欧米メディアが心配する中国GDP急減速! 習近平は「第2の文化大革命」で大混乱を起こす?

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新型コロナウイルスを抑え込み、景気を回復軌道に乗せて世界経済をけん引してきた中国経済に異変が起こっている。

直近の2021年7月~9月のGDP(国内総生産)が中国としては異例に低い、前年同期比4.9%増に落ち込んだのだ。

考えられる原因は1つや2つではない。背景には、習近平指導部肝いりの政策が、ことごとく裏目に出たことがある。強権的な政治手法で知られる習近平主席の出方によっては世界経済の危機も免れないが......。

習近平氏の温室効果ガス対策が裏目に

中国経済の減速が始まったことについて、ここでざっとおさらいをしておこう。主要メディアの報道をまとめるとこうだ。

中国国家統計局が2021年10月18日に発表した今年7月~9月までのGDP(国内総生産)の伸び率は、物価の変動を除いた実質で前年同期比4.9%増となった。プラス成長は6期連続だが、伸び率は7.9%増だった4~6月期より大きく減速した。前期比でも0.2%増(4~6月期は1.2%増)と低調だった。

要因として考えられる第1点は、不動産開発大手「恒大集団」グループが巨額の負債を抱えて経営危機に陥ったこと。政府の規制強化を背景に不動産投資が減少、不動産市場の動揺は続いている。

第2の問題は、石炭価格が急騰して電力の不足が深刻になったことだ。全土で停電が相次ぎ、生産をストップする企業が相次いでいる。これは、習近平国家主席が、2020年に温室効果ガス対策として、国連で「2030年までに二酸化酸素排出量を減少に転じさせる」と演説。石炭の生産を大幅に減らす結果になったことが大きい。

そして第3の要因は、中国ならではの厳格なコロナ禍の抑制対策だ。来年2月に北京冬季オリンピックを控えていることもあり、「ゼロコロナ」を目指している中国の感染対策は、十数人程度の小規模な感染者を出しただけで、全都市をロックダウンするほど厳格を極める。都市封鎖の期間中は、住民の移動も企業の生産活動もストップしてしまう。

こうしたことが重なり、消費も落ち込んでしまった。

今回の中国経済の減速問題、海外メディアの中では「長期化してかなり深刻な事態になる恐れが強い」と見る向きが多い。それは、習近平国家主席が、かつてない強権的な政治姿勢を貫くだろうとみられるからだ。

ロイター通信(10月17日付)「焦点:中国指導部、景気減速でも不動産規制堅持 実行面で微調整も」では、北京駐在のKevin Yao記者が、こう報告する。

「中国の政治指導部は、長引く不動産バブルが長期的な経済成長基盤を損なう事態を懸念しており、たとえ景気が減速していても、不動産セクターを厳しく規制する基本方針を維持する公算が大きい。ただ、実行面で手綱が多少緩められる可能性はある――。これが政策関係者や専門家の見方だ。彼らの話を聞くと、習近平国家主席は短期的な痛みが増すことをいとわず、直近に導入した一連の不動産規制を断固推進する構えに見える。この姿勢は、経済成長がおぼつかなくなった段階で規制が骨抜き状態になりがちだった過去の対応とは、まるで違っている。

習氏の決意は、中国経済の不動産セクターに対する依存を減らし、各種資源をハイテクなど新しく台頭してきた分野に振り向け、成長をけん引させようという長期的な構造改革に政府が取り組んでいることに根ざすものだ」

これは、不動産開発大手の恒大集団が3000億ドル余りの債務を抱えて経営危機に陥った問題に、救済に動かず、これを機会に不動産バブルの膿を一気に取り除こうという決意を固めたというのだ。そのためには、海外で高まっている、中国の不動産セクター発の信用収縮の影響もいとわないということらしい。

不動産バブルに大胆にメスを入れば、中国の国民生活すべての根幹にかかわるというわけだ。

「長期間痛むよりも短期間の痛みのほうがましだ」

また、ロイター(10月18日付)「コラム:中国経済の失速、世界への影響長期化も」で、香港駐在のYawen Chen記者もこう伝えている。

「中国には『長痛不如短痛』(長期間痛みを味わうより一瞬の痛みのほうがまし)という言い回しがあるが、中国の影響力の大きさを踏まえると、第3四半期国内総生産(GDP)成長率の4.9%への想定以上の鈍化は一瞬の痛みでは済まず、世界中に影響が広がることになるだろう。

同時進行の複合的要因が景気の大幅減速を招いたわけだが、習近平国家主席が進める社会の格差や非効率な成長を是正するための政策は、長期的に中国への依存度が高い市場に響くとみられる。習主席は先週、共産党の理論誌『求是』に公表した論文で、格差が是正されない場合の悲惨な結末について警告し、固定資産税導入に向けた法案を進めるべきだと呼び掛けた。消費税の適用範囲拡大も求めた」

新型コロナウイルスの感染拡大によって、中国では現在、消費が冷え込んでいることが経済の減速を招いているが、それなのに購買力のある富裕層への課税をさらに強めようというわけだ。ロイターの通信のYawen Chen記者はこう結んでいる。

「これらの方針が実現すれば中国の年間2兆ドル(230兆円)にものぼる外国のモノとサービスへの需要がリスクにさらされることになる。ゴールドマン・サックスは住宅着工が30%減少すれば2022年の経済成長率を4%ポイント押し下げると試算する。

中国の建設業界や金属消費に影響を受けやすいチリやオーストラリアなどの貿易相手国は即座に痛みを受けることになる。賃金の低迷と増税の組み合わせは『ルイ・ヴィトン』を手掛ける仏LVMHといったファッション大手にも打撃を与える。株式相場が調整局面に入れば、2015年の世界同時株安のように、世界的に波及する可能性がある。そろそろ心の準備が必要なようだ」

ブルームバーグ通信(10月18日付)も「中国経済、7~9月に減速 -不動産低迷やエネルギー危機が打撃」で、悲観的な見通しをこう伝えた。

「中国の国家統計局が発表した7~9月国内総生産(GDP)は前年同期比4.9%増だったが、ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は5%増だった。中国政府による不動産市場の規制強化で建設活動が抑制されるとともに、不動産開発大手、中国恒大集団の債務危機が一段と深刻になり他のデベロッパーにも波及。不動産販売の不振を招いている。9月には電力が不足し、製造業は生産抑制や操業停止を余儀なくされた。

バンク・オブ・アメリカの大中華圏担当チーフエコノミスト、喬虹氏はブルームバーグとのインタビューで、『需要関連の投資はかなり弱く、電力不足による供給サイドへの影響も非常に深刻だ』と述べ、10~12月の成長率は3~4%に低下する公算が大きいと予想した」

「最も重要な不透明性は中国政府そのものだ」

チャイナリスクに見舞われる世界経済

ニューズウィーク日本版(10月16日付)「中国不動産バブルの危険度を、さらに増幅させる3つの『隠れたリスク』」(埋込リンク:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/10/3-282.php)で、ウエイ・シャンチン・コロンビア大学経営大学院教授(元アジア開発銀行チーフエコノミスト)は、恒大集団の破たんは金融システム全体を揺るがす恐れがあると述べている。

「中国恒大がデフォルトに陥った場合、中国経済に与える衝撃は33兆円(中国のGDPの2%)の損失どころではないだろう。3つの不透明性が、中国経済全体に与える影響を増幅する恐れがある。

第1の不透明性は、中国恒大と同じように借金頼みの成長を遂げてきた不動産開発業者への影響だ。金融機関は不動産業界全体の失速を懸念しており、それが貸し渋りにつながれば、不動産開発業者も資金繰りが悪化して、債務返済に窮する。それは中国の金融システム全体を揺さぶる恐れがある。

中国恒大が破たんすれば、鉄鋼やセメントなどの建築材料や、住宅機器のサプライヤーなども打撃を受け、自らの債務返済に行き詰まる恐れがある。幅広い業界で融資の焦げ付きが増えれば、金融機関の経営にも不安が生じる」

いったい、どのくらいの負債があるか不明な点も大きな危険材料だ。

「一方で、中国恒大はシャドーバンキング(銀行簿外での金融取引)も幅広く利用していた。その借り入れの一部は、本体の決算に含まれない関連会社に移し替えていたようだ。こうした簿外取引の規模やどのような管理がされていたかは不透明で、問題を肥大化させる恐れがある」

そして、ウエイ・シャンチン教授は、最も重要な不透明性は中国政府そのものだと指摘する。

「最も重要な不透明性は、中国恒大の問題が中国全体のシステム危機に発展した場合、政府が全面的な金融メルトダウンを阻止できるかどうかだ。対GDP比で見た中国の政府債務は約70%で、アメリカ(約133%)や日本(約256%)、フランス(約115%)と比べればずっと少ないから、政府が潜在的な危機に対処する余力は十分にある。中国人民銀行(中央銀行)も、信用収縮が起きた場合、市場に大量の流動性を供給するツールと能力を持つ。

だが問題は、中国当局が介入措置に前向きかどうかだ。中国恒大は国有企業ではないし、政府は格差解消運動『共同富裕』(みんなで豊かになろう)」を本格化している。そんななかで中国恒大を救済して、その創業者で大富豪である許家印も救うのでは市民に示しがつかない。政府は中国恒大の経営破たんに備えて、さまざまな余波を防ぐ緊急対策を用意している。その計画を公表すれば、政府の準備態勢と行動能力に対する不安を払拭して、市場のパニックに終止符を打つことができるはずだ」

と呼びかけるのだった。

中国で「格差是正」を解決するのは不可能

日本のエコノミストでも、危機的状況が迫っているとみる人が出ている。日本総合研究所上席主任研究員の三浦有史氏は、三井住友銀行のサイト「SMBC China Monthly」(10月18日付)の中に、「『共同富裕』を急ぐ習近平政権」というリポートを発表した。その中で、今回の中国経済の減速の背景には「格差是正」という構造的な問題を潜んでおり、解決は非常に困難だと指摘する。

中国人民銀行の家計調査によると、中国では資産の上位5分の1(上から20%)の保有財産は、下位5分の1(下から20%)の24倍もの格差がある。このため、習近平国家主席は、富裕層の富を、税や社会保障などの財政出動だけではなく、寄付や慈善活動によって中間・下位層に分配する政策を強権的に推し進めてきた。しかし、それが限界にきていると三浦有史氏は指摘するのだ。

「共同富裕を建前に、特定の企業や産業を対象に寄付や慈善活動を迫る、あるいは、収益構造を根本的に変える規制を打ち出すといった政策の恣意性が強まると、対象となった企業や産業に流入する資金は細る。動産、教育、ITの3産業は民営企業が牽引役となることで急成長を遂げ、GDPに占める割合は 2018 年に 13.9%と、2004 年から 3.8%ポイント上昇した。(寄付や慈善活動の)分配の強化は、この押し上げ効果を減殺する危険性がある」

デフォルトは起こるのか?

「富裕層」として習近平氏に目をつけられた「産業」に、高い診療報酬が問題視される医療が加わるとみられている。三浦有史氏はこう続ける。

「医療を加えると GDPの16.1%となり、そこに不動産業と関係の深い建設業を加えれば23.2%に達する。習近平政権は、共同富裕に至る過程の痛みを覚悟しているようだが、国内だけでなく国外の投資家も委縮させることになれば、中国経済に想定を上回る下押し圧力がかかる。

不動産、教育、医療にかかわる支出が負担となり、所得水準が上昇したほどには生活の質が上がらないと感じる中国国民が増えたのは間違いない。しかし、富裕層でなければそれらにアクセスできない仕組みをつくったのは中国政府自身である。共同富裕は、寄付や慈善ではなく、税、土地、教育、医療、社会 保障等の関係する制度の抜本的な改革により、中間層が生活の質の向上を実感できる仕組みをつくることで実現を目指す必要がある」

と訴えるのだった。

習近平氏は「第2の文化大革命」を狙っている?

習近平主席は、いったい何を目指しているのか――。

中国共産党政治局会議は10月18日、11月に結党100年の歴史会議を開き、「歴史決議」を審議すると決めた。中国共産党が「歴史決議」を行うのは過去2回しかない。1回目は1945年、建国の父・毛沢東が過去の政治・軍事の教訓をまとめた。2回目は1981年、改革開放路線を進めた鄧小平が、毛沢東が発動した文化大革命を否定した。3回目の来年は習氏の「新時代」の路線を発表するとみられている。

習近平氏は、第2の毛沢東を夢見て「第2文化大革命」を目指しているのではないか、と指摘するのは中島精也・福井県立大学客員教授だ。Webコラム「世界経済評論IMPACT」(10月18日付)の中の「習近平思想は第2次文化大革命」で、こう述べている。

「来年の中国共産党大会で総書記3期目を目指す習近平の露骨な権力集中の動きが顕著だ。習近平が唱える『中国の夢』とは『中華民族の偉大な復興』であるが、個人的な『習近平の夢』は『建国の父』毛沢東と同等の絶対的地位に上り詰めることである。習近平が特に力を入れているのが思想教育の徹底であり、『習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想』を中華民族の偉大な復興に向けた行動指針と位置づけている。

新時代の矛盾として格差、政治腐敗、風紀の乱れに直面している。これら矛盾解消のために行き過ぎた市場経済、即ち鄧小平の『改革開放』路線を否定し、社会主義国家建設の初心に立ち返ることを習近平は重視している。小中学校の推薦図書から西洋思想を崇拝する書籍が排除され,アメリカ資本主義の象徴とも言えるIT長者ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズの伝記本が対象となっている。

習近平思想の中で愛国心教育や個人崇拝と並んで注目されるのが『共同富裕』の主張である。昨年11月アリババ傘下のアントグループが香港と上海で予定して上場が突然、当局より停止命令を受けた。アリババ創業者のジャック・マー氏が中国の金融システムは時代遅れと当局批判を行なったことへの報復とみられるが、IT企業の隆盛で格差が広がったことを重視して,反社会主義的な大企業の活動を規制する方向に舵を切った」

こうした習氏の姿勢と性格が中島精也教授には、「毛沢東の文化大革命を彷彿させるものがある」という。

本当に「第2の文化大革命」が起これば、「リーマン・ショック」の再来どころではないが......。しかし、中島精也教授はこう付け加えることは忘れない。

「ただし、王岐山国家副主席や劉鶴副首相らの習近平側近は習近平治世のもとでは第2次文化大革命を支える役割を果たしているが、文革の危うさも熟知しており、習近平の暴走には一定のブレーキ役を果たすことも期待される。よって、文革のような無秩序な社会混乱に進展する可能性は小さく、習近平の第2次文革はある程度制御された形で進行するものと予想される」

ひとまずは、最悪の事態は避けられそうということか。

(福田和郎)