「世界遺産・奄美でエコツーリズム開発」 JAL赤坂社長 コロナで減少のビジネス客、観光需要でカバー

インタビューに答える日本航空の赤坂祐二社長=14日、鹿児島市の南日本新聞社

 新型コロナウイルス禍の長期化で、航空業界は旅客需要の落ち込みに直面している。鹿児島市を訪れた日本航空(JAL)の赤坂祐二社長(59)に、コロナの経営への影響や今後の見通し、世界自然遺産に登録された奄美など地域との関わり方について聞いた。

 -コロナの影響は。

 「国際線の旅客需要はコロナ前の1割程度までしか戻っていない。4、5割に回復していた国内線も緊急事態宣言下の8、9月は再び低迷した。一方で国際線貨物は好調だ。貨物量の増加やコンテナの供給不足で、輸送単価も上がっている。中国や東南アジアから北米への動きが活発で、貨物のみの便が月千本くらいは飛んでいる」

 「ただ、貨物が増えても客室乗務員(CA)の仕事は増えない。CAの約1割が自治体やコールセンター、接遇の講師などさまざまなところに出向している。各所で評価をいただき、本当にありがたい。鹿児島県庁でも今年4月から2人受け入れてもらっている。CAの仕事を外部で生かし、復帰後は外部で得た経験を乗務に反映させてほしい」

 -今後の旅客需要の見通しは。

 「国際線の本格回復にはまだ2、3年かかるだろう。カギは国内線だ。地方から東京に向かう人の流れが少ないと感じる。リモートワークが定着し、完全に元には戻らないかもしれない。ビジネス客を観光需要で補うことが必要になる」

 -世界遺産に登録された奄美にグループで路線網を広げている。

 「奄美群島は、子会社・日本エアコミューター(JAC)の発祥の地で、つながりが深い。航空会社としても、人を呼び込む活性化と自然保護のバランスを考えねばならない」

 「持続可能な開発を目標に、奄美大島でドローンを使った物資輸送、自然保護を目的にしたエコツーリズム商品の開発などを手掛ける。これまでも自然保護には取り組んできたが、今後は事業化で収益を生み、持続的な活動にしていきたい」

 -離島路線を担う九州の地域航空と、どう連携を深めていくか。

 「2019年に全日空、JACなど地域航空3社と『地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合』を設立した。当初の大きな目的は、機材や人員の統一運用でスケールメリットを生み、“地域住民の足”を維持することだったが、今後は観光の手段としても前向きに充実を図る。JACがカバーする奄美のほか、五島や天草など他地域航空の就航先も豊かな観光資源を有している。増加する観光需要に対応するためにも、新路線開設も視野に動きたい」

塩田康一県知事を表敬訪問した日本航空の赤坂祐二社長(右から2人目)=14日、鹿児島県庁

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