南米に移民した沖縄県人の苦難、音源に残る 1973年と78年に芥川賞作家・大城立裕さんが調査 20日から公開

 昨年10月に他界した沖縄初の芥川賞作家・大城立裕さんが、1973年と78年に県史編纂(へんさん)所長として南米などを訪れ、沖縄県系1世らに移民体験の聞き取り調査をした際の音源が残っており、活用の動きが始まっている。このうち、1908年に沖縄からブラジルへ初めて移民した一人の大城カメさんの音源もある。移民を題材にした小説「ノロエステ鉄道」の創作につながったインタビューで、20日から県立図書館の企画展で初公開される。移民史研究に加え、大城立裕さんの文学作品を読み解く上でも貴重な記録となっている。 少なくとも70人余に聞き取り調査した音源は、カセットテープ70本余に記録され、県公文書館内の県教育庁文化財課史料編集班の書庫に保管されてきた。県が移民資料をまとめる一環で2019、20年度の2年かけてデジタル化した。今後、同班と県立図書館が連携し、証言した県系1世の遺族や子孫らに承諾を得ながら、移民史の記録や展示などへの活用を検討する。

 大城カメさんの音源を含めて展示する企画展「小説『ノロエステ鉄道』とブラジル・カンポグランデの沖縄県系人」は、20日から11月8日まで那覇市泉崎の県立図書館4階交流ルームで開かれる。来年の「第7回世界のウチナーンチュ大会」のプレイベントで、同時に大城立裕さん没後1年を機にした企画となっている。

 大城カメさんへの聞き取り音源は展示室で一部を流し、資料室では約1時間にわたる音源も聞ける。「ノロエステ鉄道」の自筆原稿や創作メモなども公開する。

 企画展を担当する県立図書館資料班の原裕昭さんは、海外へ移民した県系人らの苦難の日々に触れ「文学を通して県系1世たちの人生に思いをはせたい。世界のウチナーンチュ大会に向けて移民への理解を深める機運が高まっていけばと思う」と来場を呼び掛けた。同企画展の問い合わせは県立図書館(電話)098(894)5858。(古堅一樹)

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