【菊花賞/穴馬アナライズ】ステラヴェローチェは「△」評価 過去10年で13頭が好走した“買い”条件

第82回菊花賞(阪神芝3000m)は日本ダービーの1、2着馬が不在で行われる。昨年こそコントレイルの無敗三冠に湧いたが、近年は春のクラシックホースが菊花賞に向かわず、天皇賞・秋やジャパンCへ駒を進めるケースが目立つ。

今年も皐月賞馬エフフォーリアは天皇賞・秋へ、ダービー馬シャフリヤールはジャパンCへ向かい、菊の主役は春二冠でいずれも3着のステラヴェローチェが担う。

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■春二冠に未出走の馬が菊の大輪を掴む

過去10年、ダービー馬が菊花賞に出走したのはわずか3頭。2011年のオルフェーヴル、14年のワンアンドオンリー、そして20年のコントレイルで、このうち2頭は三冠馬に輝いたが、ワンアンドオンリーは菊花賞で1番人気9着と馬群に沈んだ。

皐月賞馬は6頭。前述の三冠馬・オルフェーヴルとコントレイルの2頭以外では、2012年のゴールドシップは菊花賞を制し、残りは16年のディーマジェスティ(菊花賞4着)、17年のアルアイン(同7着)、18年のエポカドーロ(同8着)の3頭が馬券外に敗れた。

つまり、過去10年の菊花賞で春のクラシックホースが菊花賞を制したのは、オルフェーヴル、ゴールドシップ、コントレイルのわずか3頭ということになる。

残り7頭は春二冠で敗れた馬の戴冠、または春クラシック未出走だった馬の“下剋上”となるわけだが、ここで過去10年の菊花賞上位3頭の戦績をおさらいする。

過去10年の上位3頭、計30頭のうち日本ダービー未出走は13頭、皐月賞未出走は17頭、両レース未出走は13頭。このうち菊花賞馬となったのは4頭で、とくに2017年から19年までは3年連続で、春二冠に未出走の馬が菊の大輪を掴んでいた。

■ステラヴェローチェが証明したのは道悪適性

この背景にはやはり近代競馬におけるスピード化の波がある。日本ダービーは昨今、2分22秒台の高速決着へ突入し、本来は中距離タイプと言える馬の活躍が目立ってきた。実際、前述のとおりダービー馬の菊花賞参戦が過去10年でわずか3頭という事実がそれを物語る。

では今年の日本ダービーはどうか。優勝したシャフリヤールは毎日杯を日本レコードタイで制し、本番の日本ダービーもレースレコードの2分22秒5で駆け抜けた。

2着エフフォーリア、そして3着ステラヴェローチェまでの上位3頭は上がり3F33秒4の末脚で上位争いを繰り広げており、レースラップは前半1000m60秒3というスローから、ラスト5Fで11秒台へ突入。まるでマイル戦のレースであった。

ここで上位争いを演じたステラヴェローチェは、前哨戦の神戸新聞杯を不良馬場で快勝。この時点で3000mへの距離延長の不安は払拭されたかに思われているが、1分32秒4の高速決着となった朝日杯フューチュリティSで2着に入ったように、スピード競馬への適性も高い。

神戸新聞杯の勝利は、長距離適性を示したというより、同じく不良馬場で圧勝したサウジアラビアロイヤルCに続く“道悪適性”を裏付けたに過ぎない。

■春二冠を断念したオーソクレースに注目

そもそも今年は京都から阪神へと舞台を移す菊花賞。二度の坂越えで相当タフな競馬になることは確実で、実際、過去10年のうち良馬場で行われた年のレース上がり3Fの平均を比較すると、菊花賞(京都芝3000m)の平均35秒3に対し、阪神大賞典(阪神芝3000m)は平均36秒1。じつに1秒差近く上がりを要している。

春二冠でいずれも3着と、実績は出走メンバー最上位のステラヴェローチェ。しかし、同馬の距離適性はいまだ未知数と結論付ければ、ここは春クラシックの未出走組にスポットを当ててみたい。ステラヴェローチェを「△」評価に留め、別表のとおり、春クラシック未出走組の中から、前哨戦で好走した馬、あるいは条件戦でも勝ち負けしてきた馬に着目する。

上位人気では故障で春二冠を断念したオーソクレースに注目。明らかに休み明けの仕上げながらセントライト記念3着なら、やはり世代上位の評価を与えられ、父エピファネイアに母マリアライトと長距離血統のお墨付きもある。同馬を中心に相手も春クラシック未出走組から盲点を押さえれば、高配当にありつけそうだ。

後編(土曜17時配信予定)」では春クラシック未出走組から穴馬3頭を紹介する。

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著者プロフィール

山田剛(やまだつよし)●『SPREAD』編集長
アスリートの素顔を伝えるメディア『SPREAD』の編集長。旅行・アウトドア雑誌のライターを経て、競馬月刊誌「UMAJIN」の編集長として競馬業界へ。その後、Neo Sports社にて、「B.LEAGUE」「PGA」「RIZIN」等のスポーツ×ゲーミフィケーション事業に携わり、現在に至る。競馬は、1995年マイルCSの16番人気2着メイショウテゾロの激走に衝撃を受けて以来、穴馬予想を追求し続けている。

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