最高裁裁判官、今のままでいい?辞めさせたければ「×」を 間もなく国民審査、本人たちも気にしているその結果

今年2月、那覇市の孔子廟を巡る政教分離が問われた住民訴訟の上告審判決が言い渡された最高裁大法廷(代表撮影)

 衆院選の投票所に行くと、小選挙区と比例代表への投票に加えて、もう一つ投票を求められる。「最高裁裁判官の国民審査」で、新しく有権者になった若者にとっては初めての経験だ。投票の目的は、最高裁の裁判官が職務にふさわしいかどうかを国民が直接チェックすること。辞めさせたい裁判官がいれば、名前の上の欄に「×」をつけて投票する。反対に、信任するのであれば何も記入しない。×が有効投票の過半数を占めれば、その裁判官は辞めさせられる。

 1949年に初めて実施され、これまでに計24回、延べ179人の最高裁裁判官が審査を受けた。しかし、罷免された人、つまり辞めさせられた人はいない。

 ただ、記者が以前、ある元最高裁裁判官に尋ねたところ、自分に対する国民審査の結果は気になると話していた。気にするのは有効投票の50%を超えて信任されるかどうかだけではなく、何パーセントを得て、同僚の中で何番目だったかもあるという。(共同通信=斉藤友彦)

国民審査の投票用紙

 国民審査による罷免が今まで1回もないのはなぜか。(1)何も記入せずに投票すれば「信任した」とみなされる(2)×印以外(例えば〇)を記入すると全て無効票とされる―という審査の仕組みが大きく影響していると考えられる。「信任」の意思を込めて何も記入しない人のほか、特段の考えもなく「白票」を投じる人も多いため、結果として×と記入する人を大きく上回り罷免には至らない。

 仮に投票が「〇か×か」という仕組みだったらどうだろう。何も記入しないと無効票になり、それが大量になると、反対に有効投票は少なくなる。人によっては×が〇を上回り、罷免されるケースが出てくるかもしれない。

 衆院選と同時という点もミソだ。人々の関心や報道は、国の政治を左右する衆院選に目が向きがちで、誰に投票するかをあらかじめ決めている人も多い。一方、どの最高裁裁判官を辞めさせようかとあらかじめ決めている人はごく少数だろう。誤解を恐れずに言えば、国民審査は選挙の「ついで」になりがちだ。

 しかし、このままでいいのだろうか。最高裁裁判官は三権分立の一つである司法のトップ。私たちの生活に大きな影響を与える多くの重要な裁判で、最終的な判断を示している。地裁や高裁が示した判断も覆すことができる。

最高裁判所=東京都千代田区

 それほど強大な権限を持つのにふさわしい人々なのかどうかを、私たち有権者は半ば「自動的」に信任している。あるべき姿なのだろうか。

 そうはいっても、最高裁裁判官がどんな人々で、それぞれがどんな判決を下してきたのかはよく知らないから、ふさわしいかどうか判断しようがないと言われるかもしれない。

 新聞を中心とする報道各社は、これまでの国民審査でも、審査対象となる最高裁裁判官についての情報や、それぞれが下した判決について紙面で報じてきた。ただ、掲載された紙面を投票に活用すべく、わざわざ切り抜いて投票所まで持っていく人を、記者は見たことがない。記者自身もやったことがない。

 共同通信は今回、インターネット上に最高裁裁判官の国民審査に関する特設ページをつくった。

47NEWSサイトより

 15人いる最高裁裁判官のうち、今回審査対象となる11人について、写真や、それぞれに信条や趣味などを尋ねたアンケート結果、「夫婦別姓訴訟」など有権者の関心が高いと考える最高裁判決で、それぞれがどのような判断を下したかを、見やすくまとめている。是非活用していただき、衆院選だけでなく、国民審査についても、どう投票するかを考えていただきたい。

 最高裁裁判官へのアンケート結果などは47NEWSサイト「衆院選2021」に掲載されている。

https://www.47news.jp/politics/shuinsenkyo2021?sjkd_page=cont_KA61260c4839273_KA617139fad31f7

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