「もう1度登るか、さらに沈むか」 西武・辻監督が期待する来季巻き返しへの光

西武・辻発彦監督【写真:荒川祐史】

田村は9月24日ロッテ戦でのプロ初勝利に続き2度目のお立ち台

■西武 7ー5 日本ハム(20日・メットライフ)

西武は20日、メットライフドームで今季本拠地最終戦に臨み、日本ハムに7-5で競り勝った。前夜に今季初めて最下位へ転落していたが、1日で日本ハムを抜き返し5位浮上。今季を最下位で終えるようなことがあれば、1979年以来42年ぶりの屈辱となる。残るビジターでの2試合に、獅子の意地をかける。

お立ち台に上がったのは、いぶし銀の輝きを放つ中堅の2人だった。5年目・27歳の田村伊知郎投手と、7年目・25歳の山田遥楓内野手である。

田村は2点リードの9回、守護神の平良海馬投手と通算144セーブの実績を持つ増田達至投手がそろって戦列を離れている中、代役のクローザーとしてマウンドに上がり、3者凡退で締めプロ初セーブをマークした。

これまでは中継ぎの地味な役回りがほとんどだったが、今年9月24日のロッテ戦で4回から2イニングを1失点でしのぐと、通算66試合目の登板にしてプロ初勝利が転がり込んだ。その際、お立ち台で歓喜の涙を流した。

「正直言って、こんなに早く2回目のヒーローインタビューに立てるとは思っていなかった。ちょっとびっくりもあるんですけど、本当にうれしいです」と夢心地。今季は21試合に登板し防御率2.93で、昨季までとは一味違う安定感を示している。

一方、打のヒーローの山田は、今月17日の楽天戦で自打球を受け負傷した源田壮亮内野手に代わり、3試合連続でスタメン出場。1点を追う2回2死満塁の第1打席に向かう時点で、今季打率は.200に過ぎなかったが、日本ハム先発左腕・アーリンの初球のストレートを一閃。左翼フェンスを直撃する走者一掃の3点二塁打となり、一気に試合をひっくり返した。

「獅子男(ししお)~!」 山田はお立ち台でパフォーマンス披露

「最近……最近というより、基本的に打てないので、積極的に真っすぐが来たら打ってやろうと思って打席に入りました」と語り、「正直言って完璧な打球でした。あれで(スタンドに)入らないということは、もう入らないです。スミマセン」と苦笑した。「その後の3打席の内容(四球、投ゴロ、空振り三振)を見ると、(殊勲打は)“交通事故”だった気もするが、あそこで打ったのは大したもの。気持ちが出たね」と、ジョークを交えて称えたのは辻発彦監督。確かにトータルでの打率は低いが、チャンスでは今季得点圏打率.351(37打数13安打18打点)の勝負強さを見せている。

もともと、山田の持ち味は堅実な遊撃守備と、守備中に1球1球「ストライク!」と声を張り上げる元気の良さにある。この日のお立ち台では、「獅子男(ししお)~!」と叫んだ。本塁打を放った際のパフォーマンスとして考案したものだが、プロ入り後1軍で放った本塁打は2018年の1本だけ。なかなか披露の機会に恵まれていなかったのだ。

今季の西武は、開幕直後から故障やコロナ禍で主力が相次いで戦列を離れ、なかなかベストメンバーを組めなかった。チームとしては5年ぶり、辻監督の下では初めてのBクラスが確定している。

試合後に行われた本拠地最終戦セレモニーで、辻監督は「1度落ちたチームがもう1度のぼっていけるか、さらに沈むかは、来年にかかっている」と危機感をあらわにし、「今年はいろいろなアクシデントに見舞われた中で、これを機会にと若い選手たちが躍進した。まだまだレギュラーには程遠いですが、経験を積んだ若い選手たちが来季から埼玉西武ライオンズの力になってくれると思います」と声を張り上げた。田村、山田のような、地道にキャリアを重ねてきた選手たちが脚光を浴びたシーズンでもあった。

来季の巻き返しを誓う前に、最下位を回避する戦いが残っている。21日現在、5位・西武と最下位・日本ハムの差はわずか0.5ゲーム。残り試合は西武が2、日本ハムが6で、そのうち1試合が26日の直接対決(札幌ドーム)だ。果たして、どんな結末が待っているか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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