年5%のリターンで月1万積み立てて続けれても足りない?リアルな資産形成の思考

よく「資産形成は無理のない程度に。毎月1万円でもとにかく続けることが大事」と言われます。確かに、初めの一歩はそれでも良いでしょう。ただ、本格的な資産形成をするには、それだけでは足りないのも事実です。


年5%のリターンはすごいのか

皆さんのなかには資産運用に興味を持たれて、投資信託で毎月コツコツと積立投資をしている人もいると思います。

では、皆さんは毎月買い付けている投資信託に、どのくらいのリターンを期待しているのでしょうか。年10%でしょうか。それとも年20%でしょうか。

それとも、「高いリターンの裏には高いリスクがあるので、元本を大きく割り込まれても困るし、怖いから、年5%程度もあれば十分」と思っていますか。

少し古い話題で恐縮ですが、5月に国際連合が発表した「世界経済状況・予測」によると、2021年の世界の経済成長率(実質GDP成長率)は5.4%でした。世界中の株式市場に分散投資を行った場合に得られる期待リターンが、この実質GDPにほぼ連動するとしたら、国際分散投資型の株式投資信託に期待されるリターンが年5%というのは、ある程度、合理的な数字なのかも知れません。

恐らく多くの人は、年5%のリターンが安定的に実現するなら、それはとてもすごいことだと思うのではないでしょうか。

日本がゼロ金利政策を採りだしたのは1999年ですから、かれこれ22年間という長い時間にわたって、超低金利が続いていることになります。今、成人している人はもちろんのこと、30歳前後の人にとっても、「金利ってなに?」というくらい、金利のない世界が常態化してきました。

そういう人たちの目から見れば、年5%のリターンが安定的に得られるのは、確かにすごいことのように見えるのかも知れません。

5%のリターンで満足できるのはお金持ちだけ

では、年5%のリターンが安定的に実現するとして、どの程度、満足のいく経済効果が得られるのかを考えてみたいと思います。

確かに、年5%程度のリターンで十分という人もいます。金融資産が5億円程度の人からすれば、5%リターンで2,500万円の運用収益が得られますから、過大なリスクを取らずに安定的に得られるリターンであれば、それでよしとするでしょう。

お金持ちは資産運用をするうえで、非常に有利な立場にあります。同じ5%のリターンでも、より大きな資金を投じることが出来るので、それだけ収益の絶対金額が大きくなりますし、資金にゆとりがあるので、半分遊びの感覚で、極めてリスクの高い投資対象に資金を投じることも出来ます。仮にこの手の投資に10の資金を投入し、そのうち8が紙切れになったとしても、残りの2がそれぞれ10倍になれば、最初の投資元本は倍になります。

こういったお金持ちの運用に対し、月1万円程度をコツコツと積み立てて、年5%のリターンで運用した場合、果たしてどの程度の運用収益が得られるでしょうか。

これは、オンライン証券会社などが提供している積立シミュレーションをちょっといじれば、誰でも簡単に計算できます。
楽天証券の「積立簡単シミュレーション」を使って計算してみましょう。

月1万円を年5%のリターンで運用し、30年間積み立てた場合の元利合計金額は、832万2586円。その内訳は、積み立てた元本部分が360万円で、運用収益は472万2586円です。確かに積み立てた元本以上の運用収益が得られていますから、年5%のリターンが安定的に実現した場合の効果は、ある程度見られると言っても良いでしょう。

でも、絶対金額で考えてみて下さい。30年間も積み立てて、ようやく得られた運用収益が472万2586円です。30年といえば定年を迎えた人の人生の半分に相当します。

それだけの長い時間をかけてコツコツ努力した結果が新車1台分(ちょっと高級車かも知れませんが)というのは、いささか悲しいと思いませんか。何もしないよりはマシですが、いくら年5%リターンが安定的に実現したとしても、月1万円の積立投資では、かけた時間も大した味方にならないということです。

「資産運用にありがちな誤解「少額投資で資産ができていると思ってはいけない」の記事でも触れましたが、いくら少額資金を長期にわたって積み立てたとしても、元本が少額では投資成果も少額にならざるを得ず、結果的に大した資産にはならないことを、この数字は物語っています。

コツコツ型の資産形成は報われない?

世の中には、「とにかくコツコツと、月1万円でも良いから積立投資に回しましょう」などの言葉が溢れかえっていますが、それだけで資産形成ができていると思ってはいけません。ある程度の資産を投資で築こうとするならば、投資する元本を大きく増やすか、もしくはリスクの高い運用をするとなってしまうのです。

それは逆の見方をすると、なるべくリスクを取らないようにして、かつ少額資金でコツコツと投資をし続けたとしても、金融資産を大幅に増やすのは難しいということでもあります。

何となく「毎月少額だけれども、積立投資を続けていれば、たぶん老後は安心」などと、漠然とした感覚で資産形成をしているつもりになっている人は要注意です。30年後にフタを開けてみたら、思っていたよりも資産が築けていかなかった、という状況に陥る恐れがあります。

投資を少額から始めたら、次の目標を考えなくてはいけません。

本当に資産を築きたいのであれば、「毎月積み立てられるお金は、お給料から諸々の生活費を差し引いて残った1万円だから、この金額でiDeCoをやれば老後のお金が出来るだろう」ではなく、「定年までの30年間で最低1億円をつくる」という具体的な目標値を定め、それを達成するためにはどういう方法があるのかを考えた方がいいでしょう。

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