代替肉はどこまで肉に近づける? 焼肉用代替肉「NEXTカルビ2.0」を試食してみた

気候危機への意識の高まりや健康志向などを背景に、植物由来の代替肉市場が世界的に活況を呈している。大豆などを原料とする代替肉は、そうと知らなかったら100%植物性だと気付かないほど、果たして本物の肉に近づけるのか――。日本発のフードテックベンチャーとして、主に焼肉用代替肉の開発に取り組むネクストミーツ(東京・新宿)が18日に発売した“NEXTカルビ2.0”のメディア先行試食会に当SBの記者が参加し、食感も見た目も大幅にバージョンアップしたという“焼肉”を味わってみた。(廣末智子)

昨年6月に創業し、世界で事業急展開

ネクストミーツは、ともに中国・深圳でのビジネス経験のある佐々木英之社長と白井良会長が2017年から代替肉の研究を始め、2020年6月に共同で創業。「地球を終わらせない」を企業理念に気候変動問題の解決に向け、国内はもとより、米国やシンガポール、ベトナム、台湾など10を超える国や地域で急速にフードテック事業を拡大。今年1月には米国のOTC(店頭)市場に上場を果たし(10月現在の時価総額は約1700億円)、代替タンパクに世界の注目が集まる中、植物ベースの代替食品を扱う世界のVegTech企業21社に日本企業として唯一選定されるなど、評価を高めている。

その核となる商品が、大豆による植物タンパクを原料に「世界初の焼肉用フェイクミート」として開発した“NEXT焼肉”シリーズだ。焼肉チェーンとのコラボも話題を集め、累計販売数は1年で10万食を突破。カルビとハラミの2種類があり、「代替肉を食べたことがない人や、食べたことはあるが、物足りなかったという人」向けに、より肉に近い食感と見た目の改良に取り組んでいる。

肉らしい食感再現へ、「砂粒を探すような地道な作業」重ねる

「ジューッパチパチッ」

東京都内で開かれたメディア先行試食会。集まった報道陣の目の前で、佐々木社長自らが“肉”を焼き、その手元にマイクが向けられた。肉の焼ける音を拾うためだ。なぜなら、肉の5大要素は味、食感、香り、見た目と「音」で構成されているそうで、同社の“NEXT焼肉”シリーズは「まず焼いている音が肉らしい。憎たらしいほど肉らしいというお声もいただいている」(白井会長)と言うほど、音にもこだわりがあるからのようだ。

“NEXTカルビ2.0”はバージョン1をバージョン2へと、1年ぶりに「進化させた」もので、代替肉を機械で製造する時に設定する熱と水蒸気、圧力の3つを再定義することで、タンパク質の含有量を5%増量。それによって「食感を大幅に向上」させるとともに、より肉らしい、大きいサイズを実現し、味についても「大豆特有のにおいを消し、肉らしい味を付加した」という。

試食会の席上、白井会長は「肉らしい食感を再現するため、実験を重ね、海の中の砂粒を探すような地道な作業を続けた」と説明。同社は「2050年までに世界中ですべての肉を代替すること」をミッションに、大豆に限らず、幅広い代替タンパクの研究開発に着手している。佐々木社長は、「地球環境にいちばんいいものを素材として選び、より環境に配慮した持続可能な最先端の食品工場でさまざまな次世代型商品をつくっていきたい。スライスされた代替肉は世界でもほかになく、和食を広めるという意味でも日本から世界へと発信していきたい」などと抱負を話した。

カルビというよりもタン? 食べ応え十分

目的の試食では、バージョン1とバージョン2の両方がその場で焼いて記者に提供された。しっかりと焼かれた“肉”は、代替肉が初めての筆者には、「代替肉を初めて食べる!」という意識が強かったためか、やはり本物の肉とまでは感じられなかったのが正直な感想ではあるものの、バージョン1に比べて3倍近く大きいバージョン2は特に、カルビというよりはタンにも似た食感で、焼きたては柔らかく、十分に食べ応えがあった。今後のさらなる改良を楽しみにしたい。

新潟・長岡で代替肉専用自社工場を稼働へ

同社によると、“NEXTカルビ2.0”の原料となる大豆は現在、アジアや北米など海外産の大豆と国産の大豆を7対3の割合で使用しており、サプライチェーンの上流に位置する生産農家の状況を細かく把握することなどは今後の課題という。遺伝子組み換え大豆は使用していない。

一方、2022年の夏には白井会長の出身地である新潟県長岡市に、代替肉専用の研究開発から生産ラインまでを備えた一気通貫型の自社工場を100%再エネで稼働させる計画で(11月着工予定)、国内市場向けに月間100トン以上の生産量を確保。“NEXTポーク”や“NEXTミルク”、“NEXTツナ”などの新商品を次々と市場に投入する方針だ。さらに海外では中国やインド、フランスで年内に販売を開始する予定で、欧州全域での展開も視野に入れている。

“NEXTカルビ2.0”は現在、冷凍の5パックセット(税込み1950円)で、同社の公式オンラインストアで販売中。今後はスーパーや焼肉店などでの販売も検討している。

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