CS会場が“鬼門”になる可能性が!! 9勝でブレークの楽天・瀧中が抱える大きな課題

楽天・瀧中瞭太【写真:荒川祐史】

楽天2年目の瀧中は今季先発ローテの一角として9勝をマーク

ビッグネームが揃う楽天先発陣の中にあって、ドラフト6位入団の男が存在感を高めている。楽天の瀧中瞭太投手が10月6日のソフトバンク戦で6回無失点の好投を見せ、今季9勝目をマーク。プロ2年目で大きく飛躍を果たしている。今季は開幕から先発の一角に加わり、コンスタントに登板を重ねていたが、1つの球場の相性の悪さが実情以上に防御率を上昇させていた面があることをご存じだろうか。

26歳の瀧中は滋賀・高島高校、龍谷大学、ホンダ鈴鹿を経て2019年ドラフト6位で楽天に入団した。プロ1年目の昨季は2軍で9試合に登板して防御率1.72をマークして9月下旬に1軍昇格。10月11日の西武戦では8回2/3を2失点の好投でプロ初勝利をマークした。白星は2勝にとどまったものの、8試合で防御率3.40と一定の安定感を発揮した。

2年目の今季は開幕ローテーション入りを果たしたが、今季初登板となった4月1日のロッテ戦では1回2/3を10失点と打ち込まれた。しかし、続く4月8日の西武戦では7回無失点でシーズン初勝利をマーク。そこから7試合続けて5回以上を投げ、2失点以下と安定した投球を披露し、初登板を終えた時点では54.00だった防御率も6月10日の時点で4.02まで良化していた。

ところが、再びZOZOマリンスタジアムでの登板となった7月4日のロッテ戦で2回1/3を6失点とまたしても崩れてしまい、防御率も4.91に。以降の登板では立ち直りを見せたのも前回同様で、9月には4試合で月間防御率0.74という数字を記録した。10月15日終了時点での成績は19試合登板で9勝5敗、防御率3.32となっている。

ZOZOマリンでは2試合計4回を投げて防御率36.00と苦戦

今季の楽天は則本昂大投手、岸孝之投手、涌井秀章投手といったタイトルホルダーの存在に加えて、田中将大投手が復帰し、早川隆久投手も新加入。実績十分の投手にゴールデンルーキーを加え、強力な先発陣が形成されると目されていた。しかし、昨季の最多勝投手でもある涌井が防御率5点台と不振に陥った。田中将は好投しながら勝ちがつかない試合も多く、則本昂、岸、早川はいずれも防御率3点台と一定の投球を見せているが、シーズン前の期待通りの展開になっているとは言い難い面がある。そんな中で、瀧中が不振の涌井の穴を埋めるだけでなく、期待値の高かった投手たちを上回るほどの内容を見せている。

瀧中は本拠地の楽天生命パークでは9試合に先発し、防御率2.36。ビジターでもZOZOマリンスタジアムを除くすべての球場で防御率3点台以下と、ほぼ球場を問わずに安定した投球を続けている。だが、ZOZOマリンでは登板した2試合で4イニングしか投げられず、自責点16で防御率36.00。他球場ではいずれも好投していることを思えば、いささか特異な傾向といえる。

ZOZOマリンでの登板を除く試合での防御率は1.92と抜群の安定感を誇っている。これだけの投球を見せながら防御率が3.32にとどまっているのは、言うまでもなくZOZOマリンでの投球結果が原因となる。こうした相性を勘案してか、7月4日の試合を最後にZOZOマリンでの登板は一度もない状態が続いている。

次に、瀧中が今季登板したZOZOマリンでの2試合における投球内容を見て、この球場を苦手としている理由について考えていきたい。4月1日の試合で瀧中はボールゾーンに32球を投じたが、そのうちロッテの打者が手を出してきたのは3球のみ。中村奨吾内野手に対してはフルカウントから1打席目はフォーク、2打席目はカーブを投じ、いずれも四球を選ばれている。喫した被安打7本のうち、本塁打2本を含む4本がストライクゾーンのストレート。残る3本のうち2本はカットボール、1本はチェンジアップと、総じて速いボールに狙いを絞られていたことがうかがえる。ストライクとボールがはっきりしていたこともあり、ストライクゾーンに置きに来た速球系の球を捉えられた、と総括できそうだ。

楽天生命パークではロッテを相手に5回2失点とまずまずの投球

強い雨の中で行われた7月4日の試合では、ボールゾーンに33球を投じてボールが23球、相手が手を出してきたのが7球と、前回に比べればやや改善の兆しが見られた。しかし、初回には先頭打者から3人続けてボールコースの球を安打にされ、あっという間に2点を失った。速球、チェンジアップ、カットボール、シンカー、フォーク、カーブを使い分けていた4月1日とは異なり、この日は「速球、フォーク、スライダー」の3球種で投球を組み立てていた。ただし、被安打の内訳を見ると、4本がストレート、2本がフォーク、そして藤原恭大外野手に喫した本塁打がスライダーと3球種ともまんべんなく打たれ、配球の変化は奏功しなかったといえる。

ZOZOマリンスタジアムは強風や雨の影響を受けやすく、投手にとってはしばしば難しい投球を強いられる球場でもある。投げ合った小島和哉投手も5回4失点で、雨に苦しんだ7月4日の試合はその典型的な例でもあるが、多彩な球種を生かし、打たせて取る投球術が持ち味の瀧中にとっては、ストライクとボールがはっきりしやすくなってしまうZOZOマリンはとりわけ相性が悪いと考えられる。

逆に言えば、それ以外の球場において抜群の投球内容を見せていることは、そうした瀧中のピッチングスタイルや球の質は、パ・リーグの打者相手にも十分に通用していることの証左でもある。ロッテに対しても、本拠地で行われた4月15日の試合では5回2失点とまずまずの投球を見せている。楽天はZOZOマリンでの全日程を既に終了しており、次に瀧中が投げる可能性があるとすれば「パーソル CS パ」での登板ということになる。石井監督はそこを回避するのか、それとも瀧中の実力を信じて送り出すのか注視したい。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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