【衆院選2021】「Z世代」の衆院選 お笑い芸人マサの願い 「真剣に生きる人が救われる政治を」

 衆院選は19日公示、31日に投開票を迎える。コロナ禍で社会が大きく変わる中、使い慣れたSNS(会員制交流サイト)で拡散と共鳴を繰り返すデジタルネーティブの「Z世代」は政治に何を思うのか。

 「『キングオブコント』とか『M─1グランプリ』とか輝ける舞台に憧れている。でも芸人としての収入はゼロ。先行きが見えない。肉体労働で食べてはいけるけど、やっぱりお笑いで稼ぎたい」

 神奈川県内の大学野球部で活躍し、リーグ本塁打王も獲得した。卒業後は外車ディーラーに就職したが8カ月で退社。中学の同級生からの熱烈な誘いで昨春、お笑い芸人になった。工事現場の搬入や荷揚げの仕事で生計を立て、夢を追いかける。

 「大学時代は政治に興味もありませんでした。初めての投票は社会人1年目の参院選。役所で候補者ポスターを見て、若そうな人にとりあえず投じました。適当でした」

 「政治を身近に感じるようになったのは荷揚げで一緒に働く人の考えに触れたから。「若いんだから投票ぐらいしておけよ」と言ってくれたり、母親の治療費を稼ぎながら家族を養っていたり。みんな真剣に生きているから政治に向き合える。不安定な境遇の人がいると知り、まじめに考えなければと思うようになった」

 自民党総裁選を経て岸田文雄内閣が誕生した。たまに報道に触れていたが、当事者意識は持てなかった。

 「『国民ファースト』みたいに言うけれど、結局は自民党の内輪で盛り上がっているだけ。僕らには関係ないと感じました。芸人と違って、政治家は政治家でいるだけで給料をもらえるし、コロナ禍でも身分は保障されている」

 「若者がいないのも政治を身近に感じない理由の一つ。派閥政治は若い人や社会を変えようという人が嫌われ、同調しないといけないというイメージです。若い政治家が出てきてほしい」

 「SNSでフォローしている政治家は河野太郎さんだけ。でもツイッターでバズっていた山本太郎さんは印象に残っています。演説に熱気があり、涙ながらに語っていた。『この人なら、僕たち若者を見てくれているのかな』と思いました」

 一方で、思い起こすのは、昨年9月の麻生太郎氏による「若者が政治に関心がないことは悪いことではない。それだけ日本で平和に暮らしているということ」という趣旨の発言だ。

 「若者が軽視されていると感じた。支持基盤である高齢者のための政治ができ、当選しやすくなると言っているように聞こえた。正直、若者が政治を変えられるとは思っていないけど、真剣に考えて今回の衆院選は投票に行くつもりです」

 「テレビやネットなど情報があふれ、何が正しく、判断材料にすればいいか分からない。でも、若者のことを考えてくれる人に投票したいと思う。一緒に働いている人たちが救われる政治をしてほしい」

 「夢を追う生き方は本当に楽しい。海外では『お笑いは政治を風刺する』というけれど、そんな芸風が日本でも当たり前にあっていいはず。まずはこの選挙でいろいろ調べ、知ることから始めたい。僕にとっての選挙は今、そんな感じです」

 ◆Z世代(ジェネレーションZ) 米国発の概念で1965~80年ごろの生まれがX世代、80~95年ごろがY(ミレニアル)世代と呼ばれ、それに続く90年代中盤~2000年代生まれがZ世代とされる。世界人口の3割を占め日本では人口の約15%。生まれた時からインターネットが普及した中で育った「デジタルネーティブ」で、多様性を受け入れ、人権や環境などの社会問題への意識が高い傾向があるとされる。

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