老後資金1700万円の60歳夫婦。このままだと足らない?今から対策して間に合う?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、59歳、パートの女性。老後資金は夫婦合わせて1,700万円ほど。60歳の夫は65歳まで働くつもりですが、今のままでは老後資金が足らなくなるのではと心配しています。今から対策して間に合うでしょうか? FPの横山光昭氏がお答えします。

退職金が2,000万円出ましたが、各ローンの返済や外壁の修理をしたところ半分ほど使ってしまい、残る老後資金は退職金の残り1,000万円とこれまでの貯金700万円になってしまいました。

貯金を減らさないために、夫は65歳まで働く予定ですが、年を重ねるにつれ、だんだんと収入は減る見込みのようですから、徐々に赤字はひどくなっていくと思えます。今のままでは老後資金が足りないのではないかと心配です。

家計のほうは住居費の支払いはないものの、毎月の収支は赤字です。私もパートをしていますが、すっかり体力が落ちてしまい、今以上に仕事量を増やすのが難しいため、増収も難しいと思います。

できれば老後はゆったりと過ごしたいのですが、今のままでそれが可能でしょうか。

【相談者プロフィール】

・女性、59歳、パート

・同居の家族について:夫、60歳、再雇用

・その他の家族について:独立した息子2人(32歳、29歳)

・毎月の手取り収入(合計収入22万1000円)

妻/月収4万3,000円

夫/月収14万4,000円、高齢者雇用継続給付金3万4,000円

・年間ボーナス:約80万円

・貯金: 1,700万円(退職金を含む)

・毎月の支出の目安:26万6,000円

【毎月の支出の内訳】

・食費(外食含む):7万4,000円

・水道光熱費(電気・水道):1万9,000円

・通信費(スマホ3台・ネット回線、次男分含む):2万4,000円

・生命保険料:4万2,000円

・日用品代:9,000円

・医療費:4,000円

・交通費:3,000円

・被服費:1万円

・交際費:1万3,000円

・娯楽費:8,000円

・こづかい:4万円

・その他:2万円


横山:老後資金が1,700万円。引き締めていかないと、老後資金は先細りしていきそうです。今はまだ60歳、収入を増やすことを考えてもよいかもしれません。対策を考えていきましょう。

ボーナスがなくなることがあれば厳しくなる

現在、毎月4万5,000円前後の赤字になっています。1年間では、4万5,000円×12か月で、54万円です。ボーナスのほとんどが、赤字補てんに使われている状況です。これからだんだんと収入は減っていく見込みのようですし、ボーナスにはあまり期待できないかもしれません。もし、ボーナスが出ない場合、年間赤字の54万円は、貯金から出していかなくてはいけません。65歳までの5年間で、270万円の補てんが必要な計算です。

現状のままだと2610万円の老後資金が必要

年金はいくらほど支給される見込みでしょうか。厚生労働省の「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和元年度の平均受給額は老齢厚生年金で月額14万6,162円、老齢基礎年金で月額5万6,049円です。ご夫婦の加入状況が分かりませんが、ご夫婦の年金受給額もこの平均程度であり、かつご相談者はずっと夫の扶養の範囲で働いていたとすると、65歳以降受け取る年金額は約20万円ほどと予想できます。

実際の金額は、お手元の「ねんきん定期便」などでご確認いただきたいのですが、65歳以降はさらに2万円ほど赤字が進む可能性があるということです。そうなると、毎月の赤字は6万5,000円ほど。人生100年時代を考え、65歳から95歳の30年間で不足する生活費を計算してみると、2340万円にもなります。60歳からの不足額270万円を加えると、今の暮らし方のままでは2,610万円の生活資金が必要だということになるのです。

現状の貯金額1,700万円では、到底足りない金額です。では、ここからどのように生活を立て直していくとよいでしょうか。

今のうちにできる見直しは?

まず、今できることは、老後資金を増やすこと。働いて収入があるのは今のうちですから、今のうちにできることをしておきましょう。

老後資金を増やすには、まず、収入の中で生活できるようにすることが大切です。ある程度の収入があり、住居費、教育費の負担がない状況ですから、あまりお金を掛けなくとも生活は成り立つはずです。ですが、無理に支出を絞れと言いたいのではありません。生きる楽しみやこだわっている部分の支出は大切にし、あまり必要ではない支出を絞る。まずはここから取り組みます。

食費は楽しみの一つですが、無駄にしている食材はないか、外食が多すぎないか、振り返ってみましょう。スマホ代は、次男の分はご自分で支払ってもらうようにするとよいでしょう。加えて、スマホの使い方によっては、格安プランに変更しても良いかもしれません。通信業者から見直し、ご自身に最適なプランに変更しましょう。

お子さんが独立した後、生命保険は見直したでしょうか。高額な死亡保障はもう必要ありませんので、不要な保障がないか見直しをすると、支出を下げられるかもしれません。日用品、被服費、交際費も、本当に必要な支出かどうか、吟味しましょう。

月2万円補填くらいまで改善できれば見通しは明るい

全体的に少しずつ見直して、今の収入の範囲に近づくことができれば、将来必要な老後資金は先の計算よりもグッと減るでしょう。もし、再雇用中は補てんが不要で、年金生活開始後は2万円程度の補てんができれば良いというほどまで家計が改善できると、必要な老後の生活費は720万円ほどになります。かなり大きな違いです。

投資で目減りを防ぎ、プラスアルファの増収も

貯金の1,700万円は、貯金で持っているとインフレの影響を受け、95歳までの30年以上の間に、価値が下がってしまう可能性があります。お金の価値が目減りしてしまうのです。それを防ぐために、リスクが少ないインデックスファンド等での投資をすることも良いと思います。60歳はまだお若いですし、2022年5月からはiDeCoを始めることが可能な年齢でもあります。さらなる将来へ向けて、抵抗がなければ投資を取り入れることも検討してみましょう。

この年代で始める投資は、まとまったお金を投じる投資よりも、毎月コツコツ積み立てる投資が向いています。いくらくらいをどのような特徴の商品に投資するとよいかは、勉強しないとわからないことですが、学ぶ方法はたくさんあります。書籍を読むのもよいですが、やはり判断に迷うことも出てくるでしょうから、投資教育をしているFPなどに相談に行くと良いでしょう。有料ですが、自分で投資をしていくことになるので、手数料がかかることはありませんし、何に投資をしているかわからないということも起こりません。

投資をすると、お金の価値の目減りを防ぐだけではなく、利益を得られる可能性もあります。無理のない範囲で投資をし、豊かな老後を目指していただいても良いのではないかと思います。

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