<レスリング>【2021年全日本学生選手権・特集】「全日本王者対決」と「インターハイ王者対決」を制して復活優勝…61kg級・榊流斗(山梨学院大)

 

首の負傷から復活し、学生王者に輝いた榊流斗(山梨学院大)=撮影・矢吹建夫

 2019年に1年生で61kg級の大学王者、そして全日本王者に輝いた榊流斗(山梨学院大)が、インターハイ王者同士の対戦と全日本王者同士の対戦を制し、復活優勝を遂げた。大会出場は2020年2月のアジア選手権(インド)以来、約1年8ヶ月ぶり。「シンプルにうれしいです。その一言です」と喜びの言葉が弾んだ。

 榊は、2017年世界カデット選手権優勝、インターハイ2連覇などすばらしい成績を残して山梨学院大へ進んだ。1年生で大学王者となり、全日本選手権も制覇。2ヶ月後のアジア選手権では銅メダルを獲得するなど順調に実力を伸ばしたが、首の故障(頸椎ヘルニア)が重なり、昨年11月の全日本大学選手権は欠場。今年4月、手術に踏み切った。

 8月にはマットに戻ったが、故障箇所が首だけに「心配はありました。周囲とも相談し、少しずつやっていった、という感じです」という手探りのカムバック。しかし、それから約2ヶ月で学生王者に返り咲いたのは、地力の強さか。

大学では、毎日が“試合と同じ真剣勝負”

 コロナ禍によって2020年は多くの選手が実戦から離れた。榊の場合は、そこにプラスして試合から遠ざかり、約1年8ヶ月ぶりの試合出場。試合勘の鈍化が懸念される状況だったが、「ふだんの練習から、高橋(侑希)コーチ木下(貴輪)先輩といった強い選手の胸を借りてやっていましたから、影響はなかったです」とのこと。

決勝でインターハイ王者の“同僚”森川海舟(拓大)に競り勝つ=撮影・矢吹建夫

 東京オリンピックで金メダルを取った日本代表の何人かがそうだったように、毎日の練習が“試合と同じ真剣勝負”ならば、試合間隔が空くことは大きく影響しないのだろう。

 今大会では、4試合目となる準々決勝で昨年12月の全日本王者、小川航大(日体大)とのヤマ場を迎えた。2019年全日本選手権では3-1で勝っている相手だが、榊が戦列を離れていた昨年秋、大学王者~全日本王者と榊と同じコースを歩んだ選手。

 自らが全日本王者の“先輩”になるものの、「チャレンジャーの気持ちでぶつかった」という前・現の全日本王者の対決は、1点を争う激戦となり、榊が7-5で競り勝った。「絶対に接戦になると思っていました。最後は気持ちの勝負」という意気込みが実った勝利だった。

世界銅メダリストという新たな敵が出現!

 決勝の相手の森川海舟(拓大)は、2018年のインターハイで1階級違いの王者同士(森川が60kg級、榊が65kg級)。ともにキッズ時代から全国に名をとどろかせ、旧知の間柄だが、階級が違ったこともあり、「闘ったことはない」と言う。ただ、強い選手ということは知っていたし、合宿で一緒だったこともある。「やはり、びびってしまいましたね。積極的になれなかった」とのこと。

2020年2月、19歳でアジア選手権(インド)に出場し銅メダルを獲得した榊

 決め手となったのは、開始早々に取った2点。終了間際には場外逃避による1点を取られ、それに話が及ぶと、反省ともとれる苦笑いを浮かべたが、今回は勝つことに徹したので、これも戦術のひとつ。強豪を連破して優勝という形で復帰戦を飾れたことが大きい。

 ブランクの間、JOCエリートアカデミー~大学での1年後輩となる佐藤匡記(74kg級)が全日本選抜選手権とプレーオフに勝って世界選手権(ノルウェー)出場を果たした。「大津先輩(拓馬=92kg級)もノルウェーに行きました。焦りというより、自分も頑張らなければならない、という気持ちを強くしました」と言う。

 「この優勝で、また世界へ飛躍が始まる?」との問いに、「長谷川(敏裕)さんが世界選手権で銅メダルを取りました。国内で頑張らないとなりません」と、まずは全日本選手権。2年前は57kg級に出ていた強豪を迎え、再度、全日本選手権に挑み、世界への再挑戦はそれを乗り越えてから。「勝ちます」と、力強く言い切った。

 

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