思っていません。ただ、早く発信してくれって思います。じゃないと、収まるものも収まらないので。

――判定が覆ることはなさそうだが

矢吹 WBCからダイレクトで「再試合しろ」って指令があれば、言うことを聞くだけ。逃げることはないですよ。ただ、向こうが(ランキング)1位になって戦う状況になったらやりますが、「もう1回チャンスを」みたいなのはおかしい。

――今後のビジョンは

矢吹 まずは来年2試合くらい防衛戦をこなし、年末の統一戦に向けて動いています。遠い目標として来年の統一戦に勝ち、階級を上げて世界チャンピオンの中谷潤人選手(WBO世界フライ級王者)とやりたいなって思います。

【バッティング騒動】問題のシーンは9R残り1分48秒。矢吹のヒッティングで拳四朗は右目上をカットして流血。10RにTKO負けしてV9を逃し、試合後に患部を10針以上縫う処置を受けた。この場面のスローモーション映像がSNSで拡散され「故意のバッティングだ」との指摘が拡大。新王者は一転してバッシングの対象となった。拳四朗陣営は5日付で弁護士を通じてJBCへ意見書を提出し、3週間の期限を設けて回答を要求。JBC側は「映像を確認し、どう回答するか検討中」としている。

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