韓国農業紙「TPP加盟は韓国農家に莫大な打撃」「後発加盟国は強力な市場解放要求される」 経済紙は加盟支持

日本などが主導するCPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)をめぐり、韓国でも加盟への声が高まっている。韓国政府は今月中に加盟するかどうかを決めると明らかにしているが、加盟を支持する経済紙と、警戒する農業紙とで対照的な姿をみせている。

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韓国経済新聞は19日、「状況が切迫している」とし「CPTPP加盟を急がなければならない」と主張した。米国の復帰が予想され、中国や台湾、英国まで加盟を申請したなか、これに遅れてはならないと同紙は指摘する。

同紙はCPTPPが当初は米オバマ政権が主導し中国に対抗する構図で交渉が進められたものの、トランプ政権がこれを撤回し、日本やカナダ、豪州の主導で2018年末に発足したが、ここに来て大きく「化けている」ことを説明し、「CPTPPをめぐる国際政治の力学関係が一寸先を見ることができないほど不透明な実情である」であると伝えた。

韓国はCPTPP加盟国のうち、日本とメキシコを除いてFTAを締結している状態であり、日本とはRCEP(域内包括的経済連携協定)を通じて相互に83%レベル(品目数ベース)の市場開放をしたのに留まっていることや、メキシコとも相乗効果が高いことか、「韓国経済に多くの助けをもたらす相手だ」とし、「このような状況において、政府は既存加盟国との緊密な協力し、パイが広がるCPTPPに加入することで、東アジアの通商秩序確立に参加しなければならない」と強調した。

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一方で、韓国メディア「農漁民新聞」は19日、既に農民たちが、これまでのFTAで多くの困難を経験したとし、CPTPPに対しても「農畜産業界の懸念が高まっている」と指摘した。

農漁民新聞は、CPTPPの農業自由率が高いことに注目。同紙は「韓国がCPTPP 9加盟国と締結したFTAの農食品市場の自由化率は平均78.4%だが、CPTPP加盟国の平均関税撤廃率は96.3%に達している」とし、「日本の場合、CPTPP締結過程で米(こめ)の関税を維持する代わりに、豪州に8400トンの米の無関税割当を提供した」と説明し、自国米市場に更なる開放圧力が生じることを懸念した。

同紙は、CPTPPには他のFTAには無いルールが存在し、「既存のWTOルールよりも大幅に強化された条項が反映されることで農畜産物の輸出国に有利である」と指摘。その最も代表的な規定として同紙はSPS(動植物衛生検疫)規定を挙げ、「輸入国の権限を大幅に制限しており、農畜産業への莫大な打撃が避けられないという見通しが出ている」と警戒した。

同紙は、農民団体の関係者による「RCEPに続きCPTPPという超大型FTAによって農業部門の莫大な被害が予想される」というコメント紹介。FTAの影響で廃業に追い込まれた農家を援制する制度などが昨年終了したことや、それ以外の支援も2025年に終了することを挙げ、「政府の支援対策はむしろ縮小されている状況」であると、「特に後発走者として(CPTPPに)参加する韓国の場合、既存の加盟国の同意を得なければならず、そのためには強力な市場開放要求に対応するしかないだろうが、結局はまた農業部門の一方的犠牲が避けられないのではないか」と批判している。

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