衆院選スタート

 親が言う。生意気を言うな、一人で大きくなったつもりか、誰のおかげで生まれてきたのか考えてみろ。子どもが言い返す。生んでくれと頼んだ覚えはない…そんな「売り言葉に買い言葉」の典型のようなやり取りをふっと想像する▲「親ガチャ」という新語がある。子どもは親を選べない、けれど、親の地位や経済力で人生の“勝ち負け”は半ば決まってしまう…そんな社会の現実を諦め半分にいう若者言葉らしい。「ガチャ」はお金を入れてハンドルをひねるとカプセル入りの玩具が出てくるあの装置、中身は運任せだ▲バカを言ってはいけない、どんな家に生まれるかを選べないのはいつの時代も同じ、誰だってそこは受け入れて、自分の手で未来を切り開いていくのだ、第一、人生は勝ち負けではない…と言葉で書くのはたやすいけれど▲「格差」が社会のあちこちで顕在化し、再生産されつつある-それは否定しようのない今の日本の姿だ。でも「自助・共助・公助」を必ずこの順番でしか言わない政治は「あなたの不幸せの原因はあなたの努力不足」と言わんばかり▲若い世代が、変化や努力の可能性を信じられずにいる世の中はとても息苦しい。そんな社会は先が知れている。頑張ればきっと-その実感を少しずつでも取り戻したい▲何もかも政治だけが悪いとは言わない。だが、政治が果たす役割もきっとある。衆院選が始まった。(智)

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