クラッシュは「自分のミス」高速ターマックで多くの学びを得た勝田貴元、終盤は好感触掴む/WRC第11戦

 WRC世界ラリー選手権第11戦『ラリー・スペイン』が10月14~17日、スペインのサロウを中心に開催された。TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムからシリーズに参戦する勝田貴元は、アーロン・ジョンストンとともにトヨタ・ヤリスWRCで今戦に出場し初日にデイリタイアとなるも、再出走した2日目以降は高速ターマック(舗装路)ステージでの経験を積み、総合40位でラリーを完走した。

 昨年に引き続きWRカーのヤリスWRCでシリーズ最高峰クラスを戦う勝田。彼は前回大会となった2019年のラリー・スペインでもヤリスWRCをドライブしていたが、2年ぶりの開催となった2021年は以前までの“ミックスサーフェス・ラリー”から“オールターマック(舗装路)・ラリー”へとイベントの性質が変更されたため、また新たな挑戦を迎えることになった。

 競技初日の金曜SS1、勝田はジョンストンが読み上げるペースノートの情報を誤解し、右コーナーにハイスピードをで進入してしまう。クルマはコーナーを曲がりきれずアウト側に設置されていたバリアに激突。勝田/ジョンストン組のヤリスWRCは左フロント部分に大きなダメージを負ってしまった。

 なんとかこのステージを走りきった勝田だったが、その後の競技続行は断念し、ラリー最序盤にしてデイリタイアを喫することになった。

「今回は、残念ながら自分が思っていたようなスタートを切ることができませんでした。自分のミスです」と語った勝田。

「ペースノートの情報を誤解してしまい、実際には自分が考えていた以上にタイトだったコーナーへの進入スピードが高すぎて、バリアへの衝突を避けることができませんでした」

 デイ1の夜、チームはサービスで勝田のクルマを修理し、彼を土曜日のデイ2からラリーに復帰させた。この日のことを振りかえった勝田は、「土曜日の朝は自信が持てずにかなり苦労しましたが、1日の終わりにはフィーリングが良くなり、ステージのタイムも好転しました」と説明した。

 ラリーの終盤にはステージトップ5タイムを2回記録するなど調子を上げた勝田は、今回がコンビ2戦目となるジョンストンとともに高速ターマックステージで多くの経験を積み、ラリー・スペインを完走している。

 プログラムのインストラクターを務めるユホ・ハンニネンは、今戦の勝田について次のように語った。

「金曜日、タカはリスクを冒していなかったし攻め過ぎてもいなかったので、あのようなことになってしまったのは本当に残念だった」

「彼は最初のステージを注意深く走り、フィーリングを高めようとしていた。ペースノートは正しかったのだが、実際よりも緩いコーナーと捉えて走ってしまったようだ」

「その後、翌日に再出走したが簡単にはいかなかった。とくに、上位の選手がかなりのハイペースで走っているような状況では、タカが自信を取り戻すためには少し時間が必要だったんだ」

「しかし、3本目のステージで、すでに良いタイムが出ていたし、金曜日の失望が大きかったことを考えると、かなり早く立て直したといえるだろう。土曜と日曜の丸2日間走れたのは良かったし、次のモンツァに向けてもプラスになったと思う」

 この点については勝田も同様の意見であり、「イベントの終盤にはさらに良いフィーリングが得られたので、今はシーズン最終戦のモンツァが楽しみです」と述べている。

 そのWRC最終戦モンツァは昨年、勝田がキャリア初のベストタイムを記録したイベントだ。今シーズンも新型コロナウイルスの影響で開催中止となった『ラリージャパン』の代替戦として行われるラリー・モンツァは、11月19~21日にかけてイタリア北部のモンツァ・サーキットを中心に開催される。このターマックラリーは今年、2020年大会よりも山岳ステージの割合が増加しており、さらにチャレンジングなイベントになる可能性がある。

勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC) 2021年WRC第11戦スペイン
勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタ・ヤリスWRC) 2021年WRC第11戦スペイン

© 株式会社三栄