南田裕介さんらが奈良の鉄道や観光の魅力語る 「吉野連絡」のわびさびとは……?【レポート】

トークイベントで奈良の魅力を存分に語った田中めぐみさん(左)と南田裕介さん(右)

「近鉄特急には吉野連絡という概念があるんです。この概念を説明しますとね、京都から橿原神宮前行きの特急に乗って旅するんですけど、吉野連絡の特急に乗っていくと、橿原神宮前で吉野行きの特急に接続している……」

2021年9月26日、新橋の「奈良まほろば館」にて奈良の鉄道の魅力を語り尽くすスペシャルトークイベントが行われました。会場にいたのは講師役の南田裕介さん、MCの田中めぐみさん、補佐役の尼崎昇さんの出演者三名と関係者のみ。観客はいません。というのも、南田さんらが写真や路線図などを提示しながら熱烈に奈良トークを繰り広げる様子を、多数の視聴者がオンライン上で見守るという生配信イベントだったからです。

ホリプロマネージャーの南田さんは「鉄道BIG4」として様々なテレビ番組等にも出演される方ですが、実は生粋の奈良育ち。田中さん、尼崎さんも同様に奈良県とは縁が深く、奈良の鉄道に関しては「知り尽くしている」と言っても過言ではありません。そんな三人が繰り広げる鉄道トークが面白くないわけがない。実際、本番では2時間という大ボリュームでありながら、むしろ時間が足りないと思えるような熱量で、様々な切り口から奈良の鉄道について語られる満足度の高いイベントとなりました。

オンラインで奈良の旅、難読駅名クイズ……

トークイベントは奈良の名物なども紹介しつつ展開。南田さんが手にしているのは「三輪そうめん」

2時間にわたって行われたトークイベントは、5つのトークテーマに沿って進行していく形態をとりました。最初のテーマ「まほろばトレイン 出発進行!」では、まずは奈良県の鉄道地図を見ながら各路線の紹介。かつて信貴電と呼ばれていた近鉄生駒線、第三軌条方式の近鉄けいはんな線、そしてJR関西本線、桜井線、和歌山線と続きます。

面白いのは地元トークがたびたび挟まること。たとえば五条駅といえば未成線「五新線」を思い浮かべる方も多いことと思います。イベントでもその計画の跡や、仮に実現したらどうなっていたかという可能性について語られたのですが、一方で取り上げられたのが名物の「柿の葉寿司」。ご当地のアイテムや食事については「奈良まほろば館」で購入できるものもありますから、鉄道の魅力を語りつつそれと絡めた販促も行うことで「今、奈良に行けない人」がより身近なところで奈良を感じる術をアピールしていくわけです。

コロナ禍におけるバーチャル旅の様相をさらに色濃くしたのが次のテーマ「青の交響曲(シンフォニー)で行こう!飛鳥から南北朝へタイムトリップ」。「青の交響曲」は大阪阿部野橋から吉野を結ぶ特急列車で、イベントでは近鉄提供の動画等も交えながら、まるで実際の列車に乗っているように各地を旅します。

近鉄南大阪線・吉野線を走る近鉄の人気特急「青の交響曲(シンフォニー)」イメージ(画像提供:近畿日本鉄道株式会社)

南田さんらの役割はまるでツアーガイド。古都・奈良の寺社や子孫繁栄のパワースポット、吉野の千本桜などを写真を使いながら語り尽くしていきます。「坂が多いので駅前でレンタサイクルを借りて下さいね(電動がオススメ)」といったマル得情報から、「ここで長渕剛さんの結婚式が行われたんです」といった芸能界らしい情報が飛び交う様子はまさしくカオス。

続く「その名も万葉まほろば線!難読駅ぶらり山の辺途中下車」ではJR桜井線(万葉まほろば線)の難読駅を一つ一つ紹介していきました。これは鉄道ファン、特に大学の鉄道研究会などに入るタイプの人にとってはかなり面白いコンテンツだったのではないでしょうか。京終、帯解、巻向、畝傍……と普通じゃ読めない難読駅の読みを語りながら、その地や駅にまつわる情報、たとえば櫟本駅の継ぎ足されたホームや三輪駅とそうめんの話などを交えていきました。

鉄道ファンが特に楽しめたであろうテーマが「お召列車もやってくる!3大カオスステーション」です。南田さんが「鉄道ファンが涙を流して喜ぶであろう駅」をチョイスして紹介するもので、今回は「大和西大寺」「大和八木」「橿原神宮前」の三駅をピックアップ。

大和西大寺駅の構内配線図を見ながら語る南田さん

詳しい方には釈迦に説法かもしれませんが、大和西大寺は平面交差、大和八木は立体交差、そして橿原神宮前駅は標準軌と狭軌が一つの駅に共存するという特徴があります。南田さんらは手書きの構内配線図を示しながら、ち密に計算された列車さばきや「吉野連絡」という概念のわびさびについて思う存分語っていきました。

最後のトークテーマ「柿食えばSLが鳴く!?大和路線の興亡…そしてリニアの夢」では、なんと「ヨンサントオ」の時刻表が登場。「ヨンサントオ」とはJRの前身である国鉄時代、1968(昭和43)年10月1日に行われたダイヤ改正のことで、昭和「43」から「ヨンサン」、10月から「トオ」を取って命名されています。

実物の時刻表を映しながらかつての関西本線の姿を語る

時刻表を肴に語られるのはJR関西本線(大和路線)。時刻表を見ながら当時の関西本線の姿やSLが走っていた頃の思い出など、昔懐かしい話が次から次へと展開されていき、各駅の小ネタにも言及。そして最後はいずれ奈良にやってくるであろう超電導リニアの未来へとつながっていきました。

「奈良まほろば館」で鉄道イベントが先陣を切る

かくしてトークイベントは終わりを告げたわけですが、ここでちょっとした裏話を。イベント会場となった「奈良まほろば館」は、2021年8月10日に新橋へ移転リニューアルオープンしたばかり。本来ならオープニングイベントをやる予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり断念。結果的に、オンラインでもできる「鉄道イベント」が先陣を切ることとなりました。

講演会などは別として、奈良まほろば館で「鉄道」をテーマとしたイベントを行うのは今回が初めて。同館では今後も月一でイベントを行っていく予定で、今のところは「鉄道」テーマのイベントは計画されていないようですが、他のテーマと絡めて鉄道の話が出てくる可能性はあるかもしれません。イベント情報などは奈良まほろば館の公式ホームページで公表されておりますので、是非そちらもご確認ください。

余談ですが、奈良の鉄道の話題と言えば、つい先日近鉄から「あをによし」の発表があったばかり。既存の特急車両(12200系)をリニューアルし、2021年4月29日から大阪~奈良~京都を結ぶ観光特急として走らせるのだとか。車内にはゆったりくつろげるツインシートとサロンシート、さらに軽食や飲料等の販売を行うカウンターなども設置し、上質な旅のワンシーンを飾る観光特急を目指すそうです。このトークイベントとは関係ない話ですが、そうした新たな列車の情報なども含め、今後の奈良と鉄道のかかわりから目が離せなくなりそうです。

記事:一橋正浩

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