<レスリング>【2021年全日本学生選手権・特集】「京都・網野高」の最後の全国王者が、1年生王者の快挙を達成…92kg級・三浦哲史(拓大)

 

大会史上、男子36人目の1年生王者に輝いた三浦哲史(拓大)=撮影・矢吹建夫

 2021年全日本学生選手権の男子フリースタイル92kg級で、三浦哲史(拓大)が1年生王者に輝いた。男子では大会史上36人目。8月に予定されていた大会が新型コロナウィルス感染拡大の真っ最中で中止。そのままなら栄光の記録に名前が刻まれることはなかったが、延期開催となって一度のみしかない挑戦機会をゲット。その幸運をものにした。

 「1年生王者を狙っていた?」との問いに、「出る大会は、すべて勝たないと意味がないと思っています。目標にしていました」と、目標は優勝であることを強調。今月9~10日にあった全日本大学グレコローマン選手権で1年生王者が誕生した一方(72kg級・西田衛人=専大)、自身は3位に終わった。「負けられない、という気持ちもありました」と続け、かなり意識はしていたようだ。

 決勝の相手は、86kg級を主戦場にしているが大学の先輩の井筒勇人。昨年12月の全日本選手権は92kg級の出場で、高校生として唯一出場した三浦は3位決定戦で敗れていた。やりづらい相手だろうが、「気にしてしまうと、動きに影響が出てしまいます。意識せずにやろうと思いました」と気持ちを固め、その通りの試合ができたようだ。

大学でのデビュー戦は初戦敗退、その悔しさをぶつけた

 「勝った中でも、見つかった課題は?」との問いには、しばらく考えたあと、「今回は自分の形でできました。スタミナは自信があるので後半ガツガツ攻めるのが自分のレスリング。それができました。いつもこの形でできればいいと思います」と、“レスリング”に関しては合格点。

決勝は井筒の猛攻をしのぎ、2-1で競り勝った=撮影・矢吹建夫

 ただ、パワー負けは感じたそうで、「もっとパワーをつけないと」というのが、唯一感じた課題だ。

 「グレコ選手権で3位に終わった悔しさを晴らせて、よかった」と言う一方、中3日での試合出場に「肉体的にはきつかったですね」と苦笑い。それでも、「みんな同じ条件。その中で、どれだけやれるかが勝負でした」と話す。気持ちの上では、悔しさの熱が残っているうちの試合だったことで、燃えられる一面はあったという。

 JOCジュニアオリンピックと東日本学生リーグ戦が中止となったため、6月の東日本学生春季新人戦が大学生としてのデビュー戦。初戦敗退だった。コロナのため、思うように練習できない事情はあったものの、これも皆が同じ条件。その中で負けたのは悔しく、そのときの思いも今回の優勝の原動力だったことを強調した。

延期開催の恩恵を続けざまに受けての栄冠

 オリンピックや世界選手権のメダリスト(井上謙二、正田絢子、伊調千春、堀内優、高谷惣亮)を筆頭に、多くの強豪を生んだ「京都・網野高」の最後の全国王者だ。網野高校は2020年4月、久美浜高校と統合して丹後緑風高校へ。その時点で在籍していた選手は「網野高」で、以後の選手は「丹後緑風高」で大会に出場した。

全日本大学グレコローマン選手権は3位。この悔しさが快挙につながった=撮影・保高幸子

 その結果、2020年10月の全国高校選抜大会で優勝した三浦が「網野高」の選手として最後の全国王者となった。この大会も、3月開催の大会が中止となったあと、新潟県協会の尽力で延期開催された大会。それがなければ、網野高の最後の全国王者は髙橋夢大(現日体大)だった。

 最後だからどう、ということは何もないが、延期開催の恩恵を続けざまに受ける運のよさが感じられる。「あれで運を使い果たした」となるか、「あの運を生かして世界に飛躍した」となるかは、本人の今後次第。

 このあと、11月には全日本大学選手権、12月には全日本選手権を控える。「今回は、大津拓馬さんや谷崎匠さん(ともに山梨学院大)が出ていないから優勝できたのかな、と思います。もっと頑張らないとなりません」と話し、表情を引き締めた。

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