芸人・野田クリスタル×ゲームプロデューサー・岡本吉起対談、“ゲームづくりの鉄則”とは?

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お笑いコンビ・マヂカルラブリーのボケ担当であり2020年のピン芸コンテスト「R-1ぐらんぷり2020」、漫才頂上決戦「M-1グランプリ2020」でチャンピオンに輝いた野田クリスタルさん。

2021年4月にはゲームクリエーターの後藤裕之氏とともに、少人数・低予算でニンテンドースイッチ向けに『スーパー野田ゲーPARTY』を開発し、8万本超えのヒット作となりました。そして『スーパー野田ゲーPARTY』のヒットをきっかけに「洒落にならないくらいお金がかかって断念」したオンライン機能を導入した新作『スーパー野田ゲーWORLD』の開発を、前回同様クラウドファンディングにて実施しています。

今回、インディゲーム開発をする野田クリスタルさんとOKAKICHI SDN. BHD.ディレクターで「日本を元気にする」を合言葉にYouTubeでも積極的に情報を発信するゲームプロデューサー 岡本吉起さんとの対談を実施。『スーパー野田ゲーWORLD』の開発談義をするとともに、ゲーム作りの心得、これからのゲーム開発について話を伺いました。

マヂカルラブリー 野田クリスタル

岡本 吉起


――お二人の自己紹介をお願いします

野田クリスタル:吉本興業でお笑いをしているマヂカルラブリーの野田クリスタルです。ゲームを作ったり、筋トレをしたり多趣味なことをしております。

岡本:40年くらい前からゲーム業界で働いていてコナミ(現株式会社コナミデジタルエンタテインメント)、株式会社カプコンを経て、株式会社ゲームリパブリックという会社を起ち上げたりしました。今はOKAKICHI SDN BHDという会社で主にスマートフォンゲーム(以下:スマホゲーム)を開発しています。マレーシアに住んでいるのですが「日本が元気になって欲しい」という想いもあり、YouTubeでいろいろな情報を発信しています。

――お二人は初対面ということですが、第一印象はいかがですか?

野田クリスタル:マレーシアに住んでいるとか、有名タイトルのスマホゲームを沢山リリースされていて、もうちびってますね。足が震えております。

岡本:野田クリスタルさんの動画を見過ぎて、何度もお会いしているような気持ちになっています。初期の動画がとても印象的でした。

野田クリスタル:ありがたいなぁ。あの企画、お譲りしますのでぜひ岡本さんのYouTubeでもやってみてください。

岡本:いや、大丈夫です(笑)。

野田クリスタル:断られてしまった…。いつかコラボで企画をやりましょう!!

――岡本さんは野田クリスタルさんのR-1で披露したネタ等はご覧になられていますか

岡本:YouTubeではなくて、R-1のネタから入ってますよ(笑)。初めてみた時は、シュールだなと思いました。何本かネタや動画を見ていくうちに「この人は真面目なストイックな子やな」と。そういう風に見えないように、ハチャメチャに見せてるけど、めちゃめちゃストイックで何もかも計算して動いている子なんだなというのをひしひしと感じながら動画を見ていました。

野田クリスタル:裏っかわをほじくり返されてるなぁ。芸人は意外に真面目な人が多いですからね。

――野田クリスタルさんはお笑いだけでなく、筋トレにも造詣が深いですよね

野田クリスタル:「クリスタルジム」というジムも作りました。「お笑い芸人が筋トレを教えるジムがあったらいいのでは?」、「これだけマッチョ芸人が溢れ返っている今の世の中だったら成立するんじゃないか?」と思って始めてみました。

―――『スーパー野田ゲーPARTY』に続き、第二弾である『スーパー野田ゲーWORLD』の開発プロジェクトがクラウドファンディングで進行していますね

岡本:任天堂っぽいゲームタイトルですね。

野田クリスタル:もう怒られないのが奇跡みたいなゲームタイトルでやらせてもらってます。僕も吉本興業もお金が何せ無いので、クラウドファンディングでお金を集めています。「貴方の描いたイラストやBGMをゲームに出来る」というリターン品で素材もお金も集めながら、という僕にメリットが有りすぎる形でなんとかスーパー野田ゲーWORLD』を成功させていきたいと考えています。

――ゲーム業界の重鎮である岡本さんにゲーム開発について、野田クリスタルさんと一緒にいろいろとお聞きしたいです

野田クリスタル:岡本さんはいろんなゲームを作られているとは思うのですが、思想として「今まで作ったことないゲーム」をどんどん作っていきたいという考えなのか「これまで作ってきた得意なゲーム」を突き詰めていっているのか、どういったお考えですか。僕はたまにそれで迷ってしまいます。

岡本:お金を出してくれている人が望んでいる所に着地しないといけないのですが、今回の野田クリスタルさんの場合は「自分が作りたい」に着地すれば良いと思います。

ただ、やり込んだ時に記録が残るか残らないかは大事で、例えば『つり革』のゲームだったら「何駅乗れた」みたいなのをずっと記録して「今、あなたは世界四位です」とか「あなたは何分乗れました」とかサーバーで記録を残していけるようにすると良さそうです。

野田クリスタル:『つり革』のゲームも新しい要素を追加するのですが、せっかくなのでランキングシステムも入れつつ、オンライン対戦要素なども取り入れて大人数で満員電車に出来ないかなと考えていたりしました。「画が面白い」とかでゲームを作ることが多くて。

岡本:面白いですね。人は結局コンピューターと遊ぶよりも人と遊んだほうが好きなんですよね。

野田クリスタル:僕が考える理想のゲームは、画が面白くて「何だこのゲーム」とちょっと思われながらも、プレイしているうちに、段々悔しくなってきて欲しいというか。

岡本:なるほど、奥が深いイメージですね。

野田クリスタル:プレイしている人に「なんだ、意外にやれること多いな」とか感じてほしい。最初はワーワー騒ぐけど、段々黙ってプレイする形になってほしい。『つり革』もみんな数秒で死んで「あーっ」てなるんですけど、段々夢中にプレイするようになってほしいです。

岡本:『つり革』は若干入りとしては難易度が高すぎるところがクセが強すぎる(笑)。難易度をいくつか準備するのとかどうですか?

野田クリスタル:そうですよね…。芸人的な発想になると「ツカミ」が欲しくなっちゃって、どのゲームでも難易度が高くなってしまうんですよ。「一瞬でゲームオーバーになってほしい」という希望がありすぎて、いざ一般の方にプレイしてもらうと「何だこのゲーム」って本気で思われてしまうというのが、難しいなって。

岡本:「ノーマル」と「スーパーハード」のように難易度をいくつか用意して「一人で遊ぶ時はノーマルで遊んでください!」、「友達と遊ぶ時はスーパーハードから遊んでください!」、「ぎゃー!」と叫びながら楽しんでください、という設計は面白そうです。

僕がゲーム開発を進める際に「客を見る」と言っているのですが「誰に向かってゲームを作っているのか」というのは意識しています。ユーザーのために作っているのか、自分のために作っているのか。自分のために作るのであれば「俺の作ったゲームを見ろ!」で良いし、ユーザー向けに作っているのであれば、「30代のサラリーマンに」なのか「20代」なのか「10代後半の大学生」なのかはっきりとユーザーを決めて、そこにだけ向けて「この子らやったらこれが喜ぶ」ということを前面に押し出して作ればいいと思います。

野田クリスタル:僕が誰に向けてるかな…と考えたときに、同じようなゲームをプレイしてきた人に向けてる気がしています。同世代もそうなのですが、昔のスーパーファミコンのシンプルでくだらないけど理不尽で…というゲームの想い出でゲームを作っている気がしていて。でもプレイするのは今の子供たちなんですよ。特にプラットフォームがニンテンドースイッチなので子供がすごい楽しみながら笑ってプレイしてくれているみたいで。意外に今の子供も昔のゲーム好きなんだなって気付きました。岡本さんは今の子供たちに向けてゲーム開発をしたりしますか。

岡本:スマホゲームがメインだったりするので、子供にはあんまり向けていないかもしれません。基本的には、大人向けですね。ゲームプレイをする時に「テクニックが求められると厳しいけどゲームはしたいんだよね」と思っている、ちょっと前までコンシューマーで遊んでたという半分引退気味なユーザーをターゲットにしています。

野田クリスタル:なるほど。継続してゲームをプレイしてもらえるコツを教えてほしいです。

岡本:新しいものを定期的に供給していくことですね。例えば、イベントもそうだし、新キャラが追加、新ステージが追加ということをちょっとずつやって、ちょっと難しくなって、何かのハイブリッドでちょっとずつ新しいものが増えていく。つまり刺激を与え続けるっていうことです。

野田クリスタル:ゲームをリリースしたけど、反応悪いなって思ったらどうしているのですか。完全に丸々テコ入れする形になるのでしょうか。

岡本:それもお金を出してる方、スポンサーによるのですが「これダメだ」って思ったら、基本は撤退。急ぎクローズ。何とかなるとみれば、何とかする。大型の改造をかける。ちなみにスマホゲーム開発で、一番大事にしているのは「DAU」という指標を大切にしています。

野田クリスタル:「DAU」とはなんでしょうか

岡本:「デイリーアクティブユーザー」の略で、一日に何人がプレイしているかという数字です。ゲームをダウンロードするきっかけっていくつかあって「広告」経由で入ってくるユーザーも数多くいます。そういったユーザーがゲームを遊んで「ふーん」と止めたりもします。明日もゲームをしてくれるかというと、してくれません。僕らはこれを「継続率が低い」と言います。広告を打ったらユーザーが入るのが分かっていて、入った人がずっとプレイしてくれることが分かっているならいくらでも改造のしようがあります。

例えば全く課金されないゲームでも、ユーザー数が多いのであればちょっとずつ難しくして、ちょっと課金をしてもらう、という選択をすることもできます。でも、広告を打って人が入っても落ちていく、プレイするのをやめちゃうという流れだと、いくらお金かけても何にもならないんです。

野田クリスタル:ゲームから抜けちゃう理由って何なんですか。

岡本:「不満があるから」です。「面白いからやる」のではなくて、人は「不満がある」から辞めていくんです。自分が期待するのと全然違うことを出されているから不満なんです。例えば「操作は簡単であれ」と思っているのに複雑だったとか。人間は良くしてくれることよりも不満の方に敏感なんです。

野田クリスタル:一番やるべきことは。「不満を消していく」ということですね。ゲーム性にこだわりすぎて「不満」を見逃してたらどんどんユーザーさんが消えていくってことですよね。

岡本:よく起きてしまうのはそれですね。

野田クリスタル:これは、染みました。今、聞いておいてよかったです。僕はそれをやりがちだと思います。

岡本:皆さん大体そうします。「良いところ伸ばそう」と。

野田クリスタル:ラッキーだったことがひとつあって、僕が芸人としてテレビに出たりする際に必ず『スーパー野田ゲーPARTY』をプレイすることになるだろうなって思っていたんです。テレビってすごいテンポで進んでいくから、あらすじとか「右方向の十字キー押したら右方向に進む」なんて書く必要あるのかなって思ったんですよ。限りなく邪魔なものを消していって、パッと分かるものにしようっていうことにしてみた結果、一般の人にも分かりやすいUI(ユーザーインターフェース)になってみたいです。

岡本:スマホゲームって、遊び方の練習、いわゆるチュートリアルってよくあるじゃないですか。僕が手掛けたスマホゲームってチュートリアルを入れてなかったりするんですよね。

野田クリスタル:何故、作らなかったんですか。チュートリアルで抜けてしまうかもしれないからですか?

岡本:そうです。ユーザーさんは「ゲームをやらせてくれ」って言ってるのに、チュートリアルを「やらされている」と感じると、離脱してしまいます。

野田クリスタル:めっちゃ分かります。

岡本:直感的にプレイできればいいんです。複雑なルールがあっても良いんですけど、プレイしている内に分かるようになる形が理想です。

野田クリスタル:仮に僕がスマホゲームを開発するとしたら、多額の広告を出して、まずちょっと覗いてみようかなって入ってきたユーザーが「チュートリアルこんなに長かったら抜けんじゃないかな…」と不安がよぎってしまう気がします。「チュートリアルが長い」、「操作性が悪い」、「ゲーム性が難しい」の他にユーザーから不満や文句が出るとしたら他に何かありますか。

岡本:「報酬が少ない」とかですね。あとはバグが多いとかもですが、ちょっとしたことでユーザーさんは「不満」に思います。「読み込み時間が長い」とか「ゲームのボリュームが小さい」とか。「俺がユーザーだったら」という風に常に考えて作れば大丈夫です。長すぎるのもダメ、難易度が低すぎるのもダメ、難易度が高すぎるのも当然ダメ。ゲームの発売価格が高いのもダメ。売った値段が途中から安くなるのもダメ。だってさっきまで高く買ってたのに。

野田クリスタル:うわー、染みる……。っていうか助かるなぁ。自分の中でうやむやになってた部分がカチっとハマった気がします。次の『スーパー野田ゲーWORLD』ではその辺りを重点的に作りたいですね。文句、不満が無いゲームを目指したい。

――そもそもチュートリアルはなんで出来たんですかね

岡本:ゲームセンターではゲーム台の横に遊び方が書いてあって、家庭用ゲームなら説明書が入っていました。実はチュートリアルは昔からあったんです。説明書が挟めなくなったのでチュートリアルを入れるようになったんですよ。

野田クリスタル:チュートリアルに岡本さん自身メリットを感じる部分はありますか?デメリットのみですか。

岡本:「入れないのがベスト」とスポンサーには言い続けてたのですが、入れざるを得ない状況になったスマホゲームもありますね。

野田クリスタル:お笑いって「つまらなくなるから入れたくない」フレーズがあったりします。でも、テレビっていろんな人が見てて「お笑いが分からない人とかも見てるから入れてください」と要望がディレクターからきたりします。納得いかない形でネタを披露することがあって、それに近いような気がしますね。初手がチュートリアルでだるくなるからグダグダしてしまうのであって、初手が楽しくありつつチュートリアルにもなっているという着地点が見つかったら良いんですかね。

岡本:『つり革』だったら、「一瞬つり革持てます」って後で言う(表示する)とかですかね。たまたま何かをした時に「君のは操作は合ってたよ」って言ってあげれば。

野田クリスタル:そっかぁ。特に、複雑なゲームはそうですよね。その時、必要になったら分かれば良いんですもんね。めちゃめちゃユーザー目線ですね。本当に。

岡本:そうやって作るしかないんです。野田さん勘が良いですね!

――iPhoneも説明書がないですよね。説明がなくても楽しめる、というのは本質と言えば本質に近いのかなと。そのあたりはどう思いますか。

岡本:iPhoneもゲームもエクセルも一緒だと思っていて、iPhoneの機能って100%使い切ってる人ってそんなに多くないですよね。エクセルもそうです。本人が使えるレベルまで使ったらそれでいいんです。でも、機能や関数に気付いた人が「これは便利!」となって、友達に「これ便利よ」と口コミで広がっていく。説明もなく楽しめる部分までやって、必要なら気付いていってもらえればいいと思います。「レバーをもっと長く引いたらどうなるんだ」、「連続でタップしたらどうなるんだ」ということを全部入れておいたら良いんですよ。「こういう操作したら自爆するのか。じゃあこれはやらないでおこう」とか、「これはこの時に使える!」というようにゲーム性が奥深くなっていく。

野田クリスタル:なるほど、説明しないことでそれもゲーム性になっていくっていうことですね。全部いきなり説明しちゃったらそりゃ離れるし、作り手が楽してるだけですもんね。

岡本:正解です。素晴らしい。

野田クリスタル:「単純なゲーム」を売りにしていくだけで良いのかな…ってずっと思ってたんですけど、それだけだと膨らまないなぁって思いがあって。ゲーム性が少なければ初見で分かりやすいけどそれ以上が無くて。

「スーパー野田ゲーPARTY」で思ったのは、YouTube等で実況してもらってることはあるのですが、二回、三回と実況を続けてくれる人が少ないなぁって。それはやっぱり「要素の無さ」が致命的だなと思っていて、でも要素を入れれば入れるほど複雑になって「野田ゲー」じゃなくなるっていう不安がありました。でも、今のが答えだなと思いましたね。こっちはひたすら要素を用意しておいていいんだなって。

――現代はビジュアルやテクノロジーでカバーできる部分がかなり増えたと感じます。一昔前はゲーム性のみで勝負せざるをいけない状況だったのでは?

岡本:今のゲームを否定する気は毛頭ないです。でも、ハードの機能の上限値は低かったのは事実です。その中でユーザーに夢を見てもらうとか面白く遊んでいただくいうのを絞りだす努力は大変でした。その時の状況に近いことを野田クリスタルさんは今やっていると思っています。そんなに時間もお金もかけられない、グラフィックにも音楽にもこだわれない中で一定以上の面白さをキープしようというのは僕らのやっていたこととほぼ同じだと思います。そんな中で面白いものを作るから、大変だけど楽しいんですよ。

野田クリスタル:昔のゲーム開発の状況などを聞いていると「考えられないな…」と感じますね。メモリが少ない中でアイデア振り絞って。しかも発売後はもうアップデートすることもできない。条件が恐ろしすぎるなって。よくあの中でゲーム作ってたなって思いますね。

岡本:新しいハードが出るたびに「うわぁ…。神がかって良いハードになった!」ってみんなで喜んだりしていました。

野田クリスタル:ゲームの容量が大きくなることは、制作者にとって嬉しいことだったのですか?

岡本:当時は嬉しかったですね。小学生のお小遣いがもうちょっと増えたらあれ買い物ができるのに、おかあちゃんもっとお小遣い増やしてくれって感じですね。

野田クリスタル:逆に、お金が無かった時代も良かったなって思うこともありますよね。

岡本:お金が無い時って、買えないから自分で作ったりしたじゃないですか。子供たちで集まってアイデアひねって。ゲーム開発も似たところはあって、それはそれで楽しかったですね。

――今は指先ひとつで欲しい情報やコンテンツにアプローチできます。その中で興奮するポイントをどうやって持ってくるかってすごい重要なことのような気がします

野田クリスタル:スマホゲームは特にそうですよね。デバイスの特性上、操作性がすごく絞られている。より操作性がユーザーの感覚に委ねている気がします。十字キーひとつとっても、昔だったら固定された場所にキーがあって、そこに上手に指を合わせなければいけなかったのが、今はどこの画面でも十字キーになって。絶妙なスピードで操作がゆっくりになったりとか、相当操作性が練られてきたのがスマホだなぁって。

岡本:操作が難しいだろうから適当に操作してても「操作した」ってことにしといてあげよう、という部分はありますよね。正しい操作はこれだけど、入力が近かったからそれでいいよ、みたいな。

野田クリスタル:この世に沢山の人間が居ていろんな人がスマホを持っているから、共通した操作性の良さってないですよね。コントローラーでプレイするゲームは「コンピューターが正しいからお前が操作を直せ」だったと思うのですが、スマホゲームは逆ですよね。

岡本:「俺が当ててやる」ってコンピューターが思ってる。

野田クリスタル:面白いですね!

岡本:作ってる側はしんどいですけどね(笑)。

――制約がある中でゲーム開発をする上で考える思考法とか、この辺意識してますみたいなものはありますか?

野田クリスタル:個人で開発していた時に、他人にプレイしてもらう時に「ゲーム性として直したほうが良いんだろうな」と思ってた部分を面倒臭がって放置していたら盛り上がることが多くて。今回のクラウドファンディングも「こういうイラストを送ってください」と言う制限が一個もない中で2,000人以上の人が参加してくださっているので、当然やばいものも沢山あるわけで。でもそれをよしとしていくというか。BGMで歌入りの演歌っぽい曲を送ってきた人が居て「これどこに使うんだよ!」と思いながらも「もういっか…」と思ってタイトル画面の曲にしたら意外と評判が良かったりとか。もういろんな事をよしとしてますね。

ゲーム性として「背景と同化して見づらい」とか「音が大きすぎて集中できない」とかリアルな部分の不満だけ解消していって、それ以外で成立するのであれば突き進んでいます。お笑いで言う「モノボケ」みたいなもので、モノを渡されたら絶対にボケなきゃいけませんみたいなことをずっとやっています。けど、それが楽しいです。

――岡本さんもご自身のYouTubeチャンネルで「使えるものはとにかく使いまくる」というニュアンスの事をよく言われています

岡本:わざわざ無駄にする必要はない、使えるものなら使った方が良い。ただ、音楽に関してはものすごく大事にしています。ゲームが売れるか売れないか、映画が売れるか売れないかを決めるのはシナリオでも監督でも俳優でもない。「音」です。質が云々もあるのですが、鳴らすタイミングとかボリュームとか、相当シビアに考えた方が良いと思います。

『ゼルダの伝説』で爆弾を仕掛けて、ドーンってなって煙が出て、正解の時ピロリロリンって鳴るじゃないですか。あれは目視して正解だと思った瞬間に音が鳴るようになっているんですよ。あれがずれたら、正解かどうかわからない。煙が出ている段階で鳴られても嫌だし、もう入口が見えてから「正解」って思ってから鳴られても嫌なんですよ、人間は。なので1フレーム(1/60秒)で調整している、と宮本 茂さんに教わりました。

野田クリスタル:なるほど…。音ですね。他にはないですか?

岡本:ユーザーが上手にプレイできた時に褒めてあげてください。たぶん『野田ゲー』ではその考え方が落ちてると思うのですが、めっちゃ褒めてあげてください。

――個人やクラウドファンディングを活用したゲーム開発は今後も増えていくのか、それとも開発費は高騰して中国の会社やトリプルAの会社しか作れなくなってしまうのか、お二人はどう捉えていますか

野田クリスタル:僕が個人でゲームを出した理由って、自分の強みを生かしたかっただけなんですよね。「クリスタルジム」もパーソナルジムを作りたいと思った時に吉本興業が契約しているアスリートがいることを知っていたので、他のパーソナルジムと差別化できるのではないかと思って社長に直談判しに行ったりして。『スーパー野田ゲーPARTY』もニンテンドースイッチで自分が作ったゲームを出したいという夢の話でもあるのですが、僕自身がタレント活動をしているので広めやすいですし、完成した時にテレビでそのゲームをやることも想像出来ていて。クラウドファンディングでイラストやBGMを送ってくれた人たちはゲームを買ってくれると思うし、そのゲームの事を友達とかにも教えるだろうと思ったんです。一般のゲーム開発者の人がどうやってクラウドファンディングを盛り上げていくんだろう…と思ったりすることはあります。でも今回のような形でゲーム開発をしたら、インディーゲームも盛り上げられるんじゃないかなと勝手に思っています。

岡本:僕は当然値上がりしていくと考えています。そして、二極化するとは思っています。二極化といってもリッチにコンテンツを作り込まれたものが殆どで、安いお金で作る人は減っていく。でも、減っていくのですがそういったマーケットも残る。ここはタイミングとアイデア勝負だと思っています。なので、野田クリスタルさんには頑張って欲しいです。野田クリスタルさんには、「アホな事をやっても認められる」という武器がありますよね。

野田クリスタル:一応、そこが強みかなとは思っていますね。フフ(笑)。

岡本:一般的なゲームクリエイターはそこがちょっと攻めにくい。違う角度から攻められるというのが長所だと思いますので、そのまま押し切って欲しいです。

スマホゲー開発費は、昔は1,000万円から1,500万円と言われていたのが、今は100億円にもなっているんです。でも、スマートフォンのような次の新しいデバイスが出てくるはず。その時にはまた開発費が安くなって「でも、これはゲームじゃないよね」と言われながらスタートを切る。その時、一番早くに野田クリスタルさんが入ってゲームを開発できれば、多分上場企業の社長になれますね。

ゲームセンターが流行る時はそこに行って、コンシューマーのマーケットと入れ替わるタイミングにはコンシューマーに行ったし、コンシューマーから携帯・スマートフォンになる時にはちゃんと移動して…というように、ビジネスとして成立するかを常にかぎ続けているんです。マーケットが来ないところに自分が移動するのは損です。自分の主戦場をどこに置くか。次のマーケットが一番大きくなるのはどこか、というのを判断する。

野田クリスタル:確かに「これをゲームと呼んでいいのか」と思うようなものが来てもおかしくないですよね。

岡本:携帯電話のゲームは、最初は5のキーを連打するだけでした。でも、あの時に「間違いない。次はここだ!」と思って移動しました。

野田クリスタル:流行るかどうかをどう判断しているのでしょうか

岡本:自分がユーザーになって、ユーザーさんがみんなこっちに来るはずって思えれば移動します。

新しいデバイスや技術が出てきた時に「自分だったらこんなゲームを作ることができる」というのをイメージする。それをそのままひっくり返して「自分がユーザーだったらこれ遊ぶ?」と自分に聞く。「今は5のキー連打でもこういうゲームが作れたら絶対面白い遊ぶ」と思えたら「じゃあこっち側に行きましょう」と判断しますね。

野田クリスタル:「ゲーム機」と認識してないものにゲームコンテンツが乗っかるかもしれませんね。

岡本:もちろんです。携帯電話やスマートフォンもそうでしたからね。

野田クリスタルさんが筋トレのアプリもしくはゲームを開発したら、めちゃくちゃ売れる気がします。負荷なしで運動してください、でも良いんです。やり続けてもらう事で人間の体がこんなに変わっていきますというアプリを出せれば、それと連動してYouTubeチャンネルの動画の再生回数も上がると思います。「こうやって筋トレやりましょう」という動画を作ったりしたらアプリもダウンロードしてもらえる。普通は一人の人が動画1回見たら終わりですが、360回その人は1年間に見てくれます。そして、続けてくれた人が「野田クリスタルさんの筋トレでめちゃめちゃムキムキになった!」とユーチューバーとして出てきて、また再生回数が上がる。「ゲーム」×「ストイック」×「筋トレ」が野田クリスタルさんの特徴だと思いますので、それを全部前に出せば、きっと売れると思います。

野田クリスタル:自分が筋トレすることでゲーム内のキャラが強くなっていって、そいつが戦っていくものがあればめっちゃ楽しいだろうな…と企画したことはありました。今って異世界転生系のアニメやマンガが流行っていて、みんな架空の自分を作りたいんだなって思ったんですよ。そこでただロールプレイするだけでなく、現実の自分の頑張りでゲーム内で成長していったら夢中になってトレーニングするんじゃないかと思って。

岡本:「インチキをしない」というストイックな人が筋トレをしている人は多い印象です。ダウンタウンの松本人志さんが昔テレビで言ってたのですが、『バイオハザード』をプレイしていてゲームの中で動かしているキャラはめちゃくちゃムキムキで現実の自分は弱弱しい身体だった。「こんなんじゃ、家族守れねぇ」と思って筋トレを始めたらしいんですね。本当ならゲームってすごい力持ってるなって思うんです。嘘の記録や報告をしても良いんだけど「君にとって得はないよね」、「正直にやればいい体になるよ」って。もちろん食事の制限とか指導もしてくれたら良いですし。

野田クリスタル:いいですね。マッチョアプリ。これはひとつ新しい目標ができました。

――次は「クリスタルジム」でお二人の対談をしてみたいです

野田クリスタル:今回、岡本さんとお話ができたことで『スーパー野田ゲーWORLD』の内容や方向性がかなり固まりました。本当にありがとうございます!

岡本:こちらこそ、そう言って頂けて光栄です。新作、楽しみにしています。


『スーパー野田ゲーWORLD』

世界の岡本吉起Ch