焙煎香房 Segar-Beans(セガールビーンズ) ~ 焙煎したての新鮮な珈琲に魅せられて

焙煎(ばいせん)したての珈琲(コーヒー)を挽いた途端に立ち上る、鮮烈な香り。

ドリッパーにセットして静かにお湯を注げば、ふくふくと粉が膨らんでいきます。

カップに注がれた珈琲は、雑味のないスッキリとした味。

口に含むと、旨味だけが静かに沁みわたっていくようです。

焙煎したての珈琲の香りと味に魅せられて、焙煎香房 Segar-Beans(セガールビーンズ)を訪ねました。

初回限り、注文時に「備後とことこを見ました!」と伝えると5%OFFあり

珈琲は生鮮食品

Segar-Beansの珈琲の香りを初めてかいだとき、からだに衝撃が走りました。

今までに経験したことのない、優しくやわらかな、一瞬で幸福感に包まれるような香りです。

焙煎後の珈琲の成分は、時間の経過とともに変化していきます。

焙煎直後は香りも味も若いのですが、焙煎の翌日から3日目あたりにかけて、しだいに香りとコクのバランスが整ってくるそうです。

1か月を過ぎると、珈琲の酸化が進んできます。

豆の中には油脂が含まれており、空気中の酸素に触れることで酸化して嫌な臭いを発するように。

焙煎後1か月が、おいしく珈琲を楽しむ目安です。

珈琲の味を決める焙煎

珈琲豆は「コーヒーノキ」という植物の種子。

花が咲いたあとにできる果実(コーヒーチェリー)の中に、2粒の種子が向かい合わせに入っています。

この種子を取り出し天日に干してできるのが、珈琲の「生豆」です。

生豆には、味も香りもほとんどありません。

焙煎をしてはじめて、独特の味や香りが生まれます。

焙煎した珈琲(画像提供:Segar-Beans)

珈琲の焙煎には大きく分けて、浅煎(い)り、中煎り、深煎りの3段階があります。

珈琲の独特な味の8割が焙煎によって決まるといわれるほど、焙煎は重要な工程です。

焙煎香房 Segar-Beansとは?

注文を受けてからその人の好みに合わせて豆を焙煎する小さな焙煎所、「焙煎香房 Segar-Beans」。

自宅のキッチンで焙煎した珈琲を友人たちに振る舞っているうちに、どんどん評判になったため、ビジネスとしてスタートさせました。

本業を別に持ちながら、副業として自宅で焙煎をしているので、それほど大量には作れません。

まだあまり名前も知られていない、小さな焙煎所です。

しかし、鮮度の良さではどこにも負けません

新鮮な珈琲のおいしさを味わってほしい、その思いを込めてていねいに焙煎しています。

心を込めた焙煎

実際に珈琲の焙煎を見せてもらいました。

豆にもいろいろな種類があります。

コーヒーチェリーの中には、通常2粒の豆が入っていますが、まれに丸い種子が1粒だけできるものがあります。

「ピーベリー」と呼ばれる、稀少な豆です。

左:ブラジル ピーベリー 右:コロンビア クレオパトラ

今回焙煎するのはこのピーベリー。

まず、焙煎の前に1粒ずつ豆をチェックし、きれいな豆だけを選びます。

黒くかびている豆や割れた豆、虫食いの豆などが混じっていると全体の味のバランスを崩してしまうため、ていねいに取り除くのです。

きれいな豆だけになったら、100度に予熱しておいたロースターの中に投入して、焙煎スタート!

豆にまんべんなく火を通すためにロースターが回転し、中の豆がシャラーン、シャラーンとリズミカルな音を立てます。

このまましばらく焙煎を続けましょう。

焼き上がるまではおよそ20分です。

焙煎が進むにつれて、モヤモヤと水蒸気が出始めました。

焙煎によって生豆に含まれる水分が飛ばされていくのです。

やがて、温度が200度くらいに上がってくると、パチッという小さな音が響きます。

最初の爆ぜ(はぜ)、1ハゼです。

このあたりから水蒸気がモウモウと出てきて、珈琲の色がどんどん濃くなり、いい香りが漂いはじめます。

さらに加熱を続けると、ポンポンとポップコーンが弾けるような音。

2ハゼです。

焙煎をストップしましょう。

焙煎をしっかりと止めるため、専用のクーラーを使って豆の温度を急速に下げていきます。

できあがりました!

焙煎したての珈琲の香りが部屋に充ちています。

特別に、その場で試飲させていただきました。

ミルで粉にして、ドリッパーにセット。

全体にゆっくりとお湯を注ぐと、みるみる間に珈琲がふうわりと盛り上がります。

これは、お湯を注がれた豆から炭酸ガスが放出されるから。

豆の鮮度が落ちるとガスが抜けていってしまうため、ふっくらと膨らまなくなるのだとか。

むくむくと膨らむのは、新鮮な珈琲のしるしなのです。

中心あたりで500円玉くらいの円を描くように、ゆっくりとお湯を注ぎます。

コポコポと落ちていく液体の美しいこと。

カップに注がれた珈琲は、焙煎の過程を見てきたせいか、神々しい雰囲気すら放っているように感じました。

ブラックで飲んでも、雑な苦味は一切なく、ふんわりとした甘さを感じます。

これがピーベリーの旨さ、焙煎したての新鮮な珈琲の旨さなのですね。

この珈琲はどうやって手に入れたらいいのでしょうか?

tricoter+(トリコテ)での試飲販売のようす(画像提供:Segar-Beans)

Segar-Beans 10月の試飲販売

日時:2021年10月17日(日) 午前11時~午後4時

場所:tricoter+(トリコテ)(雑貨店) 福山市赤坂町赤坂1214-11

もっと珈琲と焙煎のことを教えてもらうため、焙煎士の花岡 小百合(はなおか さゆり)さんにインタビューをしました。

焙煎香房 Segar-Beans 花岡 小百合さんにインタビュー

焙煎香房 Segar-Beansの花岡 小百合さんにお話を聞きました。

第3の人生を焙煎と

──「焙煎香房 Segar-Beans」とはどういう意味ですか。

花岡(敬称略)──

Segar(セガール)はインドネシア語で「新鮮な」、Beans(ビーンズ)は英語で「」という意味です。

「焙煎香房」には、普通の「工房」の字ではなく、香り豊かな豆に合わせて「」の字をあてました。

──焙煎に出会ったきっかけを教えて下さい。

花岡──

3~4年ほど前、出雲大社へ行くついでにお友達に誘われて寄った島根県松江市の「太助珈琲屋」で、珈琲を焙煎するワークショップに参加しました。

そのとき使ったのはこのハンドロースターなのですが、焙煎した珈琲を飲んだときに、今まで私がおいしいと思って飲んできた珈琲は何だったの?とものすごい衝撃を受けたんですね。

ハンドロースターを買って帰ろうかと思ったけれど、「いや、ちょっと待って、これはなんか衝動買しちゃいけない」と思って、帰ってから2週間ほど考えました。

2週間考え続けて、やっぱり私はあのおいしいコーヒーを飲みたい、そう思ってもう1回島根に行き、そしてもう1回珈琲を飲ませてもらって、ロースターを買って帰ったんです。

ハンドロースター

小さなロースターでは3日分ぐらいしか焙煎できないので、趣味として少しずつ楽しんでいました。

ときどき遊びに来た人に淹れてあげると、「おいしいねえ!私も豆がほしい」っていわれて、「いいよいいよー」と調子に乗って渡していたのですが、「お友達にもあげたいから」とか、だんだんリクエストされる量が増えて、プレゼントできる量じゃなくなってきて。

この頃、周りのかたを見て、60歳を過ぎてからの第3の人生というものを考えていたんですね。

60歳になっても社会のなかで居場所を作るにはどうしたらいいんだろうか、という問いと、珈琲の焙煎が結びついて、じゃあこれをビジネスにしてみようかなとなったのが、2020年の秋でした。

周りのかたたちにも背中を押してもらいました。

自宅のキッチンで副業で始めるんだから、もし失敗したとしても失うものは何もない自分の財産として道具や知識は残るし、まあいいかー!と思って開業したのが、2021年の春です。

お友達に誘われて出会った珈琲の焙煎、そして2週間考えて手にしたこの小さなハンドロースターが、自分の人生を歩いていくための道具になりました。

──どんな珈琲豆があるのですか。

花岡──

レギュラーで用意しているのは「コロンビア クレオパトラ」や「グァテマラ ウェウェティナンゴSHB」など5種類です。

それに加えて、毎月「今月の珈琲」として1種類を扱っています。

2021年10月の珈琲は「ブラジル 手摘みピーベリー」です。

毎月の珈琲には、季節に合わせて冬場はチョコレートフレーバーのもの、夏場は爽やかなものとか、私と同じくらいの年齢の女性が好みそうな「ピンクフラミンゴ」や「さくらブルボン」などの名前がついたものなんかをピックアップしています。

キッチンを預かるかたが選んだ珈琲で、家族の健康につなげてほしい、そう願っているんです。

──珈琲は健康にいいと聞きますが。

花岡──

珈琲にはカフェインの他に、ポリフェノールが豊富に含まれています。

このポリフェノールが動脈硬化や脳卒中などのリスクを下げることや、珈琲をよく飲む人はメタボリック症候群になりにくいことなどが知られていますね。

「お医者さんから大腸ポリープに珈琲がいいから飲みなさいといわれた」と、買ってくれる人もいるんです。

浅煎りの珈琲を飲んで行なう「コーヒーダイエット」にも注目が集まっています。

実は私も7キログラム痩せたんですよ。

Segar-Beansの今とこれから

──今のお客さんはどのような人ですか。

花岡──

私の珈琲の味や香りに驚いて、お店で使いたいと言ってくださる喫茶店や料理のお店もあります。

不安はありますが、失敗してもいいから実績を積んでいこう、少しずつ新鮮な珈琲のよさを知ってもらおう、と思ってお話をお受けすることにしました。

2021年10月16日(土)から、カフェ「風の時計」で出してもらえることになったので、「Segar-Beansの珈琲を飲みたい」と注文してくださいね。

FacebookやInstagramを見て、東京や千葉から連絡をくださるお客さんもいます。

先日は、FMふくやまのコーナーでお話をさせてもらう機会がありました。

5分間の出演でしたが、ラジオを聞いたというかたから注文のメールが来て、驚いています。

それから、応援してくださっているtricoter+(トリコテ)で試飲販売をしたり、レンタルスペースで他のかたとコラボレーションしてカフェみたいなのを開いたり。

とにかくいくら言葉や文字で伝えても、実際に体験してもらわないとわからないので、いろいろなところへ出かけていって、飲んでもらっています。

tricoter+(トリコテ)での試飲販売のようす(画像提供:Segar-Beans)

将来的には、焙煎小屋をやってみたいですね。

小さな焙煎小屋にお客さんが豆を買いにきて、「じゃあこれを200グラム深めの中煎りでください」なんて注文を受けて、そこから私が豆を焙煎する。

できあがるのを待ってくださっているお客さんに、別の珈琲を無料で淹れてあげて試飲してもらったり、珈琲に関係するモノを置いておいて、「ああ、ドリッパーが割れちゃったからこれ買っていくわ」「一緒にこのチョコレート食べるとおいしいのよね」とか。

私一人で、数千人分の珈琲を焙煎できるわけじゃないけれど、新鮮な珈琲っておいしいな、と思ってくれる人たちと一緒に、珈琲文化を作っていけたらいいな、と思っているんですよ。

副業でも60歳からでも、夢を追いかけて

珈琲の香りに包まれながら、花岡さんのお話を聞いていると、なんだか元気が出てきます。

これから迎える第3の人生の道を、「自分の手で少しずつ切り拓くためには、副業でも女性でも遅くない、子育ての次は自分の夢を追いかける」と笑う花岡さん。

花岡さんの焙煎した珈琲は、おいしい珈琲の文化とともに、飲んだ人それぞれの夢を少しずつ広げていっているのかもしれません。

初回限り、注文時に「備後とことこを見ました!」と伝えると5%OFFあり

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