2021衆院選ながさき 子育て 学びたい人 学べる社会に

中学生(左)に数学を教えるミカさん。「生活困窮を理由に教育を受ける機会が奪われないでほしい」と願う=長崎市内

 「この問題まだ習ってないよね。1回やってみようか」「予習だね」。20日夜、長崎市内の「ふれあいセンター」の研修室。中高生の姉妹が大学生のミカ(20、仮名)らから数学や英語を教わっていた。
 同市の一般社団法人ひとり親家庭福祉会ながさきが5年前から開く「無料学習室」。ひとり親家庭などの生活安定や自立促進を目的に自治体が支給する児童扶養手当の受給世帯(県内約1万2千世帯)の子どもを対象にしている。
 長崎市内で日曜を除き開いており、小中高生延べ約50人が通う。大学生が先生を務め、自身の体験を基に進学に関する相談にも乗ってくれる。寄付された野菜やパンなどを「お土産」として渡してもいる。
 姉妹の母サトミ(50代、仮名)は事務職員として働き、3人の娘を育てるシングルマザー。「子どもがやりたいことをやらせたいけど」。娘が通う私立高校の授業料は年収590万円未満世帯(目安)を対象に実質無償化されたが、授業料以外の校納金や部活動、修学旅行の積み立てなど教育関連の出費がかさむ。サトミは「『ばらまき』と言われても(各党が公約に掲げる)現金給付策はありがたい」と切実な思いを口にする。
 先生を務めるミカも高校受験を控えた中学3年の時、無料学習室に通っていた。それまで塾の夏期講習に通う同級生を横目に、図書館で自主学習を続けていた。質問するのが苦手なミカに先生が気さくに教えてくれ、理解が深まったことを覚えている。
 「私と同じように塾に通うのが難しい子たちに勉強を教えることができたら、学校選びの選択肢とか、もっと広い視野を持てるんじゃないか」。そうした思いから大学に進学した昨年夏、「先生」を始めた。
 今回の衆院選はミカが有権者として迎える初めての選挙。「私一人が投票したからといって、ちょっとしか変わらないかもしれないけど、若者も政治に関心があることを示したい」
 自身は親の負担と奨学金で大学に通っている。だが中学の同級生が家庭の経済的な事情で高校を辞めたと聞いた。生活困窮を理由に教育を受ける機会が奪われることのないよう支援制度を確立してほしい。「学びたい人が学べる社会に」。ミカはそう願う。そのために各党や候補者の訴えを聞いて1票を投じたいと考えている。=文中敬称略=

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