【大学野球】1浪して慶大入学も右肘手術 4年秋に神宮デビューの苦労人が挙げた勝ち星の“意味”

慶大・笠井建吾【写真:小林靖】

慶大の4年生・笠井がリーグ戦初勝利「ホッとしています」

肌寒い空気の流れる神宮球場で、嬉しい初勝利を挙げた男がいる。東京六大学野球秋季リーグが19日に行われ、慶大が法大に11-2で勝利した。今季リーグ戦デビューを果たした4年生の笠井建吾投手は、この日が3試合目のマウンド。5回から2番手で登板し、2イニングを投げ2安打無失点。“苦労人”の4年生に初白星がついた。

185センチの長身から140キロ中盤~後半の直球を投げ込む。5回には1死から連打を浴びたが、続く打者を併殺に打ち取った。「(白星は)意識していませんでしたが、ホッとしています」と喜んだ。

慶大に憧れ、1浪の末に入学。1年時には右肘のトミー・ジョン手術も経験した。投げられるようになったのは2年の夏以降。「一般入試で入って、とにかく神宮で投げられればいいな、勝てればいいなと思ってやってきた」。地道な努力で、神宮で白星を挙げるまで上りつめた。

堀井哲也監督は「下級生にとってもいい励みになります」と、右腕の活躍を喜ぶ。「高校時代実績がない選手もたくさんいますんで、1年、2年で基礎的なこと、体力をつくって、3年、4年でなんとか神宮で。笠井のように勝利できるような選手になるというのも、うちの選手の目標。そういういう意味ではよくやってくれました」と労った。

東京六大学の中で、スポーツ推薦がないのは慶大と東大だけ。AO入試があるが、合格するとは限らない。それでも、一般入試を突破してでも野球をやりたいという選手たちの思いが、チームの強さの源でもある。

笠井も「自分が努力している姿が、いい影響を与えているなら、自分がやってきたことに何らかの意味はあるのかなと思います」と頷く。慶大は7試合を終え、負けなしの首位。今季は変則日程のため、5日間で4試合を行う週もある。投手起用が難しくなる中で、遅咲きの4年生がチームを支えている。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

© 株式会社Creative2