潜在市場規模30兆円のロボアド市場は参入障壁の確立がカギ、注目の振興サービスは?

ロボットアドバイザー(ロボアド)とは、AI(人工知能)や金融アルゴリズムを生かした資産運用サービスのことです。

投資一任口座を開設した後、ニーズに合った運用プランを選択し、AIや金融アルゴリズムを利用した自動運用によって、低コストである国内外のETF等を利用した国際分散投資が可能となります。

利用者には、(1)金融の知識がなくても、オンライン上で簡単に資産運用を始められる、(2)1~10万円程度から投資が可能、(3)証券会社が提供するラップ口座と比較すると手数料が安い、といったメリットがあります。

今回はこのロボアド市場の注目企業について解説します。


ロボアドの潜在市場規模は約30兆円

投資一任型ロボアドの潜在市場は、30兆円程度と考えています。20~50代が有する個人金融資産約650兆円のうち、5%程度に相当します。60代以上が有する個人金融資産の約1%弱がラップ口座で運用されており、20~50代の資産形成層におけるロボアドのニーズは旺盛であると考え、5%程度まで拡大余地があると考えました。

ロボアド最大手であるウェルスナビ(7342、東マ)の運用資産残高は5,500億円(21年9月)であり、上位三社のサービスを合計(WealthNavi、THEO、楽ラップ)した残高も1兆円弱であることを踏まえると、依然として成長市場と言えます。

先行者メリットのあるウェルスナビ

一方で、参入企業も多く、競争環境激化懸念があります。平均分散アプローチに基づいた運用は、パフォーマンスによる差別化が困難なことが背景です。

当研究所の試算では、各社の運用パフォーマンスは、シャープレシオで概ね0.7~1.0程度となっております。また、新興企業や、大手金融機関の参入も相次いでおり、今後手数料が低下する恐れがあると言えます。

このような状況を踏まえると、同市場で唯一の上場企業であり、先行者メリットを享受しているウェルスナビが優位であると考えています。株式上場を通じて、一段と認知度が拡大したことを主因に、2021年12月期1Qから、運用者数の増加ペースが加速しています。直販、及びパートナーチャネル双方で順調に新規顧客の獲得が進んでいます。

当研究所では、今後パートナー網をさらに拡大することで、参入障壁を確立することが可能であると考えます。パフォーマンスによる差別化が困難である以上、パートナーは取り扱っているロボアドを他社サービスにスイッチする必要性に乏しいと考えています。後発が追随する前に、販売網を強化することで息の長い成長が可能になると考えています。

追随企業で注目は?

ウェルスナビ以外で当研究所が注目するのは、後発ながら多数の潜在顧客(金融機関やメディアのユニークユーザー)を有するミンカブ・ジ・インフォノイド(4436、東マ)です。

同社は、FOLIO(未上場)及びAlpacaJapan(未上場)と業務提携(2021年4月26日発表)し、2021年12月に「FOLIO ROBO PRO」のミンカブ版を提供する見込みです。同サービスは、AlpacaJapanのAI技術によるリターン予測を取り入れている点や、市況に応じてダイナミックなアロケーション変更を行う点が特徴です。

同社がサービス提供を開始した資産形成管理ツールである「みんかぶアセットプランナー」とロボアドサービスをAPI連携することで、資産形成管理のみならず、資産運用サービスの提供に繋げることが期待されます。

さらに、同社の既存顧客である約400社の金融機関に対して、ミンカブがロボアドの提供を斡旋する可能性もあるのではないかと当研究所では推察しています。既存顧客を多数抱えていることから、後発ながらロボアドをスケールさせることが可能ではないかと当研究所では考えています。

<文:企業調査部 伊藤研一>

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