2021衆院選ながさき 長崎2区 知名度不足、共通の課題

松平浩一氏(左)、加藤竜祥氏(右)

 「未来あるまちづくり、古里づくりに精進していく」。2日夕、自民党新人の加藤竜祥(41)は島原市内で県議らと宣伝カーの上に立ち、マイクを握った。地元で初めての街頭演説だったが、足を止める通行人はまばら。通り掛かりの高齢男性がつぶやいた。「竜祥君はどれね」
 衆院議員を3期務め、体調不良を理由に引退した父寛治(75)の後任に急きょ決まった。父の私設秘書として主に地元で活動してきたが、複数の自民議員は「有権者から『顔と名前が一致しない。見たことがない』との声を聞く」と口をそろえる。
 父親は前回10万票近くを獲得し、次点の野党候補に4万票の差をつけた。その組織を引き継ぐが、ここ4年間で支持層の高齢化がさらに進んだ。短期決戦に伴い地元での“露出”が時間的に制約される現状に、支援者は「これまで父親を支持していた有権者が今回どう反応するか」と票の動きを読みあぐねている。
 擁立決定から1カ月がたった12日早朝、竜祥は大票田諫早市の道路沿いでドライバーらに手を振りアピールしていた。「島原半島でさえなかなか浸透していない。諫早、時津、長与はもっとそう。とにかく走り抜けるしかない」。取材にそう答えると、慌ただしく西彼地区へ向かった。
 9月末の日曜、島原市内の海岸。再選を目指す立憲民主党前職の松平浩一(47)は市民グループの清掃活動に姿を見せた。「島原にゆかりがある松平さん」-。新入会員としてこう紹介されると、「コロナもぶった切る勢いで草を刈っていきます」と語り、場を和ませた。
 「島原藩主も務めた深溝(ふこうず)松平家の末裔(まつえい)」という縁で比例北陸信越からくら替えし、選挙区での戦いに挑む。ミニ集会や地域回りを重ね、政府のコロナ対応への不満などを吸い上げてきた。特に力を入れてきたのが相手地盤の島原半島だ。
 「相手が息子に代わり、その話題でこちらが埋没している」と陣営関係者は懸念するが、松平本人は「誰が出ても自分の政策を訴えていくだけ」と意に介さない。9日には島原で事務所開きをし、「経済回復が遅れている」と政権批判を強めた。
 同日は連合長崎や国民民主、社民の関係者も加わった総合選対が発足。「ようやく体制の姿が見えてきた」との声の半面、知名度不足という課題は相手陣営と共通する。事務所開きに参加した支援者は口元を引き締める。「衆院議員を1期務めたとはいえ、投票用紙に名前を書いてもらったことがなく、新人と同じ。島原での浸透度の目標を100点満点とすれば、30、40点。まだまだだ」

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