インフルエンザワクチン 供給に遅れ コロナ影響、栃木県内医療機関も対応に苦慮

インフルエンザのワクチン接種を受ける子ども=15日午後、小山市美しが丘3丁目

 季節性インフルエンザのワクチンの供給が、例年より遅れている。新型コロナウイルスワクチンの量産に伴い、製造用資材が不足したことなどが影響している。昨年度は10月末ごろに供給量全体の約9割が出荷されたが、本年度は同時期で6割ほどにとどまる見通しだ。ワクチンは12月半ばまで順次供給されるというが、栃木県内の医療機関では予約の開始時期を遅らせたり、対象患者を制限したりして対応に追われている。

 小山市、主婦寺門聖莉奈(てらかどせりな)さん(29)は15日、長女の都(みやこ)ちゃん(1)のインフルエンザワクチン接種を終えた。「予約が取りづらいと聞いたので、受けることができてよかった」と安堵(あんど)した。

 都ちゃんが接種を受けた同市のおおきこどもクリニックは、例年なら9月半ばから接種の予約を受け付けるが、今年は9月後半に遅らせた。予約枠は供給に応じて拡大しているが、ほとんど埋まっている状況。大木丈弘(おおきたけひろ)院長(50)は「昨年と同様、新型コロナとの同時流行を警戒し、ワクチンへの関心が高い」と感じている。一方で「供給の見通しがはっきりせず、接種予定が立てづらい」と話す。

 宇都宮市の梅園医院では接種対象を通院患者に絞ったが、思うように予約を受けることができていない。梅園恭明(うめぞのやすあき)院長(56)は企業の産業医も務めるが、毎年行う集団接種の量も減らしているという。梅園院長は「大変心苦しいが、接種の開始時期も遅らせざるを得ない」と指摘する。

 厚労省によると、新型コロナワクチンの量産で世界的にワクチンを作るための資材が不足し、インフルエンザワクチンの製造の遅れにつながった。一方、本年度の確保量は、特に供給量が多かった昨年度よりは少ないものの、例年と同程度は確保したとする。12月半ばごろまで、順次供給される予定という。

 日本では昨年度の流行期、インフルエンザの感染が非常に少なかった。日本感染症学会によると、すでに今シーズンの流行期を迎えた南半球のオーストラリアでは患者の報告が少ない。しかしバングラデシュやインドなど南アジアでは、流行が見られた国もある。

 大木院長は「インフルエンザが流行するかどうかは読みづらい。重症化リスクの高い高齢者や乳幼児は、積極的にワクチンを接種してほしい」と呼び掛けた。

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