【世界体操】内村航平「良かった部分は1個もない」けど…有観客の地元開催に万感「これだよな」

華麗な演技をみせる内村(写真:アフロスポーツ)

体操の世界選手権(20日、北九州市立総合体育館)の男子予選が行われ、ロンドン&リオ五輪個人総合金メダルで東京五輪代表の内村航平(32=ジョイカル)が種目別の鉄棒で14・300点をマーク。演技終了時点で暫定3位として、決勝進出の可能性を残した。

地元の大声援を浴びて登場したキング。すでに5種目を終えた橋本大輝(順大)、萱和磨(セントラルスポーツ)とともに最終種目の鉄棒に臨むと、冒頭のH難度のブレトシュナイダー(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)をはじめカッシーナ、コールマンと次々に成功。最後の着地は少し動いたが、きっちりと締めくくった。

東京五輪では予選でまさかの落下。信じられない光景に日本中が言葉を失ったが、この日は笑顔がはじけた。得点は15点を下回ったものの、観客にサイン入りTシャツを投げ入れるパフォーマンスを見せるなど大満足の様子だった。

試合後、キングは「良かった部分は正直、1個もなくて」と第一声。演技については「離れ技も近かったし、アドラー系の技も倒立から外れているし。意地を見せたっていうか、どうなっても最後の最後まで落ちないでやり切るっていうのが演技に出せたってだけです」と振り返った。

しかし、それ以上に観客の声援が心を打った。

「もう、これだよなっていう思い。シンプルに〝これが本当に試合だな〟っていう。世界大会レベルになると、これだけお客さんが入っていないとやってる方も盛り上がらない。今回は生まれ故郷でもあるので、拍手に温かみをすごく感じたし、やっと本物の世界大会になったなっていう感じがありますね」

数々のタイトルを手にし、世界を頂点に立った男。誰よりも完璧な演技にこだわってきたが、今回ばかりは「結果はホントにどうでもいいなって思いました」と本音をのぞかせた。

「しっかり演技をやる、そして盛り上がってもらう、僕たちもしっかり返さなきゃいけない。体操っていうよりか、これがスポーツのあるべき姿だとすごく感じました。お客さんがいる中でこういう舞台を用意していただいて、演技できるっていうことが、これだけありがたいことだったんだなって、実際にやってすごく感じました。ぶっちゃけ、それだけで良かったって感じはありました」

苦難を乗り越え、新境地にたどり着いた。種目別決勝でも感謝の思いを忘れず、鉄棒と向き合う。

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