<社説>21衆院選 沖縄振興 国と地方の対等な関係を

 来年2022年で、沖縄の施政権が日本に返還されて50年の節目を迎える。この間、沖縄の抱える特殊な諸事情に鑑み、国の責務として沖縄振興が実施されてきた。 半世紀にわたる国の沖縄振興体制をどう評価し、本年度で期限が切れる沖縄振興特別措置法への対応など今後の制度設計をどう描いていくか。国政を目指す衆院選立候補者の重要な論点になる。

 そこで問われるのは振興策の中身だけではない。国境離島や基地集中など沖縄の抱える「特殊事情」は、日本全体の外交・安保の方向性と複雑に絡み合う。国策の押し付けがもたらす負担増への取引材料として、振興策が使われることがあってはならない。

 しかし、これまで政府の沖縄政策は常に「基地と振興のリンク」の指摘がつきまとってきた。新しい沖縄振興を展望する上で、中央政府と沖縄県の健全な対等・協力関係をどう構築するかという地方自治の視点が欠かせない。

 沖縄の特殊事情の一つに、沖縄戦の苛烈な戦禍と、その後の米軍占領という歴史的事情がある。沖縄が米軍統治下に置かれた27年の間に戦後復興を果たした本土との格差を埋めることを目的に、内閣府による予算一括計上方式、高率補助制度などを特措法で規定してきた。

 これによりダムや道路、空港・港湾の社会資本整備では全国との差が着実に縮まった。一方で、いまだに1人当たり県民所得は全国最下位であり、子どもの貧困率は全国2倍の高さだ。第3次産業に偏った産業構造や非正規雇用比率の高さなど、経済の脆弱(ぜいじゃく)性を克服できていない。

 沖縄振興の枠組みを50年続けながら、自立に至っていない原因や課題に真剣に向き合わなければならない。

 沖縄振興の予算額は20年度までに累計13.1兆円に上るが、大型事業を県外企業が受注して地元に歩留まりが少ない「ざる経済」の構造もある。沖縄振興の継続か廃止かだけでなく、ハード偏重の予算の在り方や施策効果を見直す政策議論が欠かせない。

 さらに、時の政権と県政との関係次第で予算付けが変動するなど、政治が介入しやすい問題が根幹にある。

 13年12月に当時の安倍政権は仲井真弘多知事(当時)から辺野古埋め立ての承認を得る際、沖縄関係予算について「毎年3千億円台確保する」と閣議決定した。辺野古新基地建設に反対する県政となった15年度以降は一転して予算の減額傾向が続く。県を通さず国が市町村や民間に直接交付できる特定事業推進費の創設など、沖縄社会に分断を持ち込むという懸念もある。

 衆院議員は国政と地域の間を取り持つ調整役として、選挙区の住民の利益や安全について中央政府に声を届け、政策を動かす役割が求められる。望ましい沖縄の将来像に向け、候補者や政党の主張をしっかりと吟味したい。

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