「指導法がアップデートされていない」 全国V3度の名将が憂う少年野球の現実

京葉ボーイズの関口勝己監督【写真:本人提供】

全国屈指の強豪、京葉ボーイズの関口勝己監督は最新の野球理論を追求

千葉で活動する京葉ボーイズは2009年に創部し、これまでに3度の全国制覇を果たし、プロ野球選手も輩出している。少年野球指導のヒントになる考え方を紹介する連載「ひきだすヒミツ」で、チームを率いる関口勝己監督の指導理念などをお届けします。関口監督の第1回は社会人野球での経験に基づいた指導法について。「頑迷な指導法が子どもの成長を妨げる」と少年野球の指導者へ警鐘を鳴らす。

◇◇◇◇◇◇◇

少年野球の指導者を見ていて思うのは、自分が教えてもらったこと、自分がやってきたことをそのまま教えている人が多いということです。

野球の技術、指導法は日々、進化しています。かつてはダウンスイングでボールを上から叩き、ゴロを打つというのがバッティングの基本とされていましたが、現在では投球に対して強く正確に、レベルで(平行に)バットを入れて角度のついたフライ、ライナーを打つのが常識とされています。

ただ、いまだにダウンスイングを推奨する指導者は少なくありません。科学的な裏付けをもとに基本や常識が変化しているのに、「俺はこうやってきたんだからこうやれ」と指導法がアップデートされず、感覚的な指導をしているのでしょう。

そういった頑迷な指導法が結果的に子どもたちの上達、成長を阻む要因になっているように思えます。将来のある子どもたちを指導する少年野球の指導者こそ、最新の野球理論を勉強して、良いものはどんどん取り入れていく柔軟な姿勢が求められるのではないかと考えます。

少年野球においては強豪といわれるチームほど旧態依然とした指導をしていることが多いです。しかも高校、大学である程度の野球経験がある指導者ほど、経験に基づいた感覚的な指導をしているように思えます。私は社会人野球でプレーしたことは非常に良い経験だったと思っています。

社会人野球の経験をボーイズチームに注入

大学を卒業し、社会人野球のNTT関東(現・NTT東日本)野球部に入部したのは1988年のことです。プロ野球がまだ「走れ! 走れ!」なんてやっていた頃ですが、チームには専属のトレーナーがいて、大会前、大会中、オフシーズンと時期に合わせたトレーニングメニューが確立されており、器具を使ったウエートトレーニングも取り入れていました。

野球に適した筋肉をつけるにはどういうトレーニングをすればいいのか、どういう食事を摂ればいいのかなどの指導を受けました。学生時代は投げて、打って、捕ってっていう単純な野球しかしてこなかったので、目を見開かれる思いでした。

当時の社会人野球は金属バットを使用していて、国際大会ではキューバやアメリカのようなパワー勝負の野球を相手にしていましたから、世界基準の最新の野球理論を積極的に取り入れる土壌がありました。そして、その文化がずっと受け継がれている。私は最先端の野球をやっているのはプロではなく社会人野球だと思っています。

京葉ボーイズでも、社会人野球と同じ野球を教えています。もちろん、中学生にもわかるように、かみ砕いて教えますけど、ベースは社会人野球と同じです。子ども達にもいいます。「君たちに教えているのは、社会人と同じ最先端の野球なんだぞ」って。そんなボーイズのチームは他にはないでしょうね。

○プロフィール
関口勝己(せきぐち・かつみ) 1965年4月13日生まれ、栃木県出身。小山高、明大を経て1988年NTTに入社。NTT関東(現NTT東日本)野球部では95年までの現役9年間で都市対抗野球大会に6回出場、社会人日本選手権に2回出場。91年には日本代表の対キューバ戦初勝利のメンバーとなる。2003年から08年までNTT東日本でコーチを務め、09年から京葉ボーイズの指導にあたる。これまでにボーイズ全国大会3度優勝、19年には春、夏連覇を果たした。(石川哲也 / Tetsuya Ishikawa)

プロ15年間で掴んだフォームを伝授 元楽天右腕が考えるボールに力を伝える方法

「消化しないと自分は変わらない」元巨人・鈴木尚広氏が説く失敗との向き合い方

保護者も知りたい、プロのスカウトがチェックする選手の仕草とは…

© 株式会社Creative2