ドングリに加え「松の実戦闘」に追いやられる北朝鮮の小学生たち

デイリーNKジャパンは、北朝鮮・黄海南道(ファンヘナムド)の子どもたちが、学校の授業そっちのけで「ドングリ戦闘」に追いやられている実態について伝えたが、北部の両江道(リャンガンド)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)でも事情は似たりよったりのようだ。

その状況を、両江道のデイリーNK内部情報筋が詳しく伝えている。

北朝鮮政府は、ゴヨウマツやカシノキが多い両江道と咸鏡北道の複数の地方に対して、松の実とドングリ集めを行えとして、次のような指示を下した。

「農村の秋の収穫も重要で、山に黄金のようになっている実をすべて集めることも大切だ、密輸や輸出を抑制し、人民生活に必要な食料品生産基地に送る自主原料を、機会を逃さず確保すべきだ」

ノルマも事細かく決められている。小学校1年生以上の児童・生徒は、1人あたり松の実6キロ、ドングリ10キロ以上、大学生の場合は松の実20キロ、ドングリ30キロだ。これに伴い、各種学校では授業を午前だけ行い、午後には山に入って松の実やドングリを行わされている。

通常、この手のノルマは1世帯あたりで決められるが、今回は1人あたりの数字となり、実質的にノルマが増やされた形だ。人々の間からは「今のように苦しい時期に、要求は高くなりつつある」と非難混じりの声が上がっている。

同様の指示は、咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムン)や平安南道(ピョンアンナムド)平城(ピョンソン)など、森林の少ない地域でも下され、住民の不評を買っている。

ドングリはともかく、松の実は漢方薬剤として取り引きされ、中国にも輸出されている。喉から手が出るほど外貨の枯渇に苦しんでいる北朝鮮としては、制裁に抵触せず堂々と輸出できる数少ないものだが、そのために北朝鮮の人々は貴重な労働力と学習の機会を奪われているのだ。

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