独身の老後に備え運用に力を入れる39歳女性。投資内容と次の投資先へのアドバイスは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、39歳、会社員の女性。独身でも、老後の医療費や介護費をまかなえるように、貯金と投資で備えている相談者。現在のマネープランでOK?また、iDeCoとつみたてNISAの次は何に投資するべき? FPの高山一惠氏がお答えします。

現在39歳、会社員、独身、結婚の予定なし、一人暮らしです(+猫)。

おひとりさまの老後になりそうなので老後資金が不安で、6~7年ほど前から資産運用を始めました。現在、家計収支は平均して月24万円くらいの黒字で、月々の先取り貯金&投資は以下の通りです。

つみたてNISA…3万3,000円(セゾンVGB、セゾン資産形成の達人ファンド ※上限満額)

iDeCo…1万2,000円(eMAXIS Slim 先進国株式インデックス ※上限満額)

猫医療費積み立て…5万円(ペット保険未加入なので、いざというときのため)

お伺いしたいのは2点です。

(1)上記、月々の先取り貯金&投資をしたうえで14万円程度の余剰金があり、現状はただ現金で溜まっていくだけですが、それではもったいないので、何かしらの投資に回したいです。どういうプランがいいでしょうか。検討しているのは、S&P500;に連動する投資信託の積み立てなど。

(2)高齢期の医療、介護費用をすべて自分で賄う必要がありますが、それを加味して、老後資金はどのくらいを想定すべきでしょうか。身の回りのことを自分でできなくなったら、早々に老人ホームに入所したいですが、費用感などもお伺いできますと幸いです。

【相談者プロフィール】

・女性、39歳、会社員、独身

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:39万円

・ボーナスの有無:なし

・毎月の世帯の支出の目安:15万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:5万円

・食費:1万5,000円

・水道光熱費:1万5,000円

・教育費:8,000円(奨学金返済)

・保険料:5,000円(掛け捨ての医療保険、がん保険、生命保険、個人賠償責任保険)

・通信費:2,000円

・その他:5万5,000円(娯楽費、猫飼育費、日用品、交通費など)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:24万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):700万円

・現在の投資総額:1,750万円

・現在の負債総額:50万円(無利子の奨学金)

・公的年金:月13万円

・退職金:なし


高山:ご相談ありがとうございます。生涯シングルで生きると想定して、しっかり将来に備えていらっしゃる姿が伺えます。貯蓄に加えて、資産運用もつみたてNISA、iDeCoを上限額まで行ったうえで、14万円程度の余剰金があるとのこと。今回は、余剰資金の投資先に加えて、シングル女性がおひとりさまで暮らすための老後資金についてお話します。

つみたてNISA・iDeCoの商品選びも堅実!

ご相談者さんの家計を拝見すると、とても堅実に暮らしており、毎月の貯蓄、投資もきちんとできていて立派です。

つみたてNISA・iDeCoを上限金額まで投資した上で、毎月の余剰金が14万円あるとのこと。預貯金も既に700万円あるので、おっしゃる通り、他の投資について検討したいところですね。

つみたてNISA、iDeCoで運用している商品を拝見すると、コストが低く、運用成績も安定している良質な投資信託を選択されていますね。資産運用の勉強についても頑張っていらっしゃるのではないでしょうか。次の投資先候補としてはさまざまなものがありますが、米国株は有望な投資先だと思います。

つみたてNISA・iDeCoの次の投資先の候補は?

ご相談者さんも次の投資先の候補としてS&P500に連動する投資信託の積立を挙げていらっしゃいますね。S&P500に連動する投資信託も選択肢の一つだと思いますが、米国株ETFも検討してみてはいかがでしょうか。

ETFは上場投資信託とよばれ、上場しているので、株式と同じようにリアルタイムで取引できるところが特徴です。ETFの多くがインデックスファンドとなっており、かつ、通常の投資信託と比べて取引手数料やその他のコストが安く設定されています。

S&P500に連動している米国株ETFには、バンガード・S&P500ETF、iシェアーズ コアS&P500ETF、SPDRポートフォリオS&P500ETFなどがあります。いずれも経費率は0.03%、2021年9月時点での5年トータルリターン(年率)は、約18%です。

安定的に配当金を受け取れるとモチベーションも保てる

また、相場が下落した時でも安定的に配当金を受け取ることができると、モチベーションが保てるのではないでしょうか。そこで、高配当株への投資も検討したいところです。高配当株というと、やはり米国株が強いでしょう。というのも、米国株のなかには、日本株よりも高配当の銘柄、連続増配を行う銘柄があるからです。なかには、60年以上増配している企業もあるほどです。こうした、配当金を毎年増やす銘柄を持っておけば、お金も堅実に増やせる可能性が高まります。

例えば、バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)やiシェアーズ・コア米国高配当株ETF(HDV)、S &P500高配当株式ETF(SPYD)など、米国の高配当株に投資しているETFに投資してみるのも良いでしょう。

SBI証券・楽天証券・マネックス証券といったネット証券では、3,000銘柄以上の米国株・300銘柄以上のETFに投資ができます。特にSBI証券では、米国ETFの自動積立サービスも利用できます。

他の有望な投資先については、「29歳で1000万貯めた独身男性。つみたてNISAやiDeCoの次にやるべき運用は?」のご相談でもお答えしていますので、参考にしてみてくださいね。

将来の収入、公的年金だけではどれくらい足りない?

ご相談者さんは、生涯シングルで生きることを想定していらっしゃるようですね。ひとりで生きるとなると、最も心配になるのは「老後」や「介護」のことでしょう。

では、老後や介護への備えとしてどれくらいの資金を準備しておいたら良いのかについてですが、老後の生活費を試算するにあたり、現在の高齢者の方たちのデータが参考になります。

総務省の家計調査報告(2019年)によると、現在の高齢無職世帯(正社員で働いてきた人)が受給している年金額はシングル世帯で約12万4,700円。この収入に対して、支出は約15万2,000円となっており、シングル世帯では、毎月約2万7,000円の赤字がでているという結果に。日本人の女性は世界の中でも長生きで、平均寿命は87.32歳となっています。ただし、女性は、ますます長生きの傾向にあるので、95歳までは生きると考えて資金を見積もっておくと安心でしょう。

今後は働き方も大きく変わってくると思いますが、仮に65歳で定年退職を迎え、95歳まで生きると仮定すると、公的年金だけでは足りない金額は、2万7,000円×12ヶ月×30年間=972万円です。

娯楽を楽しみたいのならもっとお金は必要!

ただし、上記のデータは、衣食住の基本生活費、かつ持ち家を前提としたデータです。ですから、賃貸暮らしだったり、エステに行ったり、友達と美味しい物を食べたり、旅行に行ったりしたいとなると、もっとお金が必要です。

ご相談者さんの場合、現在生活費が15万円かかっており、公的年金が13万円支給される予定とのことですから、上記の試算に合わせると、公的年金だけでは足りない金額2万円×12ヶ月×30年間=720万円となります。

ご相談者さんの場合は、家賃代も入っての試算ですから、ここにどれくらいの娯楽費などをプラスするかです。

気になる医療費・介護費

また、高齢になると、病気や介護状態になる可能性が高くなるので、医療費、介護費用についてもしっかり準備したいところです。

まず、医療費ですが、厚生労働省の統計によると、60〜89歳までの医療費の自己負担額(保険料を含む)は2014年度実績で、平均115万円とのこと。万が一、がんなどの高額療養費制度を利用した場合についても70歳以上なら自己負担の限度額の上限は、基本的には月額5万7,600円、仮に1年間入院したとしても自己負担額の合計は約69万円。先の115万円と合わせると約184万円です。

一方、介護にかかる費用ですが、生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2018年)」によると、介護期間は平均4年7ヶ月、介護にかかった費用の平均は月額7万6,000円。手すりの設置や車椅子を用意するなどの一時的な費用は69万円となっており、毎月の費用と合わせると、約487万円。ざっくりと500万円は必要になるということです。

医療費、介護費用を合わせると、約700万円は必要ということに。余裕を持たせるとすると、750〜800万円は準備しておきたいところです。

老人ホームに入るにはいくらかかる?

シングルで重度の介護状態になってしまった場合には、ご相談者さんもご希望していますが、自分では何もできないため、老人ホームに入るという選択をする必要がでてきます。

一口に老人ホームといっても、地方公共団体や社会福祉法人が運営する「公的老人ホーム」と民間企業が運営する「民間老人ホーム」があり、どちらに入居するのかによって費用も全く違います。

公的老人ホームの場合、入居一時金がないケースが多く、月額の費用は毎月5〜15万円程度。加えて、要介護3以上でないと入居できないので、なかなか入居できません。

民間老人ホームに入るとなると、費用は施設のグレードによって様々ですが、例えば、都内の高級老人ホームなどは、入居時の一時金の費用として500〜1,000万円、月額は20〜40万円程度かかります。一般的な施設でも、月額10〜20万円はかかります。

老人ホームに入居中に資金がショートするケースも…

老人ホームのスタッフの方のお話によると、自分はそんなに長生きしないからと実際の寿命よりも短く見積もってし、実際には、自分の見積よりも長生きしてしまい、途中で資金がショートしてしまうという事例が増えてきているそうです。最悪の場合には、強制退去になってしまうことも。余生を健やかに生きるためには、余裕を持った資金計画をしておくことが大切ですね。

ご相談者さんの場合、現在も堅実に暮らしており、資産運用にも力を入れていらっしゃいます。ですから、よほどのことがない限りは、老後資金を心配することはないでしょう。時々は息を抜きつつ、このペースで頑張ってくださいね。

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