民間人搭乗の宇宙船「ソユーズMS-18」が無事帰還 ISSでは一時問題発生も

【▲ カザフスタンに着陸した有人宇宙船「ソユーズMS-18」のカプセル(帰還モジュール)(Credit: CPK/Roscosmos)】

日本時間2021年10月17日10時14分、3名を乗せたロシアの有人宇宙船「ソユーズMS-18 “ユーリ・ガガーリン”」が、国際宇宙ステーション(ISS)ロシア区画の多目的実験モジュール「ナウカ」を離れました。ソユーズMS-18にはロスコスモスのオレッグ・ノヴィツキー(Oleg Novitskiy)宇宙飛行士と、民間人で女優のユリア・ペレシルド(Yulia Peresild)さん、および監督のクリム・シペンコ(Klim Shipenko)さんが搭乗。大気圏に再突入した同船のカプセル(帰還モジュール)は、同日13時25分にカザフスタン共和国のジェスカスガン南東へ無事着陸しました。

ノヴィツキー飛行士は2021年4月9日にロスコスモスのピョートル・ドゥブロフ(Pyotr Dubrov)宇宙飛行士とアメリカ航空宇宙局(NASA)のマーク・ヴァンデハイ(Mark Vande Hei)宇宙飛行士とともにソユーズMS-18へ搭乗してISSに到着し、第65次長期滞在クルーの一員としてタスクに従事しました。ノヴィツキー飛行士は半年の滞在で帰還しましたが、ドゥブロフ飛行士とヴァンデハイ飛行士は2022年3月まで滞在を延長することが発表されています。

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【▲ ペレシルドさんとシペンコさんの滞在中にISSで撮影された集合写真。左奥にはJAXAの星出彰彦宇宙飛行士の姿も(Credit: NASA)】

いっぽう、ペレシルドさんとシペンコさんはISSで初となる長編映画の撮影を行うために、日本時間2021年10月5日に有人宇宙船「ソユーズMS-19」に搭乗してISSに到着。12日間の活動を終えた民間人の両名は、ノヴィツキー飛行士とともに地球への帰路につきました。

今回の映画「Challenge」(チャレンジ、挑戦)の撮影は、ロスコスモスやロシアの放送局チャンネル1などによる科学教育プログラムの一環として実施されました。ロシアのタス通信によると、この映画は宇宙飛行士の命を救うために宇宙ステーションへ飛び立った医師の物語とされており、上映時間のうち約35~40分の映像がISSで撮影されたとのことです。

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【▲ ソユーズMS-18で帰還したユリア・ペレシルドさん(手前)とオレッグ・ノヴィツキー宇宙飛行士(奥)(Credit: CPK/Roscosmos)】

今回の着陸についてロスコスモスのドミトリー・ロゴージンCEOは「クルーの調子が良くて嬉しい。(カプセルが)横倒しにならなかったことも良かった」と高く評価しているものの、ISSを離れる前には問題も起きていました。

ソユーズMS-18が帰還する2日前の日本時間10月15日、ISSではロシアのフライトコントローラの指揮のもとで、ノヴィツキー飛行士によるソユーズMS-18のスラスターの噴射テストが18時2分から行われました。ところが、予定時間を過ぎてもスラスターが稼働し続けたことでISSの姿勢が傾き始め、18時13分にISSは姿勢制御を喪失。米ロの関係者はISSに滞在中の宇宙飛行士に対して緊急プロトコルの実施を命じ、30分以内にISSは姿勢制御を取り戻しました。NASAによればクルーとISSが危険にさらされることはなかったとされており、ロスコスモスもISSの姿勢が速やかに回復したと発表しています。

【▲ ISSの多目的実験モジュール「ナウカ」にドッキングした「ソユーズMS-18」(Credit: NASA)】

ロシアのインテルファクス通信はISSロシア区画のフライトディレクターを務める元宇宙飛行士のウラジーミル・ソロフィエフさんの言葉として、ISSの姿勢が57度逸脱したことを伝えており、10月16日には地上設備の故障が原因だったとする関係者の言葉を報じています。ISSでは今年7月30日にもロシア区画にドッキングしたばかりのナウカでスラスターが誤って噴射され、ISS全体が約540度回転する事態が発生していて、この時はソフトウェアの不具合が原因だったとされています。

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Image Credit: NASA, Roscosmos
Source: NASA / Roscosmos / NY Times / TASS / Interfax
文/松村武宏

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