定年後すぐの住民税は高い!ふるさと納税やiDeCo、確定申告はやるべき?定年後の税金対策

平均寿命が延びて「人生100年時代」といわれるようになりました。老後を豊かに過ごすためには、「健康」「お金」「生きがい」が必要になります。企業によっては定年制をなくしたり、70歳まで働ける環境が整ってきたりと、老後の過ごし方も選択肢が増えてきました。

しかし、いまだ多くの企業は60歳を定年とする場合が多く、働き続けるとしても再雇用や転職など定年を境に生活スタイルを変えざるを得ません。定年時とくらべ収入が減少するので、老後の思わぬ出費はパニックになるかもしれません。

今回は老後のお金の注意点として、定年後の税金を中心に見ていきましょう。


退職金で喜んでばかりはいられない住民税の負担

定年後は働かずにリタイアする人よりも、長生きを反映して元気なうちは働き続ける人が増えています。継続雇用の場合、退職の形をとらない勤務延長より、いったん退職して雇う再雇用が主流です。退職金制度がある会社では、一時金や年金方式、一時金と年金方式の併用などで退職金をもらいます。

とはいえ、定年後の働き方は現役時代とは異なる事情があります。日経ビジネスの「定年後の就労に関する調査」(2021年1月)によれば、定年後の給料は定年時とくらべ4~6割減が過半を占めています。また定年後も働く理由も「生活資金のため」という回答が最多になっており、定年後の厳しい現実が見えてきます。

現役時代も税金の負担は大きかったと思いますが、収入が減ってからの納税の負担はより重たいものがあります。所得税はその年の1月1日~12月31日までの所得に対して源泉徴収されます。一方、同じ税金でも住民税は、前年の所得に対して、翌年1月1日時点で住所がある自治体に、その年の6月から納付します。給与所得者の場合には、「特別徴収」といって給料から天引きされる徴収方法になっています。

退職する時期で異なる住民税の納付方法

給与所得者が退職する場合には、退職する時期によって住民税の納付方法が異なります。

1月~5月に退職した場合には、退職月の給与や退職金から5月分までの住民税を徴収します。6月~12月に退職した場合には、退職月までの住民税は給与天引きで納めますが、退職後以降の住民税は自分で納付することになります。場合によっては、会社が住民税を納付してくれる場合もあります。

しかし、住民税の金額は前年の所得によって決まるので、翌年に仕事に就いていない場合や定年後収入が下がった場合には、定年後すぐの住民税の納付が大きな負担になることが予想されます。

たとえば、年収700万円で給与所得者として働いていた人が、年収300万円で定年後に働いたとします。前提条件として、扶養親族がなく、所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみを差し引いた場合には、年収700万円の場合の住民税は翌年課税され、年間38万円になります。

つまり定年直後の年に関しては、住民税は38万円支払わなければならないので、年収300万円から所得税6万円、住民税38万円、社会保険料43万円を差し引くと手取りは213万円になってしまいます。なお、同じ条件で働いた場合、定年後2年目以降は年収300万円の住民税は12万円になります。

給与所得者にならない場合には、普通徴収で一括か年4回に分けて納付書で納めることになります。納付書が送られてきても驚かないように、事前に住民税の納付資金のことを考えておく必要があります。

定年後もふるさと納税などはやったほうがいのか

定年後はふるさと納税などをすべきかどうかは、所得の金額で異なってきます。

老齢基礎年金や老齢厚生年金、企業年金や個人年金保険などは、所得の分類上「雑所得」になります。公的年金等を受け取った場合には、収入金額から公的年金等控除額を差し引いて計算します。公的年金等以外の年金は、収入金額から必要経費を差し引いたものが雑所得の金額になります。

たとえば65歳未満の方で公的年金等の収入が130万円未満の場合、公的年金等控除額は60万円です。公的年金等控除額60万円と基礎控除48万円を加えた108万円以下の収入の場合には所得税は課税されません。

65歳以上で公的年金等の収入が330万円未満の場合は、公的年金等控除額は110万円です。これに基礎控除48万円を加えた158万円以下の収入の場合にも所得税は課税されません。

公的年金等に係る雑所得の速算表

国税庁 のHPを元に雑所得をまとめました。

節税の観点からいうと、公的年金等の収入が65歳未満で108万円、65歳以上で158万円を超える場合にはふるさと納税が所得控除になる可能性があります。公的年金収入以外の収入がない場合のふるさと納税の上限金額の目安は次のとおりです。ただしその他の所得控除の金額や家族構成などによって、寄付の上限額が変わってくるので注意が必要です。

65歳未満の年金受給者 ふるさと納税の上限額

65歳以上の年金受給者 ふるさと納税の上限額

また、年金をもらいながら給与所得があったり、年金と不動産所得があったりする場合でもふるさと納税をすることはできます。年金などの雑所得とその他の所得を合算して計算します。

ただし、退職所得となる退職一時金の場合、住民税の所得割額について、ふるさと納税の適用はありません。これは、退職所得控除の額が大きいことや税制上の優遇がなされているためです。

iDeCoは2022年5月から65歳まで加入できる

長く働く社会へ変わっていくのにあわせて、年金制度も改正が予定されています。確定拠出年金の主な改正として、2022年4月から受給開始年齢の上限が70歳から75歳に変更され、同年5月からiDeCo(個人型確定拠出年金)の場合には積立ができる年齢が65歳未満まで引き上げられます。

老後資金を準備しながら、掛金が全額所得控除になるiDeCo(個人型確定拠出年金)は、所得税や住民税は節税ができるので、現在利用している人はぜひ継続しましょう。今まで積み立てられる期間が短くてiDeCoの利用を悩んでいた50代の人でも、加入可能年齢の引き上げにより、税制の優遇制度を生かして老後に備えることができます。もちろん60歳から始めるというのもいいですね。

さらに現在のところ企業型確定拠出年金に加入する会社員は、会社の規約が変更された場合のみiDeCoに入ることができます。しかし2022年10月からは企業型確定拠出年金とiDeCoの併用が会社規約の変更がなくてもできるようになります。今までiDeCoに加入できなかったという人でも、この機会にiDeCoを利用すれば掛金を所得控除できるので、節税と老後資金の積み増しができます。

働く年金世代で注意すること

2020年の税制改正で、給与所得を計算するときに使う給与所得控除と、年金をもらっている場合に差し引ける公的年金等控除が10万円ずつ減っています。一方、基礎控除は所得が2400万円以下ならば10万円増えました。合計すると会社員の場合には、改正前と改正後が控除される金額が変わらないという場合がほとんどです。

しかし、公的年金の収入と給与所得の両方がある人は、2020年の税制改正によって給与と年金から差し引ける控除額がそれぞれ減り、基礎控除を含めても差し引き10万円控除額が少なくなる結果になりました。そこで、所得金額調整控除という制度が導入されました。この所得金額調整控除によって給与所得を最大10万円減らすことができます。

所得金額調整控除には2つあって、1つ目は子ども・特別障害者等を有する場合で、2つ目は給与所得の双方を有する場合に適用されます。しかしながら、給与所得と年金所得を有する場合には、年末調整で行うことができず、確定申告をする必要があります。

定年後こそ確定申告で手取りを増やす

所得税の確定申告と聞くと若い年代でも面倒に感じるものですが、高齢になればなおさらのことでしょう。そこで「年金所得者の確定申告不要制度」があり、年金生活者の負担を軽減する仕組みが取られています。公的年金などの収入が400万円以下で、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下などの条件を満たすと申告をしないですむことになっています。

しかし、高齢になれば若いときとは異なり、病気やケガで医療費がかさみ、入院ということも増えてきます。医療費控除ができるケースもあるでしょう。また、生命保険料控除や地震保険料控除、家族の国民年金保険料を支払っている場合など、確定申告をすることによって税金の還付があります。

さらに、退職金をもらう場合で「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合には、確定申告する必要はありません。しかし、1年の途中で退職して就職しなかった場合は、本来払う額よりも所得税額を多く納めていることもあるので、確定申告をすることで税金を安くすることができます。課税所得を減らすことができれば、住民税を減らすことができ、ひいては健康保険料や介護保険料にも波及します。

もし、申告期限が過ぎていても、還付申告は5年間することができます。税金の負担が変わってくるので、定年後こそもっと確定申告に関心を持っておきたいですね。

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