「チャンス逸せず朝鮮敵視から脱却を」国際シンポでの提言

対話再開の条件と膠着打開の方法

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「いま、朝鮮は対話の条件が敵対政策の撤回であることをより明確に公言している」「平壌のメッセージを真摯に受け止め行動することで膠着を打開すべきだ」。

「東アジアの平和と朝鮮半島の自主的統一をめざす10・16国際シンポジウム」(16日、東京・連合会館)での発言だ。

「東アジアの平和と朝鮮半島の自主的統一をめざす10・16国際シンポジウム」(C)朝鮮新報

 シンポジウムでは、元外務省地域政策課長の浅井基文氏が「米朝、南北関係打開・前進の可能性と日朝関係」について、朝鮮新報の金志永編集局長が「朝鮮の平和構築努力と対話のための条件」について、オンラインで米国から前ハーバード大学コリア学研究所研究員のシモン・チョン博士が「バイデン政権の朝鮮半島政策の展望と問題点」について、南朝鮮から仁済大学統一学部の金昌鉉教授が「文在寅政府への評価と展望、統一運動陣営の課題」について基調報告し、デイスカッションが行われた。

 各氏の発言を通じて朝鮮の原則的立場と、朝米交渉再開のためには米国側からの対朝鮮敵視政策転換を示す具体的な政策提案、行動が先決であるとの認識が共有された。

 南北関係については、残り任期わずかの文在寅政権が南北通信連絡線復元で得た最後のチャンスを逸することなく、対米関係で自主性を貫徹できるか否かにかかっているとの展望が示された。

 各氏の発言を紹介する。

 情勢打開は米韓の行動次第/浅井基文

 日本外務省で地域政策課長などを務めた国際政治学者の浅井氏は、朝鮮半島の非核化および平和と安定の実現という課題解決のカギを握るのは米国と朝鮮であるとの認識を示したうえで、米国が見落としている二つの点について①朝鮮の目標は国家存立の確保であり、その目標実現を確実に保証するのが米国との敵対関係終了だということ、核武装は目的実現の手段であること②中ロは朝鮮半島非核化を追求しており、両国の最大関心が朝鮮の核保有が日韓の核武装への口実となり核拡散の連鎖が起こること―だと指摘。これらを踏まえて米国が具体的な政策を示さない限り交渉前進の可能性は乏しいと主張した。

南北関係をめぐり最近、朝鮮が通信連絡線を復元した措置について、文在寅政権が米政権に対して独自性を持って行動するか、バイデン政権が南北交流にいかに臨むかの判断材料にするという判断と、南の大統領選に対する考慮に基づいているとし、つまり朝鮮は対米、対南関係において当面の間は従来とは逆の「南北関係=主、米朝関係=従」に力点を換えて様子を見るという立場だと分析。南北関係には新たな展開の可能性が生まれているが、これを生かせるかどうかは文政権が対米自主性を貫徹できるか、バイデン政権が敵対政策を清算するかに大きくかかっていると結論づけた。

最後に日朝関係について、新政権においても日本の対朝鮮、対朝鮮半島政策は変わらないと断言。バイデン政権が対朝鮮政策に関して「米日韓」の協調に力点を置くのは不吉な兆候だとし、朝鮮半島情勢の解決をめざすうえで日本の妨害行為をいかにして排除するかが今後の国際的課題の一つとなると主張した。

 米の対朝鮮半島政策の問題点/シモン・チョン

 前ハーバード大学コリア学研究所研究員のシモン・チョン博士はまず、米国の対朝鮮半島政策に対する米国、英国、ニュージーランドの学者、専門家らの見解が、▼具体的な政策がなく、▼対中政策を優先する一方で朝鮮半島には無関心で、▼朝鮮半島の軍事的緊張維持が米国の利益にかなっていると見なしており、▼対朝鮮経済制裁を維持し、▼オバマ政権の戦略的忍耐に回帰している―との評価で一致していると紹介。

そのうえで朝米対話再開の可能性について二つのシナリオを提示した。一つ目に、朝鮮の核保有を当面は認め段階的に非核化を進めることだと指摘。根拠として、政権内から戦略的忍耐政策に対する反論浮上の可能性、民主党系専門家らが核問題の段階的アプローチを支持していることなどを挙げた。二つ目に、バイデン政権の対中政策により米中緊張が先鋭化すれば、中ロによる米国への対抗が強まり、国連安保理や対朝鮮政策に変数として作用すると分析した。

バイデン政権の対朝鮮政策の問題点の一つが、朝鮮半島と北東アジアにおける封じ込め政策の現状維持を追求していることだと指摘。その目的は、核不拡散の国際レジームの守護と東北アジアにおける覇権維持だとし、朝鮮の核保有はまさに米国の帝国主義的政策に対する真正面からの挑戦であり、そのため米国は朝鮮の非核化に執着していると主張した。

総じて米国の朝鮮半島政策は、分断された南北の敵対関係を維持させる封じ込め政策だとしながら、米国の朝鮮に対する長期的な孤立政策と韓国に対する圧迫を阻止しなければならず、南北の団結と自主的な外交が求められると説いた。

 文政権の失敗とその要因/金昌鉉

 仁済大学統一学部の金昌鉉教授は、文政権の平和プロセスが失敗した根本要因について2点で整理した。第一に、政策路線上の問題を指摘。朝鮮半島問題の解決のためには戦争構造を解体し平和構造を定着させると同時に敵対的な南北関係を統一をめざす協力関係に発展させるという二つの課題が提起されるが、文大統領は前者だけを政策の中心に据えたため、米国の妨害の中で南北間では何もできなくなってしまったと指摘した。第二に、哲学と洞察力の不足を挙げた。韓米同盟よりも民族を優先する哲学と見識がなく、首脳会談をはじめとする南北関係の事柄を歴史的な課題ではなく、政治イベント程度にしか考えていなかったのではないかと疑問を呈した。

文政権の失敗を通じて今後誕生する新政権が追求すべきビジョンは、①外国勢力の干渉と統制を克服し、自主的に平和と繁栄の統一へと進む目標の明確化②米中対立など覇権角逐の犠牲にならない非同盟自主外交の展開③東北アジアの新冷戦秩序からの脱却、共同繁栄の時代的任務の遂行―だと持論を展開した。

統一運動陣営の課題としては、まず北側について真摯に学び研究することだと指摘。北側の主張は単純明快で終始一貫しているとし、北側の言行について意図や底意を探るよりもあるがまま見るべきだとした。また、通信連絡線が再開通したことにより対話が再開されるものと期待感で眺めているだけではなく、積極的にたたかうべきだと主張。米国の対北敵対政策撤回と制裁緩和、韓米合同軍事演習の中断、国家保安法廃止など、広範な運動を展開していくべきだと呼びかけた。

 終戦宣言めぐる朝鮮の対応/金志永

 朝鮮新報の金志永編集局長は、多くの場合2018年の延長線上で朝鮮の行動を分析評価しているが、朝鮮では5年スパンで行動計画を立案、実行しており、朝鮮労働党第8回大会(1月)では新たな政策、目標が打ち出されたと指摘。それに従い対米、対南アプローチも変化したとしながら、朝鮮の立場に基づいて情勢と展望を分析した。

終戦宣言をめぐって対米、対南でそれぞれ異なる朝鮮の対応に着目し、その内容を紹介。南に対しては公正性と相互尊重が維持されれば終戦宣言はもちろん首脳会談を含む諸問題も解決できると踏み込んだ一方で、米国に対しては、18年には朝鮮も終戦宣言の必要性と意義に共感したが、現在朝鮮は終戦宣言が「朝鮮半島情勢の安定にまったく役に立たず、米国の敵視政策を隠ぺいするための煙幕に利用されかねない」(朝鮮外務省次官)と判断していると指摘した。

このような朝鮮の対応が示すように北南、米国の関係性は2018年と同じではなく、朝米交渉の枠組みは「非核化措置」対「制裁解除」ではなく、「敵視撤回」対「交渉再開」に変化したとし、米国が敵視政策を放棄しなければ交渉に応じないという朝鮮の確固たる立場を改めて示した。そのうえで、非核化の議論が止まっても北南対話は再開できると指摘。北南対話においては民族の諸問題を議論し、核問題に関する米国の主張を代弁する必要はないとし、米国式二重基準を排し公正性と相互尊重の姿勢を保てば北南間の議論は深まり多くの問題を解決できると主張した。