2021衆院選ながさき コロナ対策 ばらまきせず困窮者に

 新型コロナウイルス感染症が全国に広がり始めた昨春、東京都の小池百合子知事が出ているニュースを見ながら、長崎市大黒町でカラオケ店を営む貞住敏行(48)は思った。「目の敵だな」
 嫌な予感は的中。程なくして地元自治体からもカラオケ店が「感染の温床」としてやり玉に挙げられるようになった。感染防止対策を徹底したが、客足は止まった。売り上げがわずか600円の日もあった。
 「雇用を守りたい」と飲食のデリバリー事業を新たに始めた。コロナ禍に見舞われて1年半、休業手当に使った費用を国が支給する雇用調整助成金を使ったのは3カ月だけ。「ピンチをチャンスに変えたい」と踏ん張る。
 借入金について、金融機関が元金の支払い猶予などで協力してくれたのはありがたかった。「政治は何もやっていない」という批判も聞くが、政治が動いた証しだと思う。
 ただ、衆院選の各党の公約には首をかしげてしまう部分もある。金額や名目は違えど人気取りの“ばらまき”に見える現金給付策が並ぶ。「もがきながらも頑張る人、本当に困っている人に手を差し伸べてくれるのだろうか」
 今年、感染流行の波が3回も来た。そのたびに経済活動の停滞と再開を繰り返している。「例えば経口薬で重症化を防げれば、経済活動を止めずに済むのではないか。中長期的な視点で経済を立て直してほしい」と切実に願う。

 流行「第5波」で、県内全域に独自の緊急事態宣言が出されていた8月下旬。長崎市の60代女性は、勤め先で複数の感染者が出たため、PCR検査を受けた。結果は「想定外」の陽性。20日ほど前、2回目のコロナワクチン接種を終えたばかりだったからだ。ブレークスルー感染。「まさか自分が…」と落ち込んだ。
 軽症の診断だったが、医師の判断で入院。しかし、3日目に症状が急変し、39度台の熱が出て肺炎になった。「インフルエンザの一番つらいときが何日も続く感じだった」と振り返る。
 感染拡大防止にはワクチン接種だけでなく定期的なPCR検査が必要。感染の経験から強くそう思う。ただ、自費での検査は1万5千~3万円程度と高額。「もっと安くなれば県外への旅行や出張の度に受ける人が増えるのに」
 感染の波はまたきっと来る。国民の「命」を守るために、政治はどう動くのか。注視して「一票を託す」つもりだ。=文中敬称略=

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 19日に公示された衆院選。コロナ対策や格差社会の是正、安全保障問題など今回の選挙で問われる課題は少なくない。県内の現場を取材した。

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