平和継承を襲ったコロナ禍 沖縄戦 体験者の語りどう伝える? 

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新型コロナウイルス感染拡大防止のため大幅に規模を縮小して開かれた沖縄全戦没者追悼式=6月23日午後、糸満市・県平和祈念公園

[報道の舞台裏 秋の新聞週間](4)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、今年の6月23日の「慰霊の日」を初めて緊急事態宣言下で迎えた。コロナ禍での戦後76年目。4月から沖縄戦担当となったが、取材は悩みの連続だった。

 自分がもしもコロナに感染していて、それを高齢の沖縄戦体験者にうつしてしまったら-。取材に行く度に緊張感があり、不安は拭えなかった。

 沖縄戦を記憶している体験者は高齢となり、コロナ禍前からすでに、取材をしたいと思っていても体調不良で話が聞けなくなった人や、数年前に取材した体験者の訃報に接することもあった。「二度と戦争を起こしてはいけない」と語る体験者の思いを一人でも多くの人に届けたいとの一心で取材に取り組んできた。

 だが、県内の新規感染者数は100人を超える日が連日続き、コロナの感染が始まった昨年よりもさらに状況は厳しくなっていた。

 体験者から話を聞く際にはマスク着用を徹底し、換気を良くした場所で密を避け、短時間での取材を心掛けた。ただ、家族から人と会うのを懸念されて「緊急事態宣言が明けたらね」と話す体験者もいた。もう少ししたら明けるだろう、と考えていた宣言は何度も延長され、取材を断念したこともあった。

 コロナの終息はいまだ見えず、第6波への懸念もある。それだけではない。戦後80年には沖縄戦の体験を語ることができる体験者が今以上に少なくなり、話を聞くのがさらに難しくなる日が訪れる。あと数年が、紙面作りの正念場だと考えている。

 コロナ禍で制限されたのは取材だけでなく、学校や地域で体験者が語る機会も減少した。今年の慰霊の日の連載企画では、体験者の思いを後世に残し、体験者の生々しい語りや切実な思いを若い世代にも伝えたいとの思いで、先輩と一緒にスマートフォンやビデオカメラを片手に体験者らの証言を録画。動画の制作にも取り組んだ。

 沖縄戦の悲惨さを知り、慰霊祭などを通して反戦平和を訴えてきた方たちの貴重な証言を聞けなくなると、今後の平和継承が難しくなる状況をコロナ禍でより強く感じた。話を直接聞ける最後の世代の一人として、今後の平和継承や平和教育のあり方について紙面を通して問題点や指摘、何らかの解決に向けたきっかけにつながる取材をしていきたい。(社会部・大城志織)