“中国映画”は巨額の資金で大作続々誕生!? いまアツい理由

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中国映画が本格的に世界で注目され始めたのは、’80年代のこと。

「中国映画史の中でも“第五世代”と呼ばれる監督、チャン・イーモウ、チェン・カイコー、ティエン・チュアンチュアンの登場により、ベルリンなど国際映画祭での受賞も相次ぎ、世界に大きなインパクトを与えました」(日本映画大学学部長・石坂健治さん)

この頃は、近過去を舞台に、抑圧された社会の中で生きる切実さのようなものに主題をとる映画が多かったが、時代とともに変化。

「近年は、ハリウッドから人材が集結するなどグローバルな視点を意識した映画が増加。とはいえ、それが一大娯楽作品だったとしても、背後に国家の陰が感じられるのが中国映画。そこが面白いところともいえます」(石坂さん)

なかでも軒並みヒットとなっているのが、アクション大作。

「たとえば『エイト・ハンドレッド‐戦場の英雄たち‐』は、総製作費80億円。巨額の予算をかけたからといって誰もが楽しめる映画になるとは限りませんが、これは’20年の世界興行成績1位を記録。このように結果にもつながる大作が、続々と作られています」(映画評論家・くれい響さん)

その勢いは、アニメにも波及。

「中国には、さまざまな分野で世界1位になろうという気概があり、映画はもとよりアニメにも国策的に資金を投じているようです。結果、技術力が上がり、近年、良作が生まれています」(台湾映画コーディネーター・江口洋子さん)

また、中国で映画を作るには、脚本の段階から検閲が入るなど規制がある中で、作家性のある新しい才能も台頭しているという。

「『少年の君』のデレク・ツァン監督は、キャリアは浅いものの、規制ギリギリのところで自分の撮りたい映画を撮っているところが素晴らしい。27歳の時に実験的な映画を撮り高い評価を得たビー・ガン監督も注目です」(江口さん)

中国映画の新潮流1:世界が称賛する新しい才能に注目

『少年の君』(2019年)

苛烈ないじめを受けている高校生の少女と、街の不良少年。居場所のない二人が出会い、心を通わせていくが…。「監督のデレク・ツァンは、これが単独監督2作目。今作で第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネート。さらに、中国はもとより世界でベストセラーとなっている小説『三体』がNetflixで映画化されますが、その監督にも決定しています」(くれいさん)
絶賛公開中 配給:クロックワークス

『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』(2018年)

ある男が12年ぶりに故郷に戻り、かつて愛した女の面影を追うが…。夢とも現実ともつかない物語が展開し、後半60分からはなんと映像が3Dに。しかもワンシークエンスショットという斬新さ。ビー・ガン監督は1989年生まれで、この映画を撮った時は27歳だったという。「ストーリーテリングよりも映像と感覚で衝撃を受けるタイプの作品です」(江口さん)
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中国映画の新潮流2:アニメの劇的進化が止まらない!

『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』(2019年)

森で暮らしていた猫の妖精・羅小黒(ロシャオヘイ)は、人間の開拓によって森を追われ、安住の地を探すために放浪の旅へ。その途中で仲間と出会い、冒険が繰り広げられる。「日本で公開されたばかりの時は単館上映でしたが、口コミで人気となり、日本のアニプレックスが共同配給について花澤香菜さん、宮野真守さんといった人気声優の吹き替え版が全国公開されました」(くれいさん)
©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd Blu‐ray&DVD発売中 発売元:アニプレックス 販売元:ソニー・ミュージックソリューションズ デジタル配信中

『ナタ転生』(2021年)

中国の古代小説『封神演義』を現代風にアレンジ。小説に登場するナタが、現代を生きる青年に生まれ変わり、過去の怨念から命を狙われるというストーリー。「『羅小黒戦記』もそうですが、中国では子どもから大人まで知っているようなキャラクターをアニメ化することが多く、そこに日本のアニメにも通じるようなバトルシーンがプラス。日本人が観ても楽しめます」(くれいさん)
©Light Chaser Animation Studios デジタル配信中

中国映画の新潮流3:メガヒットを飛ばすアクション大作

『エイト・ハンドレッド‐戦場の英雄たち‐』(2020年)

舞台は日中戦争下の上海。中国軍の守備隊が繰り広げた5日間の激闘「四行倉庫の戦い」の実話がモチーフ。20万平方メートルの土地に、上海の街を再現したというスケール感がすごい。「倉庫のセットはもとより、アクションも含めて本当に中国の資金力を感じます。さまざまな制約の中で検閲をかわし、あまり語られてこなかった実話をベースに撮るグアン・フー監督の力量はさすが」(江口さん)
©2019 HUAYI BROTHERS PICTURES LIMITED THE SEVENTH ART PICTURES(FOSHAN) CO LTD ALL RIGHTS RESERVED 公開未定

石坂健治さん 日本映画大学学部長。東京国際映画祭「アジアの未来」部門シニア・プログラマー。専門はアジア映画史、日本ドキュメンタリー映画史。

くれい響さん 映画評論家、ライター。映画誌、情報誌などさまざまな媒体での執筆や、『少年の君』『唐人街探偵 東京MISSION』といったアジア映画のパンフへの寄稿も多数。

江口洋子さん 台湾映画コーディネーター。俳優、監督情報など、アジアのエンターテインメントを紹介するサイト「アジアンパラダイス」主宰。

※『anan』2021年10月20日号より。取材、文・保手濱奈美

(by anan編集部)