2021衆院選ながさき 長崎3区 「実績」か「世代交代」か

(左から)石本啓之氏、山田博司氏、山田勝彦氏、谷川弥一氏

 2日、自民党前職の谷川弥一(80)は大村公園駐車場にいた。聴衆約100人を前に、成立に尽力した国境離島新法を挙げ「政治家に大事なのは行動し結果を残すこと」と言葉に力を込めた。
 前回は約8万4千票を獲得。野党候補3人の得票総数を3万近く上回る圧勝だった。今回も強固な後援会を軸にした組織戦で7選を目指す。
 ただ隣の長崎1、2区で自民立候補予定者が40代に代わり、谷川の年齢を不安視する声は増している。そんな懸念を振り払うかのように、8月から大村の県市議らと街頭に立ち、1日2回マイクを握ることも。「選挙期間前のつじ立ちで本人が話すのは初めて。それだけ危機感があるのだろう」と陣営関係者は話す。
 にもかかわらず対立候補が複数出ることで「反自民の票が割れる」と楽観ムードが周辺に漂う。ある自民市議は「この時期にしてはのんびり。気を抜くと票が流れてしまう」と危ぶむ。
 その受け皿になろうと立憲民主党新人の山田勝彦(42)が駆け回る。父の元農相、正彦が谷川と競って築いた人脈を受け継いだ。当然、世代交代を訴える。
 月に延べ1~2週間、3区内に散らばる離島を巡り、対馬市では父と手分けして地域を歩いた。10日は五島市内で演説し「島の消費税ゼロ」など振興策を列挙。20~30代のスタッフを中心にチラシを配布するなど若さを前面に打ち出している。
 だが、これだけ回っても離島では五島市出身の谷川の存在が大きく「島で勝つのは難しい」(後援会関係者)。このため陣営は浮動票や無党派層の多い大村市、佐世保市早岐地区での浸透が鍵を握るとみる。その上、五島市選出県議で無所属新人、山田博司(51)の出馬により「自民票を奪い、勝彦と谷川の票差が縮まるのでは」と期待をつなぐ。
 当の博司陣営も「離島では特に自民票を取り込めている」と手応えを語る。実際、街頭演説の聴衆には自民支持者の姿もみられる。
 今月、正式に出馬表明する4年前から、地域を“どぶ板”で回り知名度アップを図ってきた。「これまで12万世帯以上に足を運んだ。運動量では他候補に負けない」と表情は自信にあふれる。10日はJR大村駅前で、災害対策や子ども政策など県議5期の実績をアピール。「県民の声を国政に届け、新しい日本、新しい長崎をつくりたい」と訴えた。
 しかし、政党の推薦や大きな団体の支援もなく、支持をどこまで広げられるかは未知数-他陣営からはそんな声が聞こえる。
 三つどもえになるとみられたが、元東彼川棚町議の石本啓之(52)も15日、出馬の意向を明らかにした。=敬称略=

© 株式会社長崎新聞社