「認知症にやさしい図書館」催し 京都の図書館「まわしよみ新聞」を活用

他の人が選んだ記事とコメントに、自分の感想を書き加えていく参加者たち (10月1日、京都市左京区・岩倉図書館)

 気になる新聞記事を張り、コメントを書いた紙に他の人が感想を書き加えていく「作ろう、私の特選記事!」ワークショップが、京都市左京区の岩倉図書館で開かれた。同館の「認知症にやさしい図書館」企画で、認知症の当事者を含め市民14人が参加した。

 記事を使って意見交換を楽しむ「まわしよみ新聞」の手法を、京都新聞読者交流センターの記者がアレンジし、進行を担当した。

 まわしよみ新聞は、記事に着目した理由を一人ずつ説明し、身近な出来事や感想と関連付けて語り合う。「特選記事」ワークは会話による交流が苦手な参加者層や、コロナ禍での3密回避のニーズを受けて考案。NIE(教育に新聞を)に取り組む教員や図書館司書の助言を取り入れた。

 岩倉図書館の催しは、さまざまな新聞から参加者が気になる記事を二つ選び、画用紙に1枚ずつ張り、選んだ理由や伝えたい点をコメントとして書いた。参加者は会場を巡って読み、記事やコメントに対する感想を次々と書き加えていった。初対面の参加者が多い中、共感や、別の話題を紹介する温かい言葉のやりとりが目立った。

 認知症の当事者も複数人、参加した。上京区の男性(69)は、熊本市電の赤字や、花火大会の様子を報じる熊本日日新聞の記事を選んだ。「コロナで花火がなく寂しい」とのコメントに「来年は皆で見られる世の中になるといいですね」「近くなら◯◯の花火大会がおすすめ」といった言葉が寄せられた。男性は「知らなかった人と言葉を交わすことができて、うれしい」と話していた。

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