韓国紙「同盟国でも半導体で米とは一線を」「バイデン政権は半導体に無見識」

バイデン政権がサムスン電子など半導体企業に対し、顧客情報など機密性の高い情報の自主的提供を求めていることに対して、これまで韓国メディアでは様々な反応が出ている。

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当然ながらこれを警戒する見方が大勢だ。理由はライバル企業に機密情報が渡れば「死活問題」になるというものだ。半導体が国家の基幹産業となっている韓国にとって、これはとても受け入れられない要求となる。

左派系紙のハンギョレ新聞は18日、社説でこの問題を取り上げ、「米国は、今回の要求が、半導体供給不足の問題を打開するための次元とするが、要求内容を見ると、納得しにくいのが一つや二つではない」とし、提出項目に顧客リストや顧客別の売上高割合は、主要なチップの技術段階まで含まれていることを挙げ、「自発的な提出としながらも、非協力企業には、強制的に収集することができる手段があるとの警告までしている」と伝えた。

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そのうえで、「米国のこのような無理強いは、半導体サプライチェーンでは、中国を排除していく一方で、米国内の安定したサプライチェーンを構築しようとする意図と解釈される」としつつも、「米国は現在、半導体設計会社であるインテルに莫大な補助金まで与え、米国内の製造施設を拡充するように誘導している」ことを挙げ、「このような状況では、サムスン電子の機密情報が、インテルのような企業に移らないと誰が保証することができだろう」とし、「米国がいくら重要な同盟といっても、企業と国家の重要な利益に関連する事案では、明らかに線を引くしかない」と主張した。

保守系紙の朝鮮日報も先月24日、米政府の機密情報要求について「少なくない波紋が広がるだろう」とし、情報が「外部に知られた場合、今後顧客との価格交渉に支障をきたすことはもちろん、競合他社にサムスンのマーケティング戦略が露出される恐れが大きいからである」と説明しながら、「今後、米政府が、自国企業がサムスンと半導体販売契約を結ぶ際、サムスンのチップ販売関連情報を利用して交渉に介入する恐れもある」との半導体業界関係者の声を伝えた。

上記二紙以外にも様々な韓国メディアが懸念を示しているなか、エレクトロニクス関連報道で定評のある専門紙ジ・エレックは、また別の見方を示した。

同紙は13日の動画ニュース番組において、米政府の機密情報要求に懸念を示しつつ、このような前例が出来れば、中国など他国政府の情報要求にも抵抗できなくなることから「悪しき前例」になると指摘した。

一方で、米政府の「見識」についても疑問を呈した。司会者は、これら多くの機密情報を得たとして、米国が政府次元で何らかの戦略を立てられる力があるのかと問う。

これに対し、韓国半導体業界の有力者は、機密情報に米企業人が触れるのであれば絶対に提供してはならないとしつつ、「純粋に米公務員が(情報提供要求)を行ったとして、このような人が(情報を)整理して戦略を練れるのか?」とし、「そう考えると、本当に半導体をよく知らない人か、本当に素晴らしい(優秀な)人材か、どちらかの一つだ。中間の人間ではないと思う。ところが、半導体の戦略を練ろうとする本当に素晴らしい人材が米国の公務員?これもおかしい」と述べ、「だから、よく知らない人が行ったのではないかと思う」と述べている。

これについて司会者は、「今、ほとんどすべて(の企業で)同じような考えをしているような気がしますね」と伝えた。

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