『モンスターハントレス』DVD発売中税抜価格：￥4,800発売：ニューセレクト株式会社

いつもの低予算早撮り便乗映画

あの大人気ゲームの実写化にして、内容のオリジナル色が強い一方で無味無臭なストーリー設定が賛否両論を巻き起こしつつも、おおむね「ともかく普通に観られる」くらいの評価には落ち着いたミラ・ジョヴォヴィッチ主演作『映画モンスターハンター』（2020年）。顔出し程度の出番しかないアイルーなどには多少心残りもあるものの、序盤のネルスキュラの薄気味悪さや、画面内をめいっぱい暴れ回るディアブロス、リオレウスの迫力は、実際なかなかのものだ。

そんな『モンスターハンター』の話題性に便乗し、映画スタジオのアサイラム社が低予算早撮りで仕上げた作品がこちら、『モンスターハントレス』。かなり際どいラインを攻めている邦題だが、原題は『MONSTER HUNTERS』と、より危ない。が、「異世界に迷い込んだ軍人がモンスターをハントする」内容の本家モンハンに対し、こちらのパチモンハンは「宇宙から凶暴なエイリアンがやってきたので退治する」という紋切り型のSF物。その脚本に本家の面影は見当たらない。

とにもかくにも今回は、このアサイラム社が遺した英雄の証『モンスターハントレス』を紹介していこう。

『モンスターハントレス』Ⓒ2020, The Global Asylum LLC. All Rights Reserved.

そんな有様でよくも地球を侵略しに来たものだな！へっぽこエイリアンから地球を守れ!!『世界侵略：ワシントン決戦』

“異星人の目から見ても知的生命体にはほど遠いモンスターども”と死力を尽くして戦う

カリフォルニアの砂漠地帯に、UFOが墜落。米軍の極秘ユニットADU《対異星人防衛部隊》の女性兵士フェアチャイルドたちは、現地に飛ぶ。彼女たちがそこで遭遇したのは、巨大な地球外モンスターだった。UFOは、怪物を輸送する「刑務所船」だったのだ。さらに、モンスターを追ってきた巨大UFOも上空に出現。軍の上層部は、衛星核ミサイルによる攻撃を決断、カウントダウンが開始される。フェアチャイルドは、圧倒的な猛威を振るうモンスターに、決死で立ち向かうが……。（公式HPより引用）

まず本作にメインで登場する3人の敵エイリアンについてだが、彼らは元々「別のエイリアンの手によって隔離用のUFOに収容されていた、危険生物」との設定である。その“監獄UFO”がなんらかの手違いで地球に墜落してしまったがために、囚人エイリアンが解き放たれ、本能の赴くまま人類に危害を及ぼすというわけだ。

アサイラムが誇る比較的マトモな監督が手掛けたそこそこ楽しめる侵略SF！『エイリアン：スカイコマンド』

「わざわざドデカい宇宙船を作って地球まで飛んでこられるだけの科学力があるくせに、なんでこいつらロクな装備も持たず全裸でその辺をうろついたり、目についた地球人を非文明的に生食してるんだ？」という、この手の低予算SF映画にありがちな疑問に対し、「いや、このエイリアンたちは強制収容されるレベルのイレギュラーなワルどもだから」という一応の回答が用意されている形である。そして主人公たち対エイリアンチームは、その“異星人の目から見ても知的生命体にはほど遠いモンスターども”と死力を尽くして戦うのだ。

が、物語終盤、墜落した監獄UFOの行方を追っていたらしい上位異星人のマザーシップが、脱走者を処理するために、ついに地球へと降臨する。それはまあけっこうなことだが、なんとこのマザーシップ、たった3人の囚人エイリアンを駆除するために、超エネルギー砲を持ち出し問答無用で地球もろともこっぱみじんに吹き飛ばそうとし始めるのだ。なお本編にマザーシップが登場した時点で、すでに3人いるエイリアンのうち2人が主人公たちの手で仕留められている。すなわち「そんな微妙な強さのエイリアン1人の命と引き換えに、この地球という星1つが今、コラテラル・ダメージで滅ぼされようとしている」ことになるわけで、人類目線で言えばたまったものではない。

コアファン向け「アサイラム過去作品クイズ」も可

あまり地球側の道徳観念を異文化相手に持ち出しても仕方がないにせよ、少なくとも本作の描写からは、「やっぱりこれ、エイリアンなんてどいつもこいつも倫理観の欠如した野蛮人ばかりなのでは？」というSF差別意識が助長されるばかりである。

なお、ヒロインとごくわずかなメインキャスト以外は驚くほどぞんざいに死んでいったり、わりと雑に核兵器がすぐ持ち出される展開、“対エイリアンチームの基地”が他作品でも撮影に使っているいつものオフィスである点については、安定のアサイラム作品らしい。

大作続編便乗映画『インデペンデンス・デイ2016』 SNSで絶対に関わりたくないタイプの理不尽エイリアンが人類を蹂躙！

ところで本作、序盤に“今までアサイラム社がリリースしてきた数々の低予算SFパニック映画と、その本編に出てくるエイリアンの映像”がダイジェストで流れる。筋金入りのアサイラムファンの方は、どれがなんの作品から流用されたものなのか、クイズ的に当ててみるのもおもしろいだろう。肝心の本編はクライマックス以外そうおもしろくもないが。