京都大、霊長類研究所の元教授の4論文 捏造と認定

京都大

 京都大は15日、霊長類研究所(愛知県犬山市)の正高信男元教授(66)が2014~19年に発表した4本の論文について、実験を行った事実が認められず捏造(ねつぞう)と認定したと発表した。正高氏に論文撤回の勧告を行い、処分を検討するという。正高氏は「調査結果の内容を私自身がまだ大学側から一切知らされていない」などとするコメントを出した。

 京大の説明では、正高氏は霊長研に所属していた2019年11月、大麻の合法成分「カンナビジオール」の効果を18~19歳の37人で検証したとする論文を発表した。しかし実際に研究が行われていたか疑問視する通報があり、昨年6月から調査を始めた。

 京大によると、正高氏の研究室を調べたが、論文に関連する資料はなく、被験者の参加の事実も確認できなかった。実験に用いたとするカンナビジオールの購入実績も、実験の使用分とされる量と見合わなかったという。

 さらに正高氏は、4本の論文に対する調査に研究データを提示しないなど、いずれも協力しなかったといい、京大は故意による捏造があったと判断した。

 正高氏は認知神経科学が専門で20年3月に定年退職している。著書に「ケータイを持ったサル」「マスクをするサル」などがある。

 霊長研を巡っては昨年6月、チンパンジー飼育施設の整備などで約5億円に上る不正支出があったとする調査結果を京大が公表している。この日、京大で開かれた記者会見に出席した霊長研の湯本貴和所長は、不正が相次ぐ現状について「倫理に関しては啓発はきちんとやっているが、それでも不正が起こる理由については答えに窮する」と苦渋の表情を浮かべた。

京都大霊長類研究所元教授の研究不正について謝罪する湯本貴和所長(右端)ら=京都市左京区・京都大

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