社説:気候危機 持続可能な社会へ展望を

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 毎週金曜日、京都市など全国の都市の街頭で若者たちが温暖化対策の強化を訴えている。

 スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんが金曜日に学校を休み国会前で温暖化対策を訴えた行動が世界に広がった。

 街頭で若者たちが強調する言葉が「気候危機」だ。大型化する台風や集中豪雨など、異常気象を目の当たりすることが増えている。将来を担う若い世代ほど、気候変動を人類への脅威と捉え、懸念を募らせている。

 地球環境の悪化をふまえ、持続可能な社会をどうつくっていくのか。衆院選でも避けて通れないテーマである。

 菅義偉前首相は気候変動対策として、2050年に温室効果ガスの排出を実質的にゼロにする目標を打ち出した。

 各国に比べて対応が遅れていた日本企業でも、二酸化炭素(CO2)排出を削減しようとの機運が高まっている。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「50年排出ゼロ」のためには30年までに10年比で半減させる必要があると指摘している。

 岸田文雄政権には目標の確実な実現が求められる。ただ、政府が打ち出したのは30年度に13年比46%の削減で、10年比にするとさらに低い目標となる。

 温暖化対策に関し、岸田氏が自民党総裁選などで言及したのは、電球のLED化など暮らしレベルの省エネが主だった。

 野党では、立憲民主党が10年比で30年に55%削減、共産党は同50~60%削減などを掲げる。

 意欲的な数字ではあるが、与野党とも目標を達成するための具体策は描き切れていない。

 気温上昇は加速度的に進むため、大気中のCO2が増えるほど抑制が難しくなる。

 省エネの積み重ねはもちろん重要だが、石炭火力発電の見直しや炭素税の導入など、社会や経済の仕組みを抜本的に見直すことが避けて通れない。

 新型コロナウイルス禍の衆院選では、身近な経済問題に焦点が当たりがちだが、私たちの暮らしを脅かす気候変動対策についても、深掘りが欠かせない。

 国連人権理事会で今月、気候変動が人権の問題だと指摘する「環境への権利」決議が可決された。だが日本は、ロシア、中国、インドとともに棄権した。

 政府は「環境権は国際的に認識されていない」とするが、気候危機が現実化する中、説得力のある説明とは思えない。

 CO2排出が世界最大の中国は60年までに実質ゼロにする国家目標を掲げ、海外で新たな石炭火力発電事業を行わない、としている。同2位の米国は05年比50~52%減を掲げ、社会構造転換や技術革新で世界をリードする意思を示している。

 日銀など世界の主要中央銀行も、民間銀行の脱炭素支援を後押しする。気候変動を巡る世界の潮流は大きく変化している。日本も乗り遅れてはなるまい。

 衆院選に向け、若者らのグループは各政党に対し、早期の脱化石燃料など対策の具体化を求めた。将来世代の危機感に応える論戦を展開してもらいたい。